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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第六章  冒険者編
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冒険者ギルド

 屋内でありながら、鎧や剣や杖などに身を包む完全装備の者達が多くいた。それもそのはず、ここはローレンス王国の最高峰冒険者が集まる冒険者ギルドセレン支部の待合室だからである。


 酒場とも兼任しているこの場所には今日も多くの冒険者でごった返していた。王都襲来事件から半月が経った。勇者達の活躍で王都は奪還され徐々にではあるが復興が進んでいる。あの時は王都奪還のための緊急クエストが張り出され、多くの冒険者が集まったが、幸いにも冒険者が街を出発する前に事件は終わってしまった。結果として王都は救われたが、勇者達に出番を奪われ報酬が出なかったので、声には出さなかったが多くの冒険者が不満を抱いていた。


 だが、それ以前に冒険者達を苛立たせていたことがあった。それは、魔王との戦いで活躍したメイルのような若い冒険者に憧れて冒険者になる新人冒険者が急増したのである。才能があればそれでいいが、そのほとんどがろくに魔法も剣術もできない素人ばかりだったため、彼らのほとんどがギルドやベテラン冒険者から求められている魔物の退治もせずに、危険が少ない採取系のクエストばかりこなしていたのだ。


 セレンの近郊には今は亡き魔王アドラメレクのせいで大量発生した魔物が多数生息していたため、冒険者の数が増えるのは大歓迎であったが、魔物を倒さずににいつまでも低ランクのまま、非戦闘系のクエストばかりこなす素人冒険者達の存在は、戦力が欲しいベテラン冒険者達やギルドの職員達を苛立たせた。なので、最初こそは新人冒険者に対して歓迎ムードであったが、今では新人が現れるたびにまた使えない奴らが来たかと思うようになっていた。


 そんな、冒険者ギルドの扉を開けて新人冒険者らしき三人の少女が入ってきた。新入りの姿を見て一気に雰囲気が悪くなるが、男達の何人かはその可愛いらしさに見惚れた。


 先ず、一番目を引いたのは、金色獣耳と尻尾を持った珍しい獣人の少女だ。獣人は高い身体能力を持つため、あらゆる分野で重宝されている。服装は村娘が着るような普通な服で背中に自分よりも遥かに大きなリュックを背負っていたが、武器のようなものは一切所持していなかった。


 二人目の少女は、一人目と同じくらいで十歳前後の歳で、巫女服というここにいる人間は見たことのにない薄い修道服のようなものを着ていた。頭には大きな帽子をかぶっているため、顔が良く見えないが美形であることを匂わせてていた。そして、武器は珍しい品である東方伝来の武器である刀というを携えていた。


 三人目はリーダーというを顔をした少女だ。顔立が良いので、貴族ではないかと何人かの冒険者は推察した。歳は十五歳前後で、青いエプロンドレスを着ていたが、胸部分のみを守る鎧に覆われていた。武器としてロングソードを一本持っていた。


 三人とも美少女ではあるが、身なりからしてどこかの貴族の可能性が高かった。若い貴族が冒険者になるのは珍しくはないが、貴族故に冒険者の苦労をしらない。なので、貴族の権威を傘に偉ぶって危険を冒さない冒険者になる者が多かった。そして、この少女達をそうなるだろうとここにいたベテラン冒険者の誰もが思っていたのであった。





 さて、王都から帰還し塔に戻った俺だが、ともかくこの間は大変だった。まず体が少女になったため、トイレなどの性別の違いで苦労した。幸いにも俺の境遇に同情してくれたガブリエルが色々と教えてくれたが、それでも大変だった。そして俺は一歩大人の階段を登ったのであった。また、自分が男であることを忘れないように一人称を僕から俺に変えることにした。


 さて、次に問題となったのは、誰を引き連れて魔王ルキフグスの元へ行くかであった。ルキフグスが拠点にしているのは、ここローレンス王国から遥か南にある国だそうだ。他所の国を通過する必要があり、長い旅になる可能性が高いので、王都奪還の時みたいに本来は人間の敵であるモンスター大軍を率いていくのは余り好ましくないという結論になった。よって、少人数でかつ外見が人間で、それなりに強い奴を選出することになった。

 

 一週間近くに渡って大論争になったが、何とか、俺と共に魔王ルキフグスを倒すメンバーが決まった。本当はガブリエルを連れていきたかったが、念のため王都周辺に大天使が残ってルシファーがいつ戻ってくるのか見張る必要があるため、留守番となった。ヴァンパイアはどうもおっかないイメージがあるので、長期間一緒にいると俺の精神がどうにかなりそうだったので除外した。竜人ガイアールはダンジョン防衛の責任者なので論外だ。


 なので、消去的に、外部にも獣人として存在している妖狐のクーアンと角があることを除けば普通の少女に見えるサクラを抜擢した。この二人は先の戦いでなんと第九魔王リリスを仕留めていたので戦力としても申し分ない。それにヴァンパイアなどの強面の連中よりも、クーアンやサクラみたな無邪気な子供の方が心が落ち着いた。


 もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら、認めたくはないが、俺はロリコンなのかもしれない。だが、幸いなことに今の俺の体は少女なので、周りから変な目で見られることはないだろう。


 そして、わざわざガブリエルが魔法で作成してくれた特性のエプロンドレスのような服を着て、俺達はセレンの街を目指した。


 ヴァンパイア達を情報収集の一環として密かにセレンに送ったことはあったが、俺が直接セレンに行くのは、塔を建造する前以来だ。あの時は人混みが怖くてすぐに街を出たが、今回はちゃんとした目的がある。


 その目的とは冒険者になるということである。この世界の冒険者は万国共通で、どの国で冒険者になっても、違う国でも通用するのだ。そのため、冒険者達は本来は厳しい出入国の手続きを簡単にクリアできるそうだ。また、一種の身分証明書にもなるので、これから国外に出るの俺達にとっては是非とも欲しい資格なのだ。


 こうした経緯で俺達はセレンに着いた。街に着くやいないや露店に目を引かれていた幼女を二人を引っ張りながら俺はまず最初に、目的である冒険者登録をするために冒険者ギルドの扉を開いた。


 ギルドと言えば、異世界の定番だ。俺は正直ワクワクしながら入ったが、何故か中にいた冒険者達の俺達を見る目は好意的な物ではなかった。一部の冒険者からは敵意なようなものを感じるほどだった。やはり、見た目は強そうではない少女三人なのがいけないのだろうか。そう思われても仕方ないが、ぶっちゃけ俺達はここにいる冒険者全員を相手にしても無傷で勝てるくらい強いだろう。俺は心の中でほくそ笑みながら、冒険者登録をしているカウンターへと向かい、受付のお姉さんに声を掛けた。


「あの~冒険者登録したいんですが」


 低姿勢でお願いしたつもりだが、何故か受付のお姉さんも他の冒険者と同じで険悪なものだった。


「は~またですか。採取取りはもう一杯だって言うのに!」


 受付のお姉さんはあからさまな敵意をむき出していたが、他の職員に注意されて、渋々説明を始めた。


「まずは冒険者ギルドにようこそ、これより簡単な説明をします。冒険者の仕事とは、官民問わず発注されたクエストと呼ばれる依頼を受けて、地域の安全や経済に貢献することです。クエストには様々な種類がありますが、その多くは魔物の討伐や護衛、指定された素材や物資の納品です」


 まさにテンプレだな。聞いているだけで、ワクワクしてきたぞ。ふと横を見ると、サクラは静かに聞いていたが、クーアンは話など聞いていない感じで他所を見ていた。そのクーアンの態度に不満を持ったのか受付のお姉さんの声が少しだけ怒気を孕んだ。


「冒険者にはAからCまでの三つのランクがあり、ランクによって受けれるクエストや待遇が異なります。まず全ての冒険者はCランクからスタートします。Cランクの冒険者は原則として最初に登録した地域を離れて活動することができません。見習いという扱いなので、受けられるクエストも非戦闘系のものが多いです。次のBランク冒険者に昇格すると、他所の地域や国で活動することが認められるため、各国に顔が効くギルドの力で本来は厳しい検査と長い時間かかる出入国検査が簡単に行われます。Bランク冒険者は一人前の冒険者と扱われるのでその分責任が伴いますが、恩恵も大きいです。Aランク冒険者にまでなると英雄のような扱いになり、その国や地域の顔となるので、地方領主や国から支援が受けられます。クエストを受けなくても貴族のような暮らしができるほどの支援を受けられますが、引き換えにAランク冒険者は知識以上に圧倒的な戦力を求められます。場合によっては単独で街一つを潰す危険なユニークモンスターの相手をすることがあります」


 ん?長い説明だったが、今Bランクにならないと地域から出れないと言ったような気がするぞ。


「今、Cランクでは地域から出られないと言っていましたが」


 しっかり者のサクラが代わりに尋ねてくれた。昔はただの戦闘狂だったのに随分成長したな。


「ええ、そうです。実力がない冒険者が他所にいっても大して活躍できませんからね。まずは自分の登録した場所で力を付けて欲しいのです」


 確かに理にかなってはいるが、今の俺達にとっては邪魔な制度だ。なので、俺はどうすれば昇格できかを尋ねた。すると、受付のお姉さんは俺達を沢山のクエストが張られているクエストボードの元へ案内してくれた。


「こちらをご覧ください!」


 壁中に張られているクエストの中からお姉さんが指示された用紙にはこう書かれていた。


難易度    2つ星

依頼内容  キリの実、30個の納品

報酬     5000ワイア


 ワイアというのはこの国のお金の単位で一ワイア=一円くらいだ。ちなみに一番安い宿一泊で一人1000ワイア取られる。


「依頼内容と報酬はクエストによって異なりますが、大体は書いてある通りです。説明がいるのは一番上の難易度についてです。難易度は一つ星から始まり五つ星まであり、星の数が多いほど危険なクエストになります。この中でCランク冒険者が受けられるのは、一つ星と二つ星のクエストのみで、Bランクになると四つ星まで受けられます。そして、最高位の五つ星はAランクのみが受けられます」

 

 壁中を見渡し、一つ星と二つ星のクエストを確認する。どれも安全そうな雑魚モンスターの討伐や採取系ばかりだった。


「クエストを成功させるとその数だけ星が手に入ります。Cランクの冒険者がBランクに昇格するには、累積星数が二十を超えてかつ、ギルドの認定試験を受けて合格する必要がございます。Aランクへに昇格はまた別の条件になりますが」

「つまり、最短でBランクに上がるには、二つ星のクエストを十、成功させて認定試験に合格する必要があるのか」

「その通りです!」


 めんどくさいな、俺はそう思いながら、お姉さんの指示で再びカウンターに戻った。


「ご説明は以上です。質問がなければギルドカードを発行しますが、よろしいですか?」


 冒険者制度が思ったよりも面倒だったが、今更後には引けない。俺は了承した。


「では、順にお名前をどうぞ!」


 お姉さんに促され、クーアンが大声を上げた。それに続いてサクラと俺も名乗った。


「クーアン!!」

「サクラと申します」

「津田……」


 ちょっと待て、この外見で津田健也という名前は不自然ではないか?そう思った俺はしばらく考えこんだ。お姉さんやサクラ達は何故名乗らないのか不思議そうな顔で見つめていた。


 さて、本当にどうするか、名前、名前、この外見からでもおかしくない名前は……そうだ!これで行こう!


「バベルだ」


 俺のアルカナ能力である塔にはバベルの塔という解釈もあるので、そこから取った。女の子の名前ではないかもしれないが、俺の偽名としていい名前だと思う。


 こうして三人分の冒険者カードを発行した俺達は、早速、何か面白いクエストはないかとクエストボードを物色することにした。



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