第41話 間もなく収穫祭
季節は巡り、大神殿の近くの農村でも収穫の時期を迎える。
アメリアたちが大神殿へと集められたのは春先の時期だったので、おおよそ半年が経過したこととなる。
この時期に収穫された一番最初の作物は、それぞれ一番できのよいものを女神マーシエスへと捧げることになっている。
そのために、村人たちは去年の収穫祭の後から、この一年間、汗水を垂らして頑張ってきたのだという。
マーシエスと知り合いであるアメリアは、その様子を見てなんとも複雑な心境を抱えている。
とはいえ、村人たちの誠意ではあるし、下手なことを言って大神殿から不興を買うわけにもいかないので、アメリアは大人として黙ることにした。今の年齢はまだ思春期頃ではあるのだが。
そんな時期を迎えたアメリアたち。とある日の夜の食事の席で、フォトニアから声をかけられる。
「もうそろそろ、収穫祭の季節でございます。一部の聖女候補の方には、お祭りを手伝っていただくことになります。この後、名前を呼びますので、食事の後に大司教様のお部屋に集まってもらいますようお願い致します」
なんと、収穫祭への参加の呼び掛けだった。
ただ、その人員は既に神殿側で選択済み。なので、誰が選ばれるのかをただじっと黙って聞くだけである。
そんな聖女候補たちの中には、とある人物だけは間違いないという空気が既に漂っている。
それはもちろん、アメリアである。
アメリアだけは既に神聖力の多さと強さが周知というだけあって、聖女候補たちの間ではとっくに諦めがついているのだ。
ちなみにそのアメリアの神聖力は、一度急性魔力欠乏症を発症しながらもまったく質も量も変わっていない。誰がどう考えても選ばれるのは確実視されていた。
食事の前に、フォトニアから収穫祭へと参加する五名が告げられる。
その中には、やはりアメリアの名前があった。アメリアの名前が告げられた瞬間のみんなの反応は、やっぱりそうだよねという感じの諦めの反応だったという。
アメリアとすっかり仲良くなったクレアもその五人の中に含まれており、クレアも順調に聖女となるために成長を遂げていっているようである。
食事が終わると、アメリアたちは大司教であるマカエルの部屋へとやって来る。
部屋の中にはフォトニアとグイードもいる。
「よく来られましたね。では、収穫祭について説明を始めます」
単刀直入である。
前置きをすっぱり飛ばして、本題へと入るようだ。
収穫祭というのは、基本的にはどこの国でも行われている地域があるらしい。
ただ、このポーラリア王国だけは少しわけが違う。
なんといっても、この大神殿があることだ。
かつての魔王との戦いで勝利を収めた聖女の偉業をたたえて建てられたのがこの大神殿。その聖女は慈悲の女神であるマーシエスを信奉していたことから、大神殿の周囲では、収穫祭は特別な意味を成すようになったのだ。
魔王と戦った聖女を称え、そして、信奉する女神を崇めるための宗教的な側面が強く出ているのだ。
そこで、この大神殿周辺での収穫祭には、マーシエスへと作物を奉納するほかに、聖女候補による舞が奉納されることになっている。
さすがにこの辺り出身の聖女候補は知っているようだったが、よそから来た聖女候補たちは「聞いてないよ~」という顔になっていた。アメリアもその一人である。
「舞自体はとても簡単なものです。これから収穫祭までの数日間、普段の修行に加えて、舞を覚えてもらいます」
「えぇーっ!?」
マカエルから告げられた内容に、当然ながら聖女候補たちからは悲鳴にも似た声が飛び出している。
「わたくしは知っていますので、わたくしも教える側に回りますわよ」
「クレアさん……」
クレアはこのあたりの出身ではないものの、このあたりの収穫祭は見たことがあるらしい。
その時に憧れのようなものを持ったということもあって、聖女候補になったら、必ず舞を舞えるようになりたいと思っていたようなのだ。
幼い頃の念願が、こうして叶おうとしている。
しかし、自分以外にも四人いると知った今、一人だけうまく踊れても意味はないと思っているようだ。なので、舞を教えるという行動に出たようである。
これにはフォトニアも心強いと思ったようである。
なにせ、自分たちの頃だと、知っている人物がだれ一人おらず、かなり苦戦した記憶があるからだ。
ちなみに、聖女候補のいない時には、聖女候補だった経験を持つ神官たちが踊るらしい。
(まるで、伝統芸能のようですね)
前世で言うところの盆踊りのようなものかなと思うアメリアである。
そんなわけで、収穫祭までの日数がないという状況の中で、収穫祭で披露するための舞の練習が始まった。
相変わらずの無茶苦茶な日程なのだが、ここまで半年間、ここでの生活を経験してきたアメリアたちは、意外と文句を言うことはなかった。
はたして、完璧とまではいかなくても、十分な踊りを披露できるのか。アメリアたちの猛特訓が、今まさに始まったのである。




