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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第54話 修行を終えて

 そして、春を迎えた。

 あれだけ寒かった冬が嘘のように、穏やかな暖気に包まれている。

 それはまるで、何かを祝福しているようにすら感じるほどである。


「おめでとうございます。これでアメリアさんの修行は無事に終わりました」


 なんと、二年間を一か月に圧縮した濃厚な修行を、アメリアは無事に完了させてしまっていた。見事完遂なのである。

 正直なところ、この修業を担当していたタビラはやり切れるわけがないと考えていた。

 どう考えたってやり尽くせるような内容ではなかったからだ。

 そういう考えに至るのも、自身が聖女になるための修行を経験しているから。それだけ難しい内容だということを、自分自身が理解しているからこその驚きなのである。


(この子は、まさしく聖女になるために生まれてきたのかもしれないですね)


 修行の指導をやり切ったタビラは、アメリアのことをそのように考えるようになっていた。


「ありがとうございます」


 アメリアはちょっと遅れてから、タビラの言葉に反応していた。やり切れたことにちょっと実感が出てなかったのかもしれない。


「これでアメリアさんは、ニシア様の後継として最西国の聖女として活動することになります。ここポーラリアからは結構遠いですが、そう悪くはない国ですよ。私が保証いたします」


「そうなのですね。それはとても楽しみです」


 タビラが胸を張って言い切るために、アメリアはちょっとおかしそうに笑っている。

 アメリアが笑顔を見せたことで、タビラはかなり安心した表情を浮かべている。


「それでは、修行の完了を、大司教様に報告しなければなりませんね。すぐに参りましょう」


「はい」


 タビラに言われたアメリアは、一緒に大司教マカエルのところまでやって来た。


「おや、これはタビラとアメリアではないですか。修行は無事に終わったようですね」


 二人が一緒に自分のところへやって来たために、大司教はすぐに状況を察したようである。

 大司教はかなり年のいった男性ではあるが、すべての聖職者の頂点であり、大神殿の権威の象徴でもあるので、この辺の能力が特に長けている。


「はい、アメリアさんはとても優秀でして、私も無理ではないかと考えておりました修行を、滞りなく終わらせることができました。とても素晴らしい方ですよ」


 タビラが手放しで褒めている。

 大司教は聖女候補時代のタビラのことも覚えているので、このように感情を露わにしたようなタビラの反応はとても珍しいと感じている。


「分かりました。では、明日の朝、朝食の後に聖女候補のみなさんを集めて、大々的に発表しなければなりませんね」


 大司教はあごを触りながらこのように話している。

 このことが残される聖女候補たちの心にどのような影響を及ぼすのか、正直なところ、誰にも分からない。

 だが、大神殿の立場としては、そのような場を設けなければならないと感じている。

 おそらくはいろいろな考えが彼女たちの中に芽生えることだろう。しかし、それもまた修行の一環である。大司教はいろいろと思いつつも、予定通りにアメリアの聖女認定の儀を行うことに決めた。

 アメリアを自分の部屋へと戻らせることなく、今日は神殿の中で準備のために留まらせることとなった。

 それと同時に、大司教は神官たちを集めて、儀式の準備へと入る。

 アメリアのことは、タビラを始め、他の女性神官たちに任せる。

 一気に大神殿の中の空気が変わったことに、アメリアは戸惑いを隠せない。


「さあ、アメリアさん。私たちは私たちで準備があります。部屋を移動しましょう」


「は、はい……」


 戸惑いを抱えたまま、アメリアはタビラとともに大司教の部屋を出ていく。

 そして、移動した先でまた、アメリアはびっくりしている。今まで修行中に滞在していた部屋とは、明らかに違う部屋に通されたのだから。


「も、ものすごく広いですね……」


「それはそうですよ。本来であれば、10数名の聖女に選ばれた者たちが一緒に使う部屋なのですから。今回は特別にアメリアさん一人だけなので、これほど広く感じるのです」


「な、なるほどですね……」


 部屋の中を改めて見てみると、確かにたくさんのベッドが置いてあった。

 この部屋は、神殿の中でも神聖な部屋とされており、聖女が誕生した時にしか使われない部屋だ。そして、ここには入れる神官もごく一部。その彼女たちの手によって、いつでもきれいに整えられている。

 今回は、アメリアのためだけに、多くの女性神官が部屋の中でせわしく動いている。

 自分のためだけにこれだけ多くの人たちが動いているのかと思うと、なんだか申し訳なってくるアメリアである。


「気にすることおはありませんよ。聖女が誕生するというのは、私たちにとっては喜ばしいことなのですから。アメリアさんは無事に修行を終えられたことで、自分をしっかり労ってあげてください」


「はい」


 タビラに言われて、アメリアは素直に返事をしていた。


 翌日にはついに聖女として認定されることになるアメリア。

 聖女候補としては最後の夜を、ひとまずは静かに過ごすことにしたのである。

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