↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アメリアの恋人探し  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/70

第57話 謎の男性

 盗賊が倒れたかと思うと、そこに立っていたのは一人の男性だった。

 何が起きたのかは、馬車の外にいたタビラたちにもまったく分からなかった。だが、そこにいた男性が何かをしたのは間違いなかった。


「な、なんですかあの男は……。一体何をしたというのですか」


 タビラはまったく動けないでいる。

 しばらくすると、馬車の扉が開いてアメリアが降りてくる。

 そして、そこに立っていた男性を見て、思わず固まってしまった。


「アメリア様、なぜ降りてこられたのですか」


 タビラに注意をされる。

 しかし、アメリアの顔は目の前に現れた男性に完全に釘付けになっている。


「あの……、ありがとう、ございます」


 どこか恥ずかしがっているような感じで、アメリアは男性にお礼を言っている。


「気にするな。俺はただ、妙な動きをしている連中を見かけたので、あとを追ってきただけだ。まさか、馬車を襲うとは思わなかったがな」


 男性は淡々と答えている。

 その男性を見て、なぜかアメリアはぼーっとした表情を浮かべている。何かを感じ取っているのだろうか。どう見ても普通の感じには見えない感じである。


「力の感じからすれば、君は聖女のようだな。ならば、目の前の惨状も自力でどうにかできるだろう」


「あっ……」


 男性に言われて、アメリアは進行方向で土砂崩れが起きていることを思い出した。


「はっ、そうです。まだこれを起こした連中が近くにいるやもしれません。アメリア様、油断をなさらないで下さい」


 タビラは思い出したかのように、再び周囲を警戒している。

 その様子を見た男性は、なぜか腰に手を当ててため息をついている。


「怪しい連中ならすべて倒してある。一応殺してはいないが、再起は不可能だろうな」


「そ、そうですか……。盗賊とはいえ、ちょっと可哀想な気もしますが」


 男性の言葉に、アメリアは思わずそのように口走ってしまう。良くも悪くも聖女らしいところだ。

 だが、男性はここでもため息をつく。


「聖女というのは、頭の中がおめでたいようだな。確かに、助けられるものならすべてを助けたいだろうが、それは叶わぬこと。時には冷酷な判断を下さねばならないこともある。世の中を甘く見るでない」


 おめでたいと言われてしまって、アメリアはちょっとむっとしてしまう。

 アメリアとしては、心外だったのだろう。

 だが、同時になぜか懐かしい感覚に襲われてしまう。なので、怒ったかのようになったのはほんの一瞬で、自分の胸に手を当てて、すぐに首を捻り始めてしまった。


「やれやれ、危機感が薄いようだな。俺がこの盗賊どもと同じようなやつであったならば、どうするというのだ」


「いえ、それは大丈夫です」


 男性が試すかのような言い方をすると、なぜかアメリアは即答していた。

 根拠などないはずなのだが、アメリアはなぜか確信めいた表情をしていた。一体どこからその自信はやってくるのだろうか。

 さすがの男性も、このアメリアの反応は予想外だったようだ。眉を思いっきりひそめてしまっている。


「あの、せっかくですので、目的地までご一緒していただけないでしょうか。お礼は致します」


「あ、アメリア様!?」


 あまりに唐突な申し出だったので、タビラは驚いてしまっている。

 男性も困惑しているようだが、どういうわけかアメリアの頼みを断れない感じになっている。


(なぜだ。なぜ断れない)


 普段通りならすっぱりと断れるはずなのに、男性は断れなかった。

 結局、諦めたように肩を落としてしまっている。


「……分かった。目的地の手前までなら、ついて行こう」


 男性が受け入れていると、アメリアは両手を組んだ状態で表情を明るくしている。


「ありがとうございます。私はアメリアといいます。先日聖女になったばかりの新人聖女でございます。えっと……」


 お礼を言い始めたアメリアだが、男性の名前が分からずに、そこで詰まってしまっている。


「……俺はソノ、だ。ソノダじゃない、ソノだからな」


「ソノさんですね。よろしくお願いします」


 男性が名乗った名前に、一瞬だがアメリアは奇妙な感覚に陥った。


(ソノ……。そういえば、私の前世の恋人の名字は、園木(そのぎ)でしたね。……いえ、まさかね)


 アメリアがこのように思ってしまったのは、自分の名前のことがあるからだ。

 アメリアの前世の名字が『雨宮(あめみや)』なのである。自分の今の名前と、前世の名字が似通っているために、ふと前世のことが思い出してしまったというわけだ。


「アメリア様、先を急ごうにも、この土砂を取り除きませんと」


「そ、そうですね。では、ちょっと力を使うこととしましょう」


 様子を見かねたタビラの声に反応して、アメリアはその場で祈りを捧げ始める。


(最西国の人たちのため、私たちは急がねばなりません。さぁ、行く手を阻むものを、取り除いて下さい)


 アメリアは強く願いを込めている。

 聖女になるにあたって、マーシエスから聖女の力の使い方の一部は、教えてもらっていた。その通りに、今祈りを捧げているのである。

 しばらくすると、アメリアの体から光の魔力が漏れ始め、その光が崩れ落ちた土砂へと注いでいく。

 聖女となったばかりのアメリアは、早速その力を発揮しようとしているのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。