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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第53話 最後までやり抜け

 大神殿の動きは、お城にも伝わる。


「なんだって!?」


 知らせを聞いた時には、王太子がひときわ大きな声で反応している。あまりの声の大きさに、報告に来た兵士はもちろんのこと、国王も目を丸くしてしまうほどだった。


「マリオ、そんなに驚いてどうしたというのだ」


「父上、いいのですか? アメリアを最西国に取られてしまうのですよ?」


 どうやら、王太子としては聖女となることには賛成だが、最西国へと向かわせることには反対しているようである。

 とはいえ、最西国は聖女を失ったばかりの上、対魔族の結界を構成する上ではかなり重要な場所になる。

 大神殿としては、その重要な拠点に穴を開けたくないということなのだろう。国王は国防という知識があるからこそ、そのことの重要性はよく分かっている。


「マリオ、緊急事態なのだ。落ち着きなさい」


 国王はどうにか王太子を静かにさせようとするが、王太子の方はそれを認めようとはしないようである。


「アメリアと結婚する道筋を見出せそうだというのに、これではまた閉ざされてしまう。彼女は私の運命の人なのに」


 王太子はこんなことを言っている。

 どうやら、初めて会った時から、アメリアに対して一目惚れをしていたようなのだ。だからこそ、あれだけアメリアに積極的にアプローチをしていた。

 ところが、そんなことにアメリアがまったくなびくわけもなく、結局は王太子の徒労で終わっていた。

 それでも、魔王を討つ勇者になれば、アメリアを妻として迎え入れられると最近は頑張っていた。その努力すらもあざ笑うかのような展開であり、王太子はかなり取り乱しているというわけなのだ。


「落ち着け、マリオ。本当にお前はあの聖女候補に固執しているな。どうしてそこまで彼女を欲するのだ」


 あまりの取り乱しように、国王は改めて王太子に問いかける。


「運命の相手だからです」


 国王の問いに対し、王太子は即答で言い切っている。

 そう、これほどまでに王太子はアメリアに執着しているのだ。

 あまりにも強い執着に、国王も頭を抱える始末である。

 先日一筆認めた国王だったが、大神殿からの答えははっきりとしたノーだったために、すでに諦めている。

 このことは王妃とは共有しているものの、王太子にはいえずじまいだった。その中で、王太子の中の恋心は、ますます大きくこじれていっているのだ。

 もはやここまでになってくると、国王としてもお手上げといったところだろう。となれば、アメリアは無理でも、他の聖女候補という選択肢だって出てくる。


「マリオよ。アメリアのことは諦めぬか?」


「諦めません」


 説得を試みようにも、初手でこれである。王太子の意志は固い。

 となれば、大神殿との仲がこじれるにしても、息子の願いをなんとか叶えてやりたいものである。


「仕方ないな。ならば、目指してみるか?」


「何をでございましょうか、父上」


 悩んだ末に国王が導き出したのは、王国の成り立ちについての言い伝えだ。


「以前に目指すと決意した勇者だ。忘れたわけではあるまいな」


「あっ……」


 王太子は、なんとも情けない驚きの声を出していた。この分では忘れていたようである。


「そうか。お前の決意はその程度というわけだな。ならば、アメリアのことは諦めるしかあるまい。嫌だというのならば、最後までやり遂げる意思を見せなさい。聖女というのは、人々に安寧と恵みをもたらす存在。たとえ自身が苦しくても、その使命を必ず忘れずにやり遂げる女性たちなのだ。自分で決めたことすらも、途中で投げ出すような男が、聖女を妻にすることなどできると思うのか?」


 国王から厳しい言葉を投げかけられて、王太子は思い詰めた表情で黙り込んでしまった。

 だが、国王はそこで話をやめなかった。


「いいかい、マリオ。口先だけの人間になるのではない。口に出した以上は、最後までそれをやり遂げるのだ。約束を守れぬ人間は、所詮、その程度でしかない。誰からも最後には相手にされなくなるのだ」


「……はい、分かりました、父上」


 かなり口酸っぱく、厳しく言いつけたのが効いたようだ。

 王太子は悔い改めるような表情を浮かべて、国王の顔を見てしっかりと返事をしている。


「お前は唯一の跡取りだが、聖女を妻として迎えるつもりならば甘いことはまったく言わぬ。必ずややり遂げて、己が心の強さというものを見せつけてくれ」


「はい、父上」


 元気よく返事をした王太子は、早速部屋を出ていく。

 近衛騎士団のところへと向かい、剣の稽古をするためである。

 部屋を出ていく時、王太子が実に堂々とした態度をしていたので、国王は少しばかり安心した表情を浮かべている。

 だが、また数日でやめてしまわないか、ちょっと心配にもなっていた。

 国王はすぐに近衛騎士団長を呼び出し、王太子がちゃんと稽古に出てきているのかを監視し、どれだけ活動したのかということを報告するように言いつけていた。

 本当に今度はやり切ってくれるのか。それだけがただただ心配なのである。

 アメリアに恋心を抱いた王太子。本当に人は変われるのだろうか。

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