第28話 国王とのお話
朝と夕方のお祈りはきちんと忘れずにこなしながら、アメリアは呪具だったスマートフォンの経過を見守っている。
三日目になっても、アメリアはスマートフォンを手に入れた経緯を聞けずにいた。というのも、お城の中が思ったよりも窮屈だし、王族には声がかけづらかったのだ。
(王太子殿下が、ずっと私のことを見ているので、余計に聞きづらいです。どうしてあそこまで私を見ているのでしょうか……)
悩んでいたアメリアのところに、ひとつの朗報が入ってくる。
三日目の昼食のお迎えにやって来たモネが、今日の午後は国王がアメリアと話をしたいと言ってきたのだ。これは気兼ねなく国王と話ができるチャンスと、アメリアは希望を持った。
そして、昼食後。
アメリアはその場に残り、国王と話をすることになった。
王太子がじっとアメリアの方を見てくるのだが、とりあえずアメリアは気にしないで国王と向かい合っている。
「父上」
「なんだ、マリオ」
何を思ったのか、王太子は国王に声をかけている。
「僕も、アメリアと一緒に話がしたいです。同席してよろしいでしょうか」
「ならん」
王太子の頼みは、一蹴されてしまった。
あまりにもあっさり過ぎたので、王太子は食い下がろうとする。それでも国王の意見は変わらなかった。
「今日は勉強のある日だろう。マリオは私の跡を継いで国王になってもらわなければならない。今のままでは、お前のわがままを許すわけにはいかない。しっかりと身を入れて勉強を行うように」
「しょ、承知しました、父上」
取り付く島もないくらいに却下をされた王太子は、とても落ち込んだ様子で王妃たちと一緒に食堂から出ていく。
アメリアも可哀想と思いつつも、ずっと視線を向けられ続けるよりはマシと、黙って出ていく姿を見送っていた。
食堂には、国王とアメリア、それと側近の数名となる。グイードもいるので、アメリアが孤立しているというわけではない。
それでも、国王という人物を目の前にして、アメリアは緊張しないわけがなかった。ものすごくカチコチになっている。
「さて、アメリアよ」
「はい、国王陛下」
名前を呼ばれて、アメリアは返事をする。
「お城での生活は、どうかな?」
「あっと……。なんといいますかキラキラし過ぎていて、少し落ち着きませんね」
「そうか。そういえば、平民の出であったな」
「……はい」
出自を確認されたアメリアは、小さく頷いている。
「それにしては、食事のマナーがきちんとしていたな。どこで学んだのだ」
「あ、うっ……」
アメリアは予想もしていなかったところを突かれて、答えに窮している。
それというのも、テーブルマナーを覚えたのは前世のことだ。今世どこで学んだかといったら、とても答えられないことである。
誰かに教えてもらったとなると、嘘を言うことになるのだから、言葉をつぐんでも仕方がないというもの。
「あ、えと、見よう見まねです」
苦し紛れで出した答えはこれだった。他の人の作法を見て覚えたということだ。
国王はこの答えに納得したらしく、それ以降は何も聞いてこなかった。うまくごまかせたと、内心ひやひや状態だ。
困らされたお返しとばかりに、今度はアメリアが声をかける。
「あの、国王陛下、ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
「神殿にお持ちになられたあのスマ……呪具ですけれど、どのような状況で手に入ったのでしょうか」
そう、ようやく気になっていたスマートフォンの入手方法について質問を行えたのだ。心の中でよしっというアメリアである。
このアメリアの質問を受けて、国王はちょっと考え込んでしまっている。よっぽど答えにくいのかもしれない。
ところが、国王は覚悟を決めたようだ。
「そうだな。呪具を浄化してくれた聖女候補なのだ。話す前にあれの状況はどうなのだ」
「呪いを放つような状況にはございません。とても安定しております」
スマートフォンの状態を聞かれて、アメリアはしっかりと答えている。問題ないと。
この答えを受けて、国王は呪具を手に入れた状況を話し始めた。
それによれば、国境付近に襲来した魔物たちを討伐していると、その一体からこぼれ落ちたらしいのだ。
放っておくことも考えたらしいのだが、あまりにもまがまがしい気を放っており、このままにしておくと周囲が汚染されてしまうと考え、大神殿に浄化を依頼したというわけだ。
それで、なぜ危険を冒してまで国王たちが直に神殿に持ってきたかというと、聖女候補たちがいるという情報があったからだ。今は人員が割きづらいと考え、それならば、直接持ち込むとしたわけだった。
「賭けには勝ったわけだな。まさか、こんなに強力な力を持った聖女候補がいるとは、いい拾い物をした気がするよ」
「陛下、さすがに物扱いは困ります」
「ああ、すまなかった」
国王があまりにも失言をしてくれたものだから、さすがのグイードも苦言を呈するしかなかったようである。
結局、あのスマートフォンの入手先は、王国内に現れた魔物からというところまでしかわからなかった。
それでも、前世の恋人の手がかりをひとつ見つけたアメリアは、必ず恋人を見つけ出すと誓いを新たにしたのだった。




