第17話 大物の来訪に備えて
アメリアたちはグイードに連れられて、大司教の部屋までやって来る。
部屋の前に立つと、グイードはドアをノックする。
「大司教様、グイードでございます。例の五人を連れて参りました」
「うむ、入りなさい」
呼び掛けると、部屋の中から入室許可の返事があった。
大司教の許可を得たので、グイードは扉を開いて中へと入っていく。
部屋の中には大司教のほかにはフォトニアを除く、主要な神官たちが勢ぞろいしていた。
さすがにこれだけの顔触れがそろっていると、アメリアたちは衝撃を受けている。これが国王と王太子を迎える体制というものなのだろう。
アメリアは前世の記憶をしっかり維持しているので、とんでもない人たちが来るのは分かっていた。しかし、教会暮らしが長いせいか、少々ばかり世間体に疎くなってしまっていたようだ。
「君たちを呼んだということは、どういうことか分かりますかな?」
部屋に入ったアメリアたちに、大司教であるマカエルから質問が投げかけられる。
食事の前に国王と王太子がやって来るということを聞かされていたために、アメリアたちはすぐに閃いている。
そう、自分たち五人が、大司教たちと一緒に国王と王太子を出迎えるということだ。
おそらく大司教たちは、自分たちの成果として、今いる聖女候補の中で最も優秀な方から五人を選出したということだと思われる。
アメリアはそのことと前世との記憶を結び付けて、これは神殿の王族に対するアピールだと考えた。
アメリアたちは知らないのだが、神殿の生活というものは、基本的に国や貴族たちからの寄付というもので成り立っている。なので、貴賓を迎えた時には、ちゃんとやっているということをしっかりとアピールする必要があるというわけなのだ。
そんなことは知らないけれど、なんとなく察したアメリアたちは、最終的に全員がこくりと頷いていた。
「それでは、あなた方五人には王族を出迎えるために服を着替えてもらいます。では、後のことは頼みましたよ。私には私のやることがございますのでね」
「はい、承知致しました、大司教様」
大司教から声をかけられた司祭は、アメリアたちを連れて別室へと移動していく。
別の部屋へと移動すると、グイードたち男性の神官たちは部屋の中に入らず、外で待機している。さすがに女性ばかりの空間に残っているわけにはいかない。
「では、私たちは別の準備を行ってきます」
「ええ、そちらのことは頼みましたよ」
グイードと女性の神官が言葉を交わし、グイードたちはどこかへと向かっていった。
部屋の中に入ったアメリアたちは、一体何が始めるのだろうかと少し警戒しているようである。
一番格が一番上だと思われる女性の神官が目で合図をすると、他の女性の神官たちがてきぱきと動き始める。カーテンを閉め、ついたてを立て、外から見えないようにしている。
その直後、部屋の中には桶が運び込まれてきた。それと同時に、布を持った神官たちも現れる。
もうここまで来るとアメリアたちはさすがに分かった。
そう、体を洗い清めて、王族たちに会うためのきちんとした身なりに着替えるのだ。どうやら、修行で着ている服装ではダメなようだ。
アメリアは今一度自分たちの着ている服を確認する。修行用の服装ということで汚れることを前提とした簡易的な服装である。確かに人に会うには不向きかもしれない。
だが、この服装は、神殿の近くの街に奉仕活動に出かける際に着ている服装だ。人と会うことに適さないというわけではない。あくまでも高貴な人たちで出会うにはよろしくないというところだろう。
さすがに王族と会うとなれば、洗体もかなり念入りである。水の状態を思えば、どんだけ汚れが溜まっていたんだと思わされる状態である。
アメリアもかなりドン引きしたようで、前世で読んでいたWEB小説のように、体の汚れを落とす魔法を習得しておく必要があるなと焦らされるほどだった。
それが終わると、しっかりと水気を拭き取って、服を着替えることになる。
一人につき二人がかりという状態で服を着せられていく。アメリアたちは初めて着る服装なので、神官たちにされるがままに服を着せられていく。
こうして無事に着替えが終わり、アメリアは改めて自分たちの服装を確認する。
明らかに布の質感からして違う。もうなんというか、これを着たら二度と今までの服なんて着ていられないというくらいに肌触りが良すぎた。
「さぁ、そろそろ国王陛下と王太子殿下が到着なさいます。大司教様と合流し、お出迎えに向かいますよ」
「は、はい!」
着心地の良すぎる服装に酔いしれている場合ではない。アメリアたちはすぐに気持ちを引き締める。
女性神官たちの後について、部屋を移動する。
再び大司教の部屋に戻ると、タイミングよく男性神官が大司教の部屋を訪ねてくる。
「大司教様、ご報告いたします」
「うむ、なんであろうか」
「はい。国王陛下と王太子殿下がご到着なさいました」
「そうか、すぐに出迎えに参ります」
大司教は立ち上がると、アメリアたちの方へと視線を向ける。
「それでは、参りましょうか。くれぐれも、失礼のないように」
アメリアたちはしっかりと返事をすると、大司教たちとともに神殿の外へと向かって歩き出す。
ここまでの準備を行う国王と王太子とは、一体どのような人物なのだろうか。アメリアたちの緊張感は、いよいよピークを迎えることとなる。




