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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第38話 諦めてもらいます

 アメリアが城へと引き返してきた理由は、なにも期間が残っているからだけではなかった。

 それは、マーシエスから言われた言葉にある。

 一か月という滞在期間を通して見極めるということはどういうことなのか。その言葉の意味がまったく分からなかった。なので、その言葉の意味を知るためにも、言われた通りにポーラリアの城に一か月間の滞在を行わないといけないのだ。


 その期間も、もう少しで終わりを迎える。

 残りももう三日となった時だった。

 国王たちとの夕食の席で、アメリアは思わぬことを国王たちから提案されることになる。


「アメリアよ」


「はい、国王陛下」


 国王から声をかけられて、アメリアは返事をする。

 アメリア自身は普段通りの柔らかい表情をしているのだが、声をかけてきた国王の表情は、どういうわけか硬さを感じる雰囲気に包まれていた。

 そうかと思えば、国王は今度は王太子に対して視線を向ける。さすがにその視線には王太子も気が付いたようで、びっくりした表情を浮かべている。

 改めてアメリアに視線を向けると、国王は少し考えたような票所をして、いよいよアメリアに対して話を切り出した。


「正直、神殿で過ごす聖女候補にとって迷惑な話だとは思っている。だが、それを抜きにして一個人として話を聞いてもらいたいのだ」


 国王はずいぶんと思い詰めたかのような感じで話し掛けている。

 あまりにも分かりやすい表情に、アメリアはどういう話をしようとしているのか察しがついていた。だけど、ここでそれをさらっと口には出さない。相手を慮ってこその聖女だと、アメリアは考えているからだ。

 そして、国王の口からは、予想していた通りの話が切り出された。


「神殿との関係を考えれば、このようなことを頼むのはよろしくないことは分かっている。だが、もう滞在時期のないこの時期だからこそ、あえて口に出しておきたいのだ」


 国王の思い詰めた表情を見て、アメリアは黙ってその話を聞いている。


「我が息子、マリオの婚約者となってもらえないだろうか。そのためであるなら、なんだってする用意はある」


 やはり、王太子の婚約者の件だった。

 こういう話になることは、王太子の様子からしてバレバレだった。

 しかし、アメリアには聖女候補としての立場もあるので、そこには一切の言及を行わなかったのだ。

 そんな中、国王からのあえての発言である。やっぱりこの話をされてしまったのかと、アメリアは少々残念そうな表情を浮かべている。

 国王からの発言もあったことで、王太子の視線は完全にアメリアに向いている。

 ところが、アメリアとしてはこの話をそうですかと受け入れるわけにはいかなかった。

 もちろん、普通の令嬢や一般人であれば、こちらの気持ちがどうであれ、強制的に婚約者とされたことだろう。アメリアに選択肢があるのは、大神殿に所属する聖女候補だからだ。

 この立場であるならば、普通に断わることもできるのである。

 だというのに、アメリアはすぐには答えを切り出さなかった。

 黙り込むアメリアの姿を、国王や王太子だけではなく、王妃もじっと見つめている。

 さすがに王族三人から視線を向けられると、アメリアも少し耐え切れなかったようだ。


「分かりました。ちょっとお話したいと思いますので、人払いをお願いできますでしょうか」


 王族の食卓でも、最低限の給仕と衛兵は食堂の中に滞在している。アメリアはその人員に席を外してもらいたいというわけだ。

 国王はすぐに食堂から出て行くように命じている。給仕たちが食堂を出ていき、これで王族三人とアメリアだけが在室している状態となった。

 この状態になると、アメリアは他言は無用という条件を付けて、国王たちに話を切り出す。


「これは他の誰にも話したことはないのですが、私は夢の中でマーシエス様にこのように言われたことがあるのです。私には、運命の相手がいるということを」


「ま、マーシエス様が夢に?!」


 アメリアの話した内容に、国王が大声で反応をしてしまう。

 当然ながら、周囲から静かにするように言われてしまう。何のための人払いかと。


「私が今の生活を続けていると、いずれ運命の相手と出会うというお話でございまして、残念ながら、現状ではその方がどのような方なのかは分かりません」


 アメリアの話の続きを国王たちは静かに聞いている。


「王太子殿下には、現段階ではその運命のようなものを感じておりません。もちろん、だからといっても国王陛下からのお言葉に従うこともできますでしょう。ですが、なにぶん女神さまからのお言葉でございます。それを無視することが、聖女候補である私にどうしてできましょうか」


 アメリアにこのように言われてしまえば、さすがの国王も黙らざるを得なかった。

 国王は国の中では最も上の立場である。だが、相手はこの世界の神だ。さすがの国王とて、相手として悪すぎる。もう黙り込むしかないのだ。

 その結果、国王はアメリアの言い分を聞き入れるしかなかった。

 このことにより、アメリアは三日後に大神殿へと戻っていくことが決定した。

 だからといって、王太子がアメリアを諦めきれるわけがなかった。

 ひとまずの解決を見ることができたのはいいのだが、それは新たな問題を生み出す火種となったようなのであった。

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