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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第三章 勇者強襲編
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決戦 勇者VS魔王 前編

 朝倉楓はエリート官僚である父と弁護士の母から、すべての事でトップを取りなさいと言われ育った。そして、彼女は才能と努力でそれに答えた。テニスでは全国大会でベスト4入りし、勉強では、模試の全国ランキングでいつもトップ10入りしている。


 故に自分は人よりも優れているという自覚があった。だが、高木達のように他者を見下すことはしなかった。そもそも住む世界が違うのだ。県クラスの大会に出場したくらいでいい気なっているような低レベルな奴らなど自分が関わるべき存在ではないと心に決めていた。


 故に、クラスの中で負け犬となっていた津田など完全に眼中になかった。いじめられないようにする努力もしてないくせに、嫌な事が起こるとすぐに引きこもる、朝倉は津田をそう評していた。


 だからこそ、その津田が魔王を倒したと知り、心の底から驚いた。同時にあんな負け犬に後れをとった自分が許せなかった。


「津田君には、この世界で生き抜くためのコツ、もしくは私が知らないだけで、彼には意外な才能が眠っているのかもしれないわね」


 これはぜひとも実際に会い確かめる必要があると朝倉は判断した。


 情報を収集した結果、津田は王国東部の森林地帯に、突如として建てられた塔のような巨大な建造物を住処にしていることを知った朝倉達、朝倉一派の四人は、二週間かけ徒歩で現地に赴いた。


 王都を出て、森の入口付近まではガイドの商人達と行動を共にしたが、森の入口付近からでも塔の所在が確認できたため、商人とは別れて彼女達四人のみで、問題の塔を目指した。


 推定二百メートル近くはあるだろうか、明らかのこの世界の建築レベルでは建造するのは不可能だろうと判断した朝倉だが、どこまで伸びているだろうと塔の頂上を見上げた時、仲間の一人で東条大志が宙に浮く二人の人影を発見した。


「なんか、降りてきたぞ!」


 自分達は空を飛ぶことはできないがここは魔法の世界だ。悠長に空を飛んでいる奴がいてもおかしくはないと感じた一同であるが、降りてきた二人が放つ魔力を感じ、気楽な雰囲気は吹き飛んだ。


「なんだ、あの魔力ありえないぞ」

「うん、桁が違い過ぎる」


 魔力だけではない、風格からも二人ただ者ではない事が容易に読み取れた。


「ベルゼブブ、どうやら貴様の言うように、こいつらは勇者のようだな」

「でしょ~!あちしの勘はいつも冴えているのよ」


 圧倒的な強者のオーラを放ちながら気楽に会話する二人。勇者達は目の前の二人が何者であるかという疑問を持ったが、朝倉はすぐに答えに辿りついた。


「そっちのオカマらしき男、あなたまさか第二魔王ベルゼブブ?」

「あっらやだ、分かちゃった?そうあちしは第二魔王愚鈍のベルゼブブ!そしてこちらのイケメンが」

「第三魔王拒絶のルキフグスだ!」


 朝倉の予想通り、この二人は自らを魔王と名乗った。それもリリア王女が要注意の魔王と警告していた上位魔王だ。


「魔王ってここまで規格外なのかよ!」

「流石にこれは無理」

「限度という物がある」


 勇者達は余りにも力の差がることに絶望した。だが、朝倉だけは折れなかった。


「みんな、落ち着きなさい!確かに凄い魔力を感じるけど、結界のおかげで、魔王達の攻撃力は弱まっているはずよ」

「おい、朝倉戦うつもりなのかよ!」

「無謀過ぎ」


 どうやって逃げるか考えていた仲間に対し朝倉はあくまで戦う道を選んだ。


「ここで、この人達を倒せば残りは七体、一気に魔王狩りは進むわ。それに、あなた方も私達を逃がすつもりはないでしょう?」


 朝倉の問いに、二人の魔王は微笑んだ。


「そうだ、貴様ら勇者は我々の敵だ。逃がしはせん!」

「そうよ、ルキフグスちゃんの言う通り、それにそこの気の強いお嬢さん魔王狩りと言ったわね。あちし達を舐めている、その態度教育してあげる!」


 朝倉も彼女に似つかわない笑顔で答えた。


「やるわよ、東条君、竜崎君、小町。私はあっちのイケメンをやるから、あなた達はそっちのオカマの相手をしてね。じゃ行くわよ」


 仲間の同意も得ずにルキフグスに斬りかかる朝倉。仲間の中で最強である彼女が戦い始めた以上、彼らも腹を括るしかなかたった。


「仕方ない、楓が戦い始めた以上私達も戦うしかない」

「だな」

「ああ」


 思い立ったら一直線に突き進む朝倉の性格を熟知している彼らは自分達の敵であるベルゼブブを見据えた。


「いいわよ、かかっていっらしゃい、子猫ちゃん達!」


 朝倉楓対ルキフグス、東条大志、竜崎昇、神宮寺小町対ベルゼブブ。朝倉達の初めての魔王戦はこうして開幕した。




「やるな勇者よ、剣術はかなりのもんだ」

「くっ、ありがとうと受けるわ。あなたも魔王に相応しい剣の腕ね。まるで勝ち目が見えないわ」


 朝倉は王女からもらった聖剣エクスカリバーをルキフグスは魔剣ダインスレイブをそれぞれ手に激しい剣の打ち合いをしていた。


 朝倉の剣の腕だけでは、騎士団長には及ばないので恐らく王国内二番手であろう。だが、彼女は騎士団長よりも魔力を持つ。この世界の近接戦闘の基本として、魔力を全身に漲らせ肉体の強化を行う〈武闘〉という技術が存在する。また、その上で魔法による一時的な肉体の強化を行うこともある。


 つまり、剣術で劣っていても、武闘と魔法次第で、剣術の遅れはある程度取り戻せるのだ。朝倉も剣術では騎士団長には勝てなかったが、魔法と武闘では勝っていたため、練習試合では騎士団長に勝利を納めていた。


 だが、目の前の敵ルキフグスは、剣術と魔力と魔法と武闘、すべての面で彼女を凌駕していた。


「ちっ、結界のせいで、全力を出せないのになんて強さよ」


 余りの強さに思わず舌打ちする朝倉、元の世界でなんでもこなし、あらゆる障害を乗り越えてきた彼女をして、ルキフグスという存在は未だかつてないほどの壁であった。


「確かに結界のせいで、私の魔法は威力も落ち、武闘による肉体の向上も低下しているが、それを指し引いても今の君では私には勝てないよ」


 激しい剣術の応酬の中でも涼しい顔で答えるルキフグス。その姿を見て朝倉に焦りが生まれた。


(今の私では、彼には勝てそうもないわね。このままでは、じきに負けるわ)


 そう予想しながらも、彼女は剣を振るうことを辞めなかった。そして、戦闘中に生じた一瞬の隙を見て、東条達の方を見る。


 破壊と爆音が森の木々を吹き飛ばしていた。剣術と体術しか使っていないこちらと違い、三人ともアルカナ能力と魔法を駆使して派手に戦闘をしていた。だが、それでも一瞬しか見れなかったが苦戦しているということは判断できた。


「他所見は良くないぞ!」

「!?しまった!」


 聖剣を握っていた右腕ごと斬られ宙を舞う。朝倉が目を離した僅かな隙を突き、ルキフグスが斬りおとしたのだ。


「くっ、ううう」


 勝負はついたと判断したルキフグスが、右腕の切り口から大量出血した苦悶の表情を浮かべる朝倉を称賛した。


「腕を斬られた痛みは相当なものだ。それでも弱音も悲鳴も上げない君に感服するよ。それとも腕を斬りおとされるくらいの痛みは君にとっては日常の一部なのかな」


 地球とは違いこの世界には魔法がある。上位の回復魔法を使えば損失した四肢くらい時間さえあれば回復できるが、それでも、戦闘中に生じる痛みは消せない。どんな強者も悲鳴やうめき声くらいは上げるが、朝倉はそういった事をしなかった。


「恨むなよ、アルカナ能力を使われると厄介だから速やかに始末する」


 ルキフグスは痛みのせいかその場に膝をついた朝倉の首筋に魔剣を突きたてる。


 朝倉は最後に死人は出てないようだが相変わらず苦戦している東条達の方を見ると不敵に笑った。そして、魔剣の漆黒の刀身が振り降ろされる。


 朝倉楓の首は仲間達の誰の目に触れられることもなく宙を舞った。


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