第15話 転生者ですけどお断りします
フォトニアから出された課題に、全員が挑戦する。
すんなり出せる者、出すことにも苦労する者と全員が様々だ。だが、すんなり出せた場合は、その光の玉をずっと維持し続けなければならない。そうなれば、後から出せた方が断然楽というものである。
だが、出せるのに出せなかったということをしても、教官であるフォトニアにはすぐにばれてしまうだろう。
場に集まった聖女候補は次々と光の玉を出現させていく。
アメリアとよくテーブルを一緒にしている五人は、一人を除いてはすんなりと光の玉を出せている。ただし、大きさはそうでもない。フォトニアが出していた手のひらでぎりぎり覆い隠せる程度の光の玉を出せている聖女候補は一人もいなかった。
その様子を見ていたアメリアも、なるほどと思って光の玉を出そうとする。両手のひらを上に向けた状態で、集中して光の玉を出そうとする。
その瞬間だった。
「えっ?」
アメリアの手のひらからは、他の聖女候補とは明らかに違う光を放つ玉が出現した。
「ちょっと、アメリアさん?!」
すぐ近くにいた聖女候補がびっくりしている。
出したのは確かに光の玉なのだが、輝きが完全に他の聖女候補と違いすぎる。手本として見せてくれたフォトニアの光よりもまぶしかった。
(あわわわ……。これは完全にやりすぎだわ。セーブセーブ……)
アメリアは落ち着いて力を制御していく。深呼吸をするたびに、少しずつ光が弱まっていき、ようやくフォトニアよりも弱いレベルの光の玉へと変化していった。
(うーん、これがいわゆる転生チートというやつかしら。女神様ともお話ができる私だからこそ、起きたのかもしれないわね)
アメリアは難しい顔をしながら、光の玉を維持し続けていた。
そして、もう少しでお昼の食事の時間を迎える。この時間までには、ほぼ全員が光の玉を出すことができる状態となり、無事に最初の試験を乗り越えることができそうだった。
最も早く光の玉を出していた者は、時間にして約三時間くらいその状態を維持していたことになる。
「はい、もう充分です。みなさん、お疲れ様でした」
フォトニアが声をかけると、一斉に光の玉を消していっている。ただ、長時間の力の使用に慣れていない聖女候補たちは、光の玉を消すと同時にふらついて倒れそうになっていた。
「では、食事の時間まで休憩でございます。そのまま休んでいて下さい」
休憩を言い渡されるものの、聖女候補たちのほとんどはその言葉に返事をすることができないくらいに疲れ果てていた。
「アメリアさん、あなたは私と一緒に来て下さい。まだまだ元気そうですし、ちょっとお話でもしてみようかと思います」
「は、はい……」
実際、アメリアは元気だ。なんでそんなに元気なのといいたくなるくらいに元気だ。
というわけで、仲良くなった聖女候補たちに見送られながら、アメリアはフォトニアと一緒に部屋から出ていく。
そうしてやってきたのは、フォトニアの個室だった。
さすがは聖女候補を鍛える役目を負った神官の部屋である。アメリアたちの現在いる部屋に比べれば何倍も大きい。
「そこにおかけになって下さい」
「はい、フォトニア様」
言われた通りに、アメリアは椅子に座る。正面にフォトニアが座り、その雰囲気はなんともいえないくらいに険しく感じられた。どういう話をされるのだろうかと、アメリアは警戒を強めている。
急にお偉いさんと一対一で話をすることになんて思ってもみなかったからだ。
アメリアは椅子に座り、両手を強く握って膝の上に置いている。一体どのようなことを言われるのだろうかと、肩をすくめてしまっている。
「アメリアさん」
「は、はい」
「あなたはもう修行が必要ないのではないかしらね」
「えっ」
警戒していたアメリアがかけられた言葉は、なんとも意外なものだった。もう修行しなくていいという話だった。
フォトニアの話によれば、最初に見せた強い光、その直後の力を弱める調節能力、そしてなにより、それをきちんと維持し続けた上に元気が残っているという状態。これらを総合すると、すでに聖女としての基準を満たしてしまっていると考えられるわけだ。
そういう観点から、フォトニアはアメリアにすぐにでも聖女の地位を授からないかと話を持ち掛けてきたというわけである。
だが、アメリアの答えはそうではなかった。
「いいえ、私はまだまだ未熟だと思います。それに、私が考える聖女像からすると、今すぐここから出ていくわけにはまいりません」
「それは、どういう理由からかしら」
「確かに聖女は人々を癒し、施し、その助けとなる存在だと思います。ですが、みなさんの心のよりどころとして、人々をきちんと導けるだけの指導力も必要だと思うのです。フォトニア様のように!」
アメリアは右手を胸に軽く当てながら、フォトニアに訴えた。
その心は、ここにやって来ている他の聖女候補たちを見捨ててはおけないというものだった。
「……分かりました。そこまで言うのでしたら、一年間は猶予を与えましょう。ですが、世界は新たな聖女の誕生を待ちわびております。要請があった時には、正式な聖女として卒業をしていただきますので、覚悟をお願いします」
「承知しました」
ひとまずの譲歩を得ることができたようだ。
アメリアはほっとした様子で、フォトニアと一緒に食堂へと移動をしていく。
(よかった。このまま出ていったら、きっと若いからという理由で無茶振りをたくさんされるはず。いくら転生チートがあるとしても、個人的な体力には限界があるわ。この一年で、私の負担を軽減できるようにしなくては)
アメリアは心の中ではそんなことを思っていた。
これから最低一年間、聖女になるための修行が継続される。その時に備えて、一緒に卒業できる人を鍛え上げよう。そう誓うアメリアなのであった。




