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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第64話 飼い犬爆誕

 アメリアは、聖女ではなく神官見習いとしての生活を始める。

 なので、他の神官見習いと同じような一日を過ごすことになる。ただし、中央の大神殿からやって来たということで、少しだけ特別扱いである。そこに普通の神官見習いとはちょっと違うという印象を抱かせる状況である。

 服装もちょっといい感じなので、一部の神官見習いからは睨まれるようになってしまってはいるが、混乱を極める最西国の偉い人たちに目をつけられるわけにはいかなかったのだ。


 そうして、最西国での生活を始めたアメリアは、ある日、外の掃除中に汚れた犬を見つけた。


「まあ、素敵なワンちゃんですね」


 どう見ても普通の犬とは違うのだが、この世界のことにはどうしても疎いせいか、前世の記憶とつながってただの犬にしか見えないようである。

 ところが、近くにいた神官がその様子を見ていて慌てている。


「いけません、アメリアさん。それはヘルハウンドですよ」


 魔物であるヘルハウンドと気が付いて、すぐにアメリアを遠ざけようとする。

 しかし、アメリアの方から近づいていってしまうし、ヘルハウンドの方もアメリアに襲い掛かってくる。

 ヘルハウンドに押し倒されてしまったアメリアだが、どういうわけかにこにこと笑ったままヘルハウンドを撫でている。ものすごく肩をかまれているというのに、どうしてこんな表情をしていられるのか。その場にいた神官は青ざめている。


「防御魔法は使っていますから、くすぐったいですよ。ふふっ、なんだか懐かしいですね。このじゃれつかれっぷりは」


 アメリアは前世で飼っていた犬のことを思い出していた。

 セントバーナードという大型の犬だったので、体格が似ていることが懐かしさを増長しているようである。だが、ヘルハウンドが近いのはシベリアンハスキーの方だと思われる。

 だが、とにかくアメリアは前世の家族だった大型犬のことを思い出していた。

 そのせいか、目の前のヘルハウンドを飼いたいなと考えてしまったようである。

 アメリアが考えた瞬間、ヘルハウンドに変化が起きる。

 先程までかみついていたヘルハウンドが、口を一度退けると、アメリアをなめ始めたではないか。

 予想だにしなかった光景に、神官は驚きを隠しきれない。

 魔物は基本的に人間に懐かない。そう考えられていたからだ。

 世の中にはテイマーと言われる職業はあるものの、それこそ特別な技能である。それを、聖女であるアメリアがやってのけたのだ。それこそ驚きでしかないのである。


「あははっ、くすぐったいですね。そうです、ポチと名付けましょう」


「わうっ!」


 アメリアがポチと名付けた瞬間、ヘルハウンドは淡く光る。従魔契約が成立した瞬間である。

 一度鳴いたかと思うと、ヘルハウンドはアメリアの上からどいて、アメリアが起き上がれるようにしている。

 そして、上半身を起こしたアメリアが再びヘルハウンドを撫で始めると、それは嬉しそうに目を細めていた。


「アメリアさん、なんでことをしているのですか……」


「これでこの子、ポチは私たちの家族ですね」


「な、何を言っているんですか。これは司教様とタビラ様に報告しませんと」


 アメリアがポチとじゃれていると、様子を見ていた神官は教会の中へと走っていってしまった。

 その姿を見送ったアメリアは、教会の外の方へと視線を向ける。


(なんだか邪悪な気配を感じましたが、その方からのプレゼントだったのでしょうかね。こんな素敵な贈り物、ありがとうございます)


 アメリアは近くにいた魔族の気配に勘付いていたようである。そして、なぜかその魔族に感謝をしながら、しばらくの間ポチと戯れ続けていた。


 当然ながら、すぐさまタビラに呼び出されてしまうアメリアである。

 その隣にはヘルハウンドのポチがしっかりと居座っている。

 アメリアと一緒にいることが嬉しいのか、アメリアに対して甘えようとする一方、タビラに対しては警戒心が最大級のようである。


「こら、ポチ。この方はタビラさんでして、この教会の偉い人なのですよ。襲ったら、めっ、ですからね」


「くぅ~ん……」


 アメリアに叱られた瞬間に、ポチはものすごくしょげてしまっている。

 目の前の光景に、タビラですら驚いてしまっている。なにせヘルハウンドなんて危険な魔物が、聖女であるアメリアに完全に懐いているのだから。

 教会のことには詳しいタビラも、こんな光景を見たのは初めてだし、過去の記録にもそういったものを見出すことはできなかった。

 一体何が起きているのだろうか。目の前の光景にただただ見つめるばかりである。


「本当に懐いていますね。まさかこんな聖女が現れるだなんて、おそらく初めてですよ」


「そうなのですね。それで、この子は飼ってもよろしいのでしょうか」


「聖女であるアメリア様に懐いていますので、聖獣のような何かという扱いにはなるでしょうが……。取り合えずアメリア様が面倒を見るというのであれば、私たちは特に何も言いません」


 タビラは複雑な表情を浮かべながらも、ポチを飼う許可を出していた。

 これにはアメリアは大喜びである。


「よかったですね、ポチ。これであなたは正式に私の家族ですよ」


「わうっ!」


 アメリアが喜ぶと、ポチも喜んでいる。

 ところが、教会の方は厄介が増えたということで頭を抱えているようである。

 そんなわけで、聖女の隣に魔物が存在するという、なんとも奇妙な光景が最西国の教会に誕生したのであった。

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