エピローグ 新たなる人生のスタート(笑)
「いや~相変わらず怖いわ、メタトロン様」
「見事なアメとムチだったな」
ガブリエルとウリエルは自身の上司に当たるメタトロンに対して陽気に話し合っていたが、僕達勇者は先生の変わりようにショックのほうが大きかった。
「僕達何のために戦っているんだ」
「全て女神の掌の上だったのね」
「正直、魔王よりも怖い」
「ルシファー、いや黒川さんが反旗を翻したのも少しだけ分かるわ」
担任の藤原先生でもあった女神は、魔王を倒すために生徒であった僕達をこの世界に転移させた。そこはいい。だが、女神にはあるものがなかった。そのことが僕達を苦しめた。
「藤原先生、私達の事何とも思っていないみたいな口ぶりだったね」
元気なく言う小林さんの意見に皆同意した。女神は僕達勇者が、同士討ちできるようにクラス内に意図的に対立構造を作り、僕をいじめという形で追い詰めるように画策していた。そこからは自分の思惑通りに事が進めばいいと考えているようで、僕らの気持ちなどまるで考えてなかったことが伺える。教師なのに、生徒の気持ちを考えていない、それとも、神だからと片づけてしまってもいいのだろうか。
結果的には、僕はかなり強くなったが、女神の思惑通りに僕は佐伯達を殺したことになるため心境は複雑だ。高木に諭されてから佐伯達の事は考えないようにしてきたのに。
「みんな!落ち込むのは止めましょう。藤原先生は確かに怖かったけど。だからと言ってルシファー側に寝返る気はないでしょう?」
暗い雰囲気をかき消すようにすっかりリーダー役に収まった吉村さんが声を出した。心情的には、女神側にいるのはどうかなと思わなくもないが、ルシファーをもあっさりと退かせるメタトロンに逆らう気など微塵も起きない。
「ウリエル様、残った魔王は五体なんですよね?」
吉村さんの問いに山城君の体に宿ったウリエルが答える。今でも正直違和感を覚える。
「アスタロトとルシファーはメタトロン様のお力で半年は異空間から出てこれないから放って置くとする。
すると残りは、第一から第三までの魔王と第十魔王か、見事に強敵が残ったな」
「ああ、特に、第三以上の魔王は大天使すらも凌駕する。一筋縄ではいかないな。だが、半年経てばルシファー達が帰ってくる。それまでに何体倒せるかが鍵となるな」
ガブリエルとウリエルの分析を聞いて、皆思案顔だ。誰一人として声が出さない中、突然陽気な声が聞こえてきた。
「皆さんそう複雑に考えなくてもいいのですよ!魔王を全て倒せばいいのですから」
そう言いながら、僕達に近づいてきたのは、今まで磔にされていた大天使であった。
「お前どうして自由の身になった?」
何故か慌ててながら、ガブリエルが食いついた。
「驚くことではないでしょうガブリエルちゃん。メタトロン様が降臨されれば余波であなたの杭くらい抜けますわ」
あれやったのお前かよと、全員の視線がガブリエルに集まると彼女は気をまずくしたのか視線を逸らして空を見上げた。
「初めまして勇者の皆様、ワタクシの名前は大天使ラファエルと申します。以後よろしくお願いしますわ」
白いローブをスカートのように持ち上げ優雅にお辞儀をするラファエル。やっぱりガブリエルとは出来が違うな。
「それと、津田健也様でしたね?あのメタトロン様が直接お力を与えるなど前例のないことです。ですからワタクシもあなたに力を授けましょう。右手をかざしてください」
僕は女神の時と同じように、右手を差し出してラファエルの体の乗せようとした。後から思えばこれが全ての始まりだった。女神から特別視させ調子に乗っていたこと女の色香に惑わされのが原因だ。僕の人生最大の失敗だ。
「ちょっと待て!」
嫉妬かな?ガブリエルが声を出したが、無視した。それが最後のチャンスだったのに、
「えい!」
ラファエルが何かを唱えると、僕の体は突然煙を上げた。そして煙が収まると、他のみんなの視線が変わったのを感じた。どうしたのだろうという疑問を出す前にラファエルが魔法で鏡を用意してくれたので、自分の姿を見つめた。そして
「…………なんじゃ、こりゃ~!!!!!!!」
と叫んだ。
「ある、ない、ある、ない、ある、ない……」
僕の服は可愛いピンクのドレスのようなものに変わった。まあ服が女物に変わっているくらいならいいのだが、問題だった体も女の子になっていたことだった。
「きゃ~かわいい!!これで男の娘なら即お持ち帰りですわ!!」
昔から女の子みたいな顔と呼ばれた顔を除いて、その他が女の体になっていた。髪は肩の当たりまで伸びて、胸も女だと分かるくらいに膨らみ、股間にあるべき息子の姿はなくなってきた。
今日は色々なことが起きて何が起こったのか理解が追いついていなかった場面に度々遭遇したが、今回がダントツで一番だろう。呆然と立ちすくす僕を励ますようにガブリエルが僕の肩を叩いた。
「あいつラファエルは重度のショタコンなんだよ。残念だったな」
僕の姿を見てかわいいと絶賛するラファエルを見て僕は二度とあの天使に関わらないと決めた。
「だが、ラファエル。確かにマスターは可愛いくなったが、これではただの女の子だ。お前はショタ好きだったのでは?」
「心配ないわよ。ガブリエルちゃん。その魔法はワタクシは作った特別の魔法で、一年すると体は元に戻るわ」
一年は長いが、一生このままではないと知り安堵した。だが、次に恐るべき事実が飛び込んできた。
「そうなった場合は、体は少年でも精神が女の子になってしまうの。そして、女の子の服を着て自分からワタクシを求めてくるようになるのよ!!そしたらワタクシの秘密の園で他では味わえない快楽を教えてあげるわ!」
「「ひいいいいいいいーー!!!」」
僕とガブリエルは互いに抱き合いながら怯えた。なんちゅう恐ろしい魔法だ。僕は助けを求めてクラスメイト達を見たが、自分達よりも可愛い僕の姿を見て女子は嫉妬の顔をして、男子は顔を赤らめながら他所を見ていた。
「お前達……」
あいつらはもうだめだ。僕はラファエルの胸倉を掴んで呪いの解き方を問う。さっきまではこの豊満な胸に触ることなど考えてもしなかったが今となってはどうでも良い。
「ごめんね。一度掛けたらワタクシにはもう解けないの。後はメタトロン様にお願いするという手もあるけど」
「一度しか使えないお願いをそんな事に使えるか!!他の方法をだせ!!」
「そんなこと言っても」
「教えろ!マスター命令だ!!ガブリエルこの天使をしばけ!!」
「了解!!」
こうなっては流石のラファエルも観念したのか、呪いの解き方を話した。
「この魔法を解くには、陰と陽つまり光と闇の両方の力を持つ存在が必要よ。例えばルシファーとか」
ルシファーは封印されているし、最大の敵である。協力はしてくれないだろう。他にいないのかと問い詰めると代わりにウリエルが答えてくれた。
「ああ、そう言えば第三魔王ルキフグスも該当するな。確か、あいつはローレンス王国のずっと南側に拠点を構えていたはず」
ルキフグスだと、以前うちのダンジョンに来たイケメンか、ルシファーよりは話が通じそうだな。
「分かった!僕達がルキフグスの相手をするから、君達は他の魔王の相手をしてくれ」
ルキフグスをしばいて魔法を解いてもらった上で倒す、完璧なプランだ。その後、ラファエルに復讐してやる。
「では、残りの勇者と私とラファエルは第二魔王ベルゼブブの相手をする。そして先に倒した方が第十魔王ナヘマーの相手をするで良いか?」
それで問題ないと、全員の意見が一致した。
「あの第一魔王はどうするんですか?」
クラスメイトの誰かが言った質問にウリエルが答えた。
「第一魔王の正体はルシファーの抜け殻だ。つまり凄まじい力を持っている。ここにいる全員で挑む必要があるから最後でいい」
これで、一先ず話は済んだだろう。僕はヴァンパイア達とガブリエルを呼びつけて叫んだ。
「覚えておけラファエル!!魔法が解けたらぶっ殺す!!!ガブリエル時間がない。後三百六十五日しかないんだ。兵力を回収して急いでダンジョンの戻るぞ!!」
クラスの連中に謝罪してもらうとか、王都の復興など、どうでも良くなった僕達は大急ぎで自分達のホームであるダンジョンに戻った。
この世界には未開領域と呼ばれる人間が未だ足を踏み入れていない地がいくつかある。その一つ、遥か悠久の時から人の侵入を拒んできた、連なる山々がそびえる山頂の一つに一人の少女が座っていた。
歳は高校生くらいで、血のように真っ赤に染まる髪をなびかせる少女。とある天使の抜け殻である少女には本来であれば意識というものは宿ることはなかった。だが、彼女の中に残された怒りという感情を抑えるために、神の予測すら越えて、抜け殻であるはずの体に意識が芽生えた。
「ほ~う誰じゃ、ウチは自分の中にある怒りの感情を抑えるために、こうして雄大な自然を見て心を落ち着かせているのじゃが」
少女は何者かの気配を感じて後ろを振り向いた。驚くことにそこには四人の人間がいた。そして、その人間達のリーダーと思われる少女が声を上げた。
「私の名前は朝倉楓、勇者よ!ようやく見つけたわ、第一魔王サタン!あなたを倒しにきた!!」
この日、誰も知らぬ秘境の地で最大の戦いが始まった。
勇者側残り 十三名 魔王残り 五名 ルシファー側の勇者残り 二名
これで第五章終了です。
第六章からは、いよいよ今まであまりスポットが当たらなかった主人公が本格的に活躍します。少女になった呪いを解くべく、女の子だらけのパーティーを組み魔王に挑みます。ギルドや冒険者といった異世界ものの定番を多数取り入れていく予定です。
ここまで読んでくださりありがとうございます。今後もお付き合いして頂ければ幸いです。
一部加筆修正しました。




