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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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51/70

第51話 24倍の密度

 二年間の内容をたった一か月に詰め込むというのは、想像以上の困難があったはずだ。

 並の精神力の持ち主では、その厳しさにすぐにつぶれてしまうだろう。タビラはそれを懸念していた。

 ところが、目の前にいる聖女候補であるアメリアは、厳しいと思われた修行になんと食らいついている。この結果はタビラの予想していなかったことだった。


(この子は、本当に聖女になるつもりなのね。この内容、私ですら当時なら音を上げて逃げ出してしまいそうですのに)


 驚愕の表情を浮かべると同時に、最西国の聖女であったニシアの跡を継ぐにふさわしいとひしひしと感じ取っている。

 これほどまでに強い意志と、光り輝くような瞳は見たことはない。タビラもそう思ってしまうくらいである。

 それならばと、少しだけ厳しさを強めてみようと考えるくらいである。

 ところが、それでもアメリアはついてくる。これには驚かされたタビラではあったものの、さすがにこれ以上は自分の方が参ってしまう。

 そもそもどうにか一か月に詰め込めるように教える内容を調整したのだ。これならば、やむを得ずに削ってしまった内容も組み込めるかもしれない。タビラはアメリアに無限の可能性を感じ取っている。


 タビラの方はアメリアの可能性を感じ取っていたようなのだが、アメリアの方はどうだったのか。

 本日の修行内容を終わらせて戻って来たアメリアは、部屋では軽く祈るくらいはできたのだが、ほぼ何もできずに爆睡してしまっていた。復習すらできないくらいである。


(ふぅ、何も考えられません。おやすみなさい……)


 これがアメリアの限界だった。

 だが、どんなに疲れていても、翌日にはまだ真っ暗なうちに目が覚めてしまう。これまでに築き上げられてきた生活習慣というのは、多少のことではまったく揺らがなかった。

 しかも、まったく眠くないし、疲れも恐ろしいほどになくなっている。


(10代の体力というものの恐ろしさ……。そういえば、前世もこんな感じでしたっけかね)


 目を覚ましたアメリアは、若さというものを実感していた。

 とはいえ、前世も死んだ時は22歳である。そこまで年かといわれたら、甚だ疑問を感じる年齢だった。

 しかし、今のアメリアはそれよりも10歳も若い12歳だ。春先には誕生日を迎えるので、そこで13歳になる。このたった10年という時間の差は、想像以上の違いとなっているようだ。


(異世界という条件を加えたとしても、この体力は、常識を逸脱している気がしますね。もしかしたら、これがマーシエス様の加護のひとつなのかもしれませんね。だとしたら、マーシエス様は一体私に何をさせようというのでしょうかね)


 あまりにも説明のつかない体力に、アメリアは苦笑いを浮かべるばかりである。

 とはいえ、今日もタビラによる修行が行われる。通常ならば5日ごとに入ってくる休日もすべて返上だ。

 しかし、ひと月30日間を休みなくぶっ通しで修行など、常識的に考えてもまったくおかしな話である。アメリアは若さがあるのでまだどうにかなりそうだが、教える方のタビラの体力が持つのか、アメリアはそっちの方が気になっていた。

 なんとっていも、タビラは少なくともアラフォーだと思われるからだ。

 この世界のアラフォーはどちらかといえば高齢者に入ってくる。前世ならまだ働き盛りだが、いかんせん環境が違いすぎる。

 アメリアがここまで心配になる理由は、前回に選ばれた聖女の過半数がすでに亡くなったという現実があるからだ。

 一部はブラック企業並みの過酷な労働環境だったとは聞いているものの、今回亡くなられた最西国の聖女ニシアは、単純に体が衰えいって亡くなっている。

 つまり、酷使をすれば命の危険がある環境にあるということだ。個人差はあるにしても、気になって仕方がないのは事実なのである。


(それを言いましたら、まだ12歳の少女である私もなんですけれどね。若いから大丈夫というのが通じないのは、前世でもちょくちょく見たことですからね)


 それでもアメリアが自分のことをある程度度外視できるのは、ひとえにマーシエスの存在である。女神が目をかけている以上は、そう簡単には死なないだろうというちょっとした期待があるというわけだ。もちろん、過信は禁物なのだが。

 それを考えているのも限界があった。もう朝食の時間である。

 起きてベッドで祈りを捧げてから、すぐの朝食。そこからタビラによる修行が開始する。

 食事と睡眠の時間を除けば、労働基準法も真っ青の一日18時間という修行が待っている。

 前世とほぼ同じのひと月30日間と12か月という期間。その二年分なので720日間。その内容を、ほぼ30日に圧縮しているのだから、そりゃまぁ当然という濃さになってしまう。

 必要なところだけを凝縮した修行なので、どれ一つ手を抜くことはできない。アメリアはそれをわかっているので、しっかりと真面目に取り組んでいる。


 そんな無茶苦茶としか言いようのない修行も、どちらも脱落することなくどんどんと消化されていく。

 このまま最後までやり遂げることができるのだろうか。周りが心配になってくるレベルだった。


 それでも、アメリアは聖女となるために、タビラによる修行を受け続けたのである。

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