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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第三章 勇者強襲編
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決戦 勇者VS魔王 後編

「これで、ようやく一人か」


 朝倉の首を刎ね、魔剣を鞘に納めたルキフグスがベルゼブブの元に行こうと朝倉の死体に背を向けたまさにその時、ある変化が起きた。


「なんだこれは?まさか」


 首と胴体に分かれたはずの朝倉の体が眩いばかりの黄金の光を放つ。そして、分かれていた光は一つになった。やがて輝きが止むとそこには先ほどよりも明らかに魔力が増大し、無傷で微笑む朝倉楓が立っていた。


「どんな魔法を使っても死人をよみがえらせる事は不可能だ。そうか、貴様〈審判〉の能力者か!!」


 朝倉の能力を知りルキフグスが吠える。忘れもしない五百年前の聖戦で魔王に大打撃を与えた初代勇者は〈審判〉の使い手だったのだから。


「私の力を知っているようね」


 ニヤリと笑う朝倉を見てルキフグスは心の中で舌打ちをした。それほど〈審判〉は脅威なのである。


「ああ、良く知っている。その力〈審判〉は能力者が死ぬと即座に蘇生させ、完全回復させる能力だ。しかも殺した相手が強いほど〈審判〉の使い手は魔力を増して蘇る。非常に厄介な能力だ」

「そう、知っているのなら解説はいらないわね」


 会話中にも関わらず、魔剣を鞘にしまって無防備であるルキフグスに対し、朝倉はその手に握られた聖剣で斬りかかった。




「なかなかやるわね、子猫ちゃん達!」


 ベルゼブブと東条達の戦いはベルゼブブ有利で進んでいたが、東条達も負けてはいない。その証拠に三人とも未だに大きな外傷はなかった。


「エレメント・ドラゴンズ!!」


 神宮司小町が最上級魔法を放つ、火、水、土、風、雷の力を纏った五体の竜がベルゼブブを襲う。


「ビューティフル・パンチ!!」


 対するベルゼブブは五体の竜に向けて、魔力の籠った拳をぶつける。凄まじい爆発音の当たり一面に響きわたり、森の木々がなぎ倒される。


「隙あり!」


 爆発で生じた土煙で前が見えないベルゼブブの背後から西洋甲冑に身に纏い大剣を振るう東条大志が襲う。


「甘いわよ!!ふんっ!」


 ベルゼブブは地面を強く蹴り、距離を取って背後から迫る大剣を躱す。そして剣が外れ無防備となった東条に一撃を入れようとパンチの構えを取るが、


「!?ちっ、またこれか~」

「今度は50Gだ、動けまい」


 竜崎昇は自身のアルカナ能力でベルゼブブの周囲に重力を発生させた。


「今だ、やれ二人とも」

「ホーリーカノン!!」

「食らえ、俺の一撃!!」


 身動きの取れないベルゼブブに対し、同時攻撃を仕掛ける二人、だが、攻撃が決まる直前でベルゼブブは自身を襲う重力に抵抗してみせた。


「ふんっ!」


 ベルゼブブが気合いを入れると、彼が着ていたジャージのような服の上がはじけ、筋肉隆々の上半身が露わとなる。


 そしてなんと、気合いで重力を克服しその場を離脱してしまった。


「マジか今のを躱すのか!」

「やべ~な、ってかさっきから遊ばれてるよな俺ら」

「うん、やばい」


 驚嘆の言葉を溢す勇者達を尻目にベルゼブブは己の筋肉を見せつけようとファイティングポーズを取った。


「おい、神宮司、腐女子のお前から見てあれどう思う?」

「わ、私は腐女子じゃないけど、筋肉は評価する。でも美男子じゃないから圏外」

「そ、そうか、まあ筋肉は凄いな、オリンピック選手でもあんなに筋肉隆々な奴はいないだろうし」

「褒めているの?悪い気はしないわね」


 自分の自慢の筋肉を褒められと感じたベルゼブブは笑顔になったが、反対にその顔を見て勇者達は皆、気持ち悪いと感じる。


「仕方ない、あれをやろう。竜崎準備して!」

「いいのか?あれをやっても」

「このままでは埒が明かない。魔力切れでこちらが負ける。それに楓はあれを食らっても死なない」

「確かにそうだな」


 神宮司の提案を受け竜崎は全神経を集中した。


「くっはっ!!」


 その時、狙い済ましたかのように勇者達目掛けて、森の中から朝倉がふっ飛ばされてきた。だが、朝倉はぶつかる直前で態勢を立て直し地面着陸をする。


「派手に暴れたわね!」


 朝倉に言われ周囲を確認する勇者と魔王、確かに彼らの周辺の木々は激しい戦いでなぎ倒され、広場のようになっていた。


「随分と遊んでいたようだな、一人も仕留められんとはベルゼブブ」


 朝倉に続き余裕の表情を浮かべ、ルキフグスがベルゼブブの横に降り立つ。上半身が露出しているベルゼブブとは違いルキフグス着る黒いロングコートには傷一つない。


「あのルキフグスおかしいわよ。私の剣も魔法も何ひとつ効かない。それどころか服すら破けなかった」


 悔しそうにする朝倉、彼女はアルカナ能力〈審判〉の能力で命を落とすことはないが、死ぬ時に痛みは感じる。それに対しルキフグスは傷どころか痛みも感じている素振りも見せなかった。


「あなただって、あの生意気な小娘一人倒せてないじゃない?」

「仕方ないだろうベルゼブブ。あの娘は、ゾンビよりしぶとい〈審判〉の能力者だ」

「あら、やだ。それは殺せないわね」

「全くだ。先代の〈審判〉の能力者一人に十人いた魔王の半分も討ち取られたのを私は忘れんさ」

「確かに殺すたびに強くなる奴を止める手段はないからね。苦労して封印しても結局、仲間の勇者達に解除されたしね」


 頷く代わりにルキフグスは肩をすくめた。


「それに次の機会があったら〈貪欲〉で奪おうと思ったが、肝心のアドラメレクはもう死んでいるという始末さ」

「ん?、殺した相手の能力を奪う〈貪欲〉と死んだら復活する〈審判〉その場合どちらの能力が優先されるのかしら?」

「推測だが、より強い意思を持つ方の能力が効果を発揮するだろう」

「それじゃ無理じゃない。あのお嬢ちゃんどう見たって、アドラメレクちゃんよりも意思が強そうだわ」

「ああ、その通りだな。どちらにしろあの小娘は大天使を呼ぶことができる〈節制〉〈法王〉と並ぶ要注意人物だ」


 戦闘中であるが魔王達は余裕の素振りを見せ会話していた。次に、貴様の相手の勇者達の能力は何かとルキフグスが問う。


「はっきりとは分からないけど、あの甲冑が〈戦車〉で、小柄で杖持っている少女が〈魔術師〉、あの眼鏡君が〈星〉ね」


ベルゼブブの予想通り、東条が〈戦車〉神宮司が〈魔術師〉竜崎が〈星〉であった。


「厄介な耐性持つ特殊な鎧を身に纏う〈戦車〉、この世界のすべての魔法を使用でき、また魔法の威力が格段に向上する〈魔術師〉、そして重力を自在に操る〈星〉か」


 三人の能力を昔を懐かしむようにルキフグスは口に出した。だが、それに不満を持つ者がいた。


「こちらの能力は筒抜けというわけね」


 忌々しそうに呟く朝倉に対し、二人の魔王は不敵に笑う。


「そりゃ、そうよ。五百年前、あちし達はあなた達と同じくアルカナ能力を持つ初代勇者達に負けたのよ。次は負けないように学習するのは当然でしょう。それにあなた達もあちし達のクリフォト能力を知っているのでしょう?」


 さも当然のように言うベルゼブブの発言に勇者達は冷や汗をかいた。長き時を経て、人間側は魔王に関する情報のほとんどが失ってしまったからだ。魔王達がそれぞれクリフォト能力というものを持っているのは知っているが、目の前の二人の魔王がどんな能力持つかまでは知らなかった。


「竜崎まだ?」

「もうそろそろだ」


 まだまだ会話をして情報を聞き出したところではあるが、竜崎の準備が完了したのを受け、神宮司が動いた。


「イージス!マジック・シールド!ガード・シールド!……」


 勇者達をドーム状の結界が幾重にも包み込んだ。神宮司が防御魔法を張り巡らすことを知り、朝倉は神宮司達が何をしているのか気付いたが、魔王達は理解できなかった。


「何をしている?それだけの防御魔法を張っても我々の攻撃を数秒防ぐのが関の山だぞ」

「動けない亀さんになってどうするの~」


 勇者達は安堵した。魔王達は気付いていないことに、もうすでに勇者側最大の攻撃が始まっていることに。


「じゃ、あちしのパンチでいつまで持つか勝負ね」

 

 ベルゼブブは腕を振り回し、勇者達に迫る。だが、その直前でルキフグスは勇者の罠に気付く。


「しまった!?まさか、こんな手を打つとは、ベルゼブブ上だ」

「な~に、ルキフグスちゃん柄にもなく慌ててちゃ……」


 ベルゼブブは声も出すこともできなかった。当然だ。自分達の頭上から凄まじい速度で巨大な岩の塊が降ってきたのだから。


 竜崎のアルカナ能力〈星〉の重力操作によって軌道上から落とされる隕石落とし、これこそが勇者達の切り札だ。


「自分達ごと巻き込むつもりか!、いや、そのための防御魔法か!!」

「ルキフグス!イージスを!!」


 魔王達は慌てて防御魔法を張ろうとするが、間に合わない。







「「「ちょっと待てええええええーーー!!!!」」」


 勇者や魔王は気付いていないが、この戦いを塔の最上階から観戦していた者達は口をそろえて絶叫したが、どうすることもできなかった。


 この日突如、空から降ってきたことになった隕石によって、セレンの街の近郊にある大森林、通称ヒィスの森は跡形もなく消滅した。


 

章にタイトルをつけてみました。

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