第24話 入城
「ここがポーラリア王国の王都……」
門を簡単に通り抜け、アメリアは馬車の外の景色に驚かされている。
これまで見てきたどんな場所と比べてみても、そのにぎやかさは段違いだったからだ。
(さすがは一国の首都。今までとは比べ物にならない賑やかさですね。ですが、前世の東京を知っていますと、これでも少なく感じるんですけれどね)
さすがは転生者であるアメリアである。こんなことを思ってしまうあたり、前世がちょっと恋しいらしい。
「どうかなさいましたか、アメリアさん」
「いえ、にぎやかな場所だと思いましてね。これからひと月の間、ここで暮らすことになるのですか」
グイードが声をかけてくるので、アメリアはひとまず答えている。
街の様子を見ながら、どこかその表情はうらやましそうにも見えてしまったらしく、笑顔を見せるアメリアを見ながら、ちょっと心配そうになってしまった。
「どうだ、王都はにぎやかであろう。常に見ておる必要もないだろうから、希望があれば王都に出かけることも可能だぞ。もちろん、護衛付きだがな」
「本当でございますか?」
王都に出かけられると聞いて、アメリアはずいぶんと喜んでいるようである。
これだけにぎやかな場所へと出向くことはそうそうないのだ。長い間教会暮らしをしていただけに、その喜びようはただ事ではなかった。
そんなアメリアの様子を見ていた王太子は、少し呆けたような表情を浮かべている。それだけ、アメリアに惹かれてしまっているのだろう。
ただ、王太子自身はなぜここまでアメリアに引きつけられるのかは分かっていない。ただ、最初からずいぶんとご執心のようにも見える。
国王も国王で、そのことには気が付いている。
だが、相手は聖女候補という立場だ。いくら国王とはいえど、一存でどうこうできる存在ではないのである。ゆえに、少し悩ましくなっているらしい。
街の中をせわしく見回しているアメリア。そのアメリアに釘付けの王太子。
馬車の中は、なんとも不思議な雰囲気になったまま、お城へと入っていった。
馬車から降りると、そこには大勢の騎士たちが出迎えてくれていた。
鎧を身に着け、マントを羽織い、両サイドに整列した騎士たちの姿は、なんとも圧巻である。
(これが、異世界の騎士たち。なんだか強くて頼もしそうですね)
WEB小説にも慣れ親しんでいたアメリアは、実際の騎士たちを見て、ものすごく感動している。
紙や画面の中でしか見たことのない騎士という存在が、今まさに目の前にそろっているのだから。
騎士に出迎えられたアメリアは、国王と王太子の後ろについて、グイードと並んで城の中へと入っていく。
「まずは休んでもらおうと思ったのだが、その前に例の浄化された呪具を城の中に安置しようと思うのだ。部屋の案内はその後でいいだろうかな」
「はい。その方がよいかと存じます」
国王から視線を向けられたアメリアは、質問に対して迷いなく答えている。
それというのも、未熟な自分が本当に浄化しきれているのか心配だし、なにより、あのスマートフォンのようなものが気になって仕方ないからだ。早く、もっと間近で見てみたいのである。
国王は部下に命じて、例の物品を運ばせてくる。
だが、どこに置こうかというのが迷いどころだ。
ならばということで、アメリアは思い切って提案をしてみる。
「国王陛下、私が使う客間がよいかと存じます。その方が経過観察がとてもしやすいですのね」
「ふむ……。それがいいか」
結局決めきれなかった国王は、アメリアの提案を受け入れることにしたようだ。
こうして、アメリアの狙った通りに、思う存分、スマートフォンのような板を見ることができそうである。
国王は王太子を先に騎士たちに預け、メイドを呼んで客間へと案内させることにする。ただし、国王もそこについてくる。きちんと部屋の中に安置されたことを確認しないことには、心が休まらないからだ。
自分の要望を聞いてもらえた以上、アメリアは仕方なく受け入れることにした。
お城の中を歩くアメリアだが、石造りの建物の割に、床は頑丈だし、天井も高い。はっきりいってどういう建築技術をもってして建てたのか、ものすごく気になってしまう。
しかし、気にし過ぎてしまうと、夜も眠れなくなる可能性があるので、そういうものだということで納得することにした。
メイドが先導して歩いて行った場所は、国王たちも部屋を構える階層だった。
しかも、床や壁などの装飾が明らかに豪華。つまり、王族とかなり近い場所に客間が用意されたということなのだ。
まさかの待遇に、アメリアはちょっと目が回りそうになっている。
「国王陛下、聖女候補アメリア様のお部屋はこちらでございます」
「うむ。では、中に案内してあげなさい」
「はい、承知致しました」
国王の命令で、メイドがゆっくりと扉を開く。
はたして、呪具の浄化の経過観察のためだけにやって来たアメリアは、どのような部屋で過ごすことになるのだろうか。
その部屋の全容が、今明らかになるのである。




