黄門先輩の敷地内にいつの間にか入っていた。
町を歩くごとにお金がかかるという地域に驚きつつも、黄門先輩が支払いをしてくれると言うので少し安心した。
しばらく歩いていると、不思議な光景が飛び込んできた。
「えっ? 道路が動いている?」
よくよく見てみるとそれは空港とかにある動くエスカレーターがあった。そうアスファルトのど真ん中に。
「どういうことですか?」
パニックになった僕は黄門先輩に聞いた。
すると黄門先輩がにやりと笑いドヤ顔をした。
「ふっふっふ。聞いて驚くなよ。このエスカレーター。商品名動く歩道が置かれているこの場所はすでに俺の敷地内なのだ。だからエスカレータを設置したのだ」
治も、みーちゃんも、ぴーちゃんも、目を白黒させて意味が分からないというような感じで軽くパニック状態だった。そうもちろん僕も。
「気づかなかっただろ。いつの間にか俺の家の敷地内に入っていたということを」
ここがこの道路がもう黄門先輩の敷地内だって? 訳が分からないよ。訳がワカメだよ。
「まあまあ、そんな顔をしないで動く歩道に乗りたまえ」
黄門先輩が僕達を促したので、僕達4人と一匹は動く歩道に乗った。
住宅街の景色が自然と後ろへと流れていく感じはどこか現実離れしていて、まるで漫画の世界だと、あるいは夢の中の世界に迷い込んだんじゃないかと思った。
「でも、この住宅街の家には誰かが住んでいるんでしょう?」
「そうだね」
「でも、一体誰が住んでいるんですか?」
「ああ、家政婦?」
黄門先輩はさも当然のようにそう、あっさりとさらりと、さっぱりきっぱりくっきりはっきりと、そのいずれの全ても含まれているかのような口調で答えた。
「か、家政婦……ですか? これらの住宅街に住んでいる人達は」
「だから今言っただろう?」
「信じられないですね。アンビリーバボーです」
「そう。でも、全ての家に家政婦が住んでいるわけではなくて、ペット小屋もあるし、金銀財宝を家に隠している家もあるしね」
「き、金銀財宝ですか? でもどうしてそんな家に」
「まあ、カモフラージュって言ったところかな。その方が安全だったりするんだよ。家自体がまあ一つの金庫のようなものなんだよね。でも、セキュリティーは半端じゃないから、変な気は起こさない方がいいよ」
「変な気なんて起こすわけないじゃないですか。でも一体どんなセキュリティーなんだろう……」
「まあ、忍者屋敷、カラクリ屋敷のようになっていたりして、それをずっと進んで行って、罠とかをかいくぐって、更に最新の科学の粋を集めセキュリティーももちろん合わさっていて、まあルパンでも家の金銀財宝を盗むことは容易くないと思うね」
「そうなんですか」
唖然とする僕、黄門先輩以外の顔を見ると、皆同じような顔をしていた。
それにしても住宅街、一体どのぐらいの家が建っているのだろうか。ざっと見ただけで100軒はあるな。
僕がそんな風に辺りを眺めているとそれに気づいたらしい黄門先輩が「30000軒あるよ」とさらりと言った。そうまるでさらりとした梅酒の様に。さも当たり前のようにさらりと。梅酒飲んだことないけど。僕が飲んだことがあるのは梅ジュースだけだけれども。三万軒ってもう家の敷地に町があるよね。もうどうでもいいや。あまりに規模がでかいものに出会うと人間と言うのはどうして、こんな投げ遣りな気持ちになるのだろうか。ああ世界ってもんは広いんだなあ。
僕は放浪の旅に出ている旅人のような感想を夕焼けを見ながらそう思った。




