第27話 美しい聖女候補
目を覚ましたアメリアは、ベッドの上で目を覚ます。
ちょうどその時、部屋をノックする音が聞こえてくる。どうやら、ちょうどモネが呼びに来たらしい。
ベッドから起き上がったアメリアは、モネを部屋へと招き入れる。
「アメリア様、お食事の準備が整いました。食堂までご案内致します」
「承知致しました。では、早速参りましょう」
どうやら夕食の準備が整ったらしいので、アメリアはモネの後について、お城の食堂へと向かう。
食堂に到着するも、国王たちの姿は見えない。どうやら、一番最初にやって来たのがアメリアたちのようだった。
「グイード様もいらっしゃいませんね。どうなされたのでしょうか」
首を傾げるアメリアは、しばらく様子を見ている。
聖女候補である自分は、まだ国王たちが着席していない状態では座ってはいけない。アメリアはそう考えているので、立ったままで待っている。
モネを含めた周囲からは座るように勧められても、アメリアは頑として座らなかった。
しばらくすると、ようやく扉が開いて誰かがやって来る。
「あ……」
姿を見せたのは、王太子だった。
アメリアの姿を見つけるなり、なんか変な声を出している。
「これは王太子殿下、お待ちしておりました」
「や、やぁ。聖女候補の……えっと」
「アメリアでございます。ひと月の間、お城にて居候させていただきます」
「ああ、そうか。これは失礼しました」
王太子に挨拶をするも、アメリアは名前を覚えられていなかった。気になるような様子を見せておきながら、なんとも失礼なことである。
しかし、アメリアは驚きながらも広い心で気にしていない。一応謝罪もしてくれたので、それでこの件は終わりなのである。
なにせ、馬車の中ではお互いにあんまり話をしなかった上に、互いに少々ばかり緊張した状態にあった。それに加えて、話をしていたのは国王とグイードがメインだ。緊張していたのなら、その耳にきちんと届いてなくても納得がいくのである。だから、アメリアはこのような態度を取るのである。
「……それで、どうして立っているのですかね。座って待っていても構わないのですよ?」
きちんと謝罪した王太子だが、なぜかアメリアが立っていることを気にしているようだ。聖女候補とはいえど女性。心配のあまり、アメリアに声をかけている。
「いえ、聖女候補とはいえど、私は平民。王族よりも先に腰を掛けるわけにはまいりません。このまま待ちます」
王太子の言葉も頑として受け入れなかった。意固地である。
結局、国王と王妃、それとグイードが現れるまでは、体感で10分ほど。それまでずっとアメリアは立ち続けていた。
部屋に入るとアメリアが立っていたので、国王たちはびっくりである。まさか立って待っているなど、誰も思わなかったのだ。
「アメリアと申したか。まさか、私たちが到着するまでずっと立っておったのか?」
国王の問い掛けに、アメリアはこくりと頷いている。その返事を見て、国王と王妃が動揺しているようだ。
「どこで立って待つようにと教わったのか知らぬが、ここにいる間は、立って待たなくてもよいぞ」
「そうですよ。まるで私たちが懲罰を与えているかのように思われては困りますし、私たちしかいませんので、先に来られた時はお掛けになって待っていて下さい」
国王にも王妃にもしっかりと咎められるアメリアである。国のトップにたしなめられてしまえば、アメリアも従うしかない。
「承知致しました。次からはそうさせていただきます」
しっかりと頭を下げてアメリアは返事をしている。
全員が食卓を囲み、食事が始まる。
(叱られてしまいましたね。私としては敬意を払ったつもりでしたが、よろしくなかったようですね。次からは気をつけませんと)
こんなことを思いながら、アメリアは食事をしているのだが、そのアメリアに対して周囲の視線が集まっている。
「陛下、アメリアさんでしたっけ。平民の出身というわりには、所持の作法がしっかりしておりませんかしら」
「そういえばそうだったな。神殿で一緒に食事をした時も、一人だけしっかりとした作法で食べておったな。一体、どこで学んだというのだろうか、不思議な少女よな」
国王と王妃は、アメリアの食事の作法に驚かされている。
ナイフとフォークなどの食器はきちんと外から使い、カチャカチャという食器の当たる音もほとんどない。
今までの暮らしが気になりすぎるというものだ。
気になるあまり、国王は傍に立つ給仕に伝言をして、グイードに伝える。直接話してもいいのだが、アメリアに聞かれてはなるまいと、間接的に伝えたようだ。
ちなみに、このアメリアの食事作法の美しさは、最初からずっとアメリアを気にかけていた王太子をさらに釘づけにしていた。
その視線があまりにも長く続くので、さすがにアメリアも気になってしまう。
「王太子殿下、どうかなさいましたでしょうか」
「いや、なんでもない。気にしないで下さい」
アメリアが声をかけると、王太子はそういいながら、視線をやっとそらしていた。
これまでも何度か国王や王太子とは食事をしてきてアメリアだったが、今回はまた違った印象を残してしまったようである。
たった食事ひとつをとっても他者の興味を引いてしまうアメリア。無事に一か月を過ごし切り、大神殿に戻ることはできるのだろうか。
文字通り、目が離せないのである。




