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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第31話 聖女候補の奇跡?!

 なんと王都の中で、突然の馬車の暴走が起きた。

 その時、アメリアの脳裏に、前世の最期の瞬間がフラッシュバックする。


(怖い……)


 アメリアは前世では、大学の卒業旅行中に暴走する自動車に轢かれて死んでしまった。そのために、暴走する乗り物に対してトラウマができてしまっていたのだ。

 もちろん、乗ること自体はできるし、普通に走っているものであるのなら、何ら問題はない。

 だが、暴走しているものとなるとそうはいかないわけなのだ


「アメリア! 何をぼさっとしているんですか、避けて下さい!」


 王太子が叫ぶも、トラウマのせいでアメリアの体は完全にこわばってしまっている。動きたくても動けないのだ。


「そこの君! 危ないから退いてくれ!」


 馬車を操る御者も必死に叫んでいる。


(そ、そんな事を言われましても、動けませんよ……)


 どうしても動けないアメリアは、二度目の死すら覚悟した。


「アメリア!」


 そこに飛び出してきたのが、王太子だった。

 暴走する馬車がもう少しというところで、アメリアは王太子に突き飛ばされる。


「殿下! ダメです、死んではいけません!」


 その瞬間、アメリアの体がまばゆく光る。

 あまりのまばゆさに、アメリア自身も目を閉じてしまう。

 しばらくして、アメリアがゆっくりと目を開けると、なんということだろうか、時間が止まってしまっていた。

 王太子までもう少しと迫る馬車。追いかける騎士たちに逃げ惑う王都の住民たち。そのすべてが完全に動きを止めて固まっているのだ。


(どういう事なのですか、これは……)


 当事者であるアメリアが一番驚いている。

 だけど、いつまでも驚いているわけにはいかない。いつ時間が動き出すか分からないので、王太子を馬車の前から引きずり出さないといけない。

 それと同時に、暴走する馬車も止めないといけない。

 アメリアは時間が止まっている間に、それらを実行しようとする。

 そう考えたアメリアの体は、先ほどの恐怖が吹き飛んで、普通に動けるようになっていた。

 まずは王太子を馬車の前から動かすために、王太子のところにやってくる。

 ところが、時間の止まっている王太子は、思いの外重くて動かない。必死に腕を引っ張るも、微動だにしないのだ。

 しばらく引っ張っているというのに、少しも動いた気配がない。


(こうなりましたら、引いてダメなら押す作戦です!)


 息の上がってしまったアメリアは、思い切って馬車の前から退くようにと、王太子に向かって思いっきり体当たりをしている。

 こうする事で、ようやく王太子は馬車の前から退いた。

 ようやく心配事が一つ減ったアメリアは、次に馬の暴走をどうにか治めようとする。

 こういう時は何かしらの精神的なパニック状態に陥っているので、精神状態を落ち着かせる必要がある。

 アメリアは、精神的なやわらげになればと思い、治癒魔法を使いながら馬の体をそっと優しくなでている。

 しばらくすると、アメリアの意識がくらりと揺らぎ出した。

 これは自分の魔力の限界を迎えていると察したアメリアは、馬のそばを離れて突き飛ばされた場所まで戻る。さすがに移動していると、周囲の人間に混乱をもたらしてしまうからだ。

 元居た場所に倒れ込むと同時に、時は再び動き出す。

 ガラガラと馬車が通り過ぎていき、やがてゆっくりと速度を落とし始める。


「アメリア、大丈夫か」


「ええ、大丈夫です。お兄様が助けて下さいましたので……」


 王太子の呼びかけに反応するアメリアだったが、何か様子がおかしい。王太子はそのアメリアの様子に気が付く。


「おい、アメリア。しっかりしろ!」


 王太子が呼び掛けるも、アメリアはすっかりと意識を失ってしまう。

 だらりとしてしまったアメリアを見て、王太子は青ざめてしまう。


「おい、早く馬車を出せ! すぐに戻るぞ!」


「はっ!」


 必死な形相の王太子の言葉に応え、護衛はすぐさま馬車のところへと向かっている。

 馬車を待っている間、王太子は通りの邪魔にならないようにと、アメリアを抱きかかえて通りの端っこの方へと移動していく。

 やがて、城の場所がやって来ると、モネと一緒にアメリアをゆっくりと馬車へと乗せる。


「お前はあの馬車の御者を捕まえておいてくれ。城に連れてきて状況を確認する」


「承知いたしました」


 アメリアを殺しかけた馬車の関係者を許せないのか、王太子の顔はかなりの怒りに満ちている。その形相には、モネも騎士たちも震え上がるくらいだった。

 現場には御者を捕えるためだけに騎士を一人残し、王太子は急いで城へと戻っていく。


(アメリア、どうか無事でいてくれ……)


 王太子は天に祈るような気持ちで、横たわるアメリアの様子を見守っている。


 楽しみなはずだったお出かけは、馬車の暴走という予想外な形で幕を終えてしまった。

 アメリアは無事なのか。王太子はそれだけが心配である。

 だが、王太子は知らない。

 暴走から間一髪助かっただけの認識だろうが、その裏側では、実はとんでもないできごとがおきていようとは。

 意識を失ったアメリア。

 あの時、彼女には一体何が起きていたのだろうか。

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