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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第12話 痛いの飛んでいけ

 朝食を終えたアメリアは、同じテーブルに座っていた聖女候補たちと一緒に、神殿の中を歩いている。

 アメリアについてきているのは全部で五人。そのうち半分にあたる三人が、足などを痛そうしている。


「ど、どこまで行くのよ」


「もう少しです。あっ、着きました」


 アメリアはとある部屋の前で立ち止まる。部屋の前には一人の神官が立っている。


「どうしましたか。ここは祈祷室ですよ」


「はい、しばしこの部屋をお貸しいただけますでしょうか」


 神官に問われたアメリアは、用件を伝えている。どうやら、祈祷室を使いたいようだ。

 神官は少し考えたものの、祈りに来る人がいなければこの祈祷室は使われない。というわけで、素直に部屋を貸してくれた。聖女候補たちなので、真剣に祈りに来たのだろうと考えたようだ。


「使い終わったら、外にあるこの札を元の状態に返しておいて下さいね。誰かが勝手に入ってこないとも限りませんのでね」


「承知致しました。許可いただき、感謝致します」


 一緒にやって来ていた聖女候補たちも、神官に感謝を示すために、手を組んで頭を下げている。

 扉を開いて、アメリアに続いて部屋の中へと入っていく。扉が閉められると、許可を出した神官が、札を返して使用中を表示させている。


 祈祷室の中には、三人ほどがかけられる椅子が三列並んでいて、部屋の正面には慈悲の女神であるマーシエスをかたどったとされる小さな彫像が置かれている。


(マーシエス様、少々失礼を致します)


 アメリアは小さく頭を下げると、聖女候補の一人に椅子で横たわるようにお願いをする。

 当然ながら、祈祷室の椅子に横になるなど、聖女候補としてできるわけがない。ドン引きされてしまっている。

 しかし、アメリアが圧をかけると、最初に声をかけられた聖女候補は、渋々椅子の上に横になっている。

 祈祷室の椅子には背もたれがあるのだが、アメリアは特に気にしていないようだ。


「それじゃ、ちょっとお体に失礼させていただきますね。あと、痛いと思いますけど、しばらく我慢を」


「えっ?」


 そういって、アメリアはおもむろにうつぶせに寝かせた聖女候補の足に手を伸ばす。


「あだっ!」


 軽く揉もうとしただけで、横になった聖女候補は声を出している。それだけ筋肉痛が出ているということだろう。

 なにせこの子は、今回の五人の中でも一番歩きづらそうにしていたのだ。

 痛そうな声が聞こえてくるものの、アメリアはふくらはぎを優しくゆっくりと揉んでいく。足の付け根から膝に向けて、それは本当にゆっくりといった感じだ。


「かなりつらい状態のようですね。みなさまはきちんとケアをした方がいいですよ。筋肉は運動をした時に炎症を起こしたり、凝り固まって血流が悪くなったりして、このように痛みを起こすのです。それこそみなさんは聖女候補なのですから、治癒魔法を使ってケアをするのが一番です」


 アメリアはマッサージをしながら、筋肉痛への対処を口にしている。

 運動のケアはもちろん、運動前にストレッチをするなど、実に様々な方法を説明している。

 アメリアにマッサージを受けている聖女候補は、最初こそ痛みを強く感じていたようだが、段々と落ち着いてきている。そういったこともあり、それ以外の四人の聖女候補はアメリアの言葉を素直に受け入れているようだ。


「聖女になれるかどうかは分かりませんが、みなさん、できるだけそろって最後まで残りたいものですよね」


 アメリアは話しかけながら、右足のふくらはぎから太もも、その次は左足へとマッサージを進めていく。

 そうして足のケアが終わると、横になっていた聖女候補はずいぶんとすっきりしたようになっていた。


「うそっ、さっきまであんなに痛かった足が、もうなんともない……」


 立ち上がって、飛び跳ねたりして動いてみるも、さっきまで感じていた激痛が嘘のようになくなっていた。


「一体、何をしたのよ」


「なにって、マッサージをして、足の筋肉をもみほぐしただけですよ。ちょこっとだけ、痛みがなくなるように気持ちを込めましたけど」


 じろりと見られるものの、アメリアはほとんど動じることなく答えている。

 最初の一人は、なんともいえない表情を浮かべている。


「あ、ありがとう。これで修業は続けられそうだわ。こんなに早く挫折してしまっては、選んでくださった方たちに失礼でしたから、助かりましたよ」


「いえいえ、このくらいなんでもありません」


 照れくさそうにする聖女候補に対して、アメリアは柔らかい笑顔を向けている。

 アメリアはそれ以外の四人にも同じようにマッサージを施し、軽く自分でできるセルフマッサージについて説明を加えていた。治癒魔法を同時に使えば、効果が上がることも。


「ありがとう。えっと、お名前は」


「私はアメリアです。みなさまのお名前も教えていただいてよろしいでしょうか」


「は、はい。恩人ですし、これからも一緒に修行を行う仲間ですので、お教えいたします」


 こうして、アメリアはこの日の同じ朝食のテーブルに座っていた五人の聖女候補とすっかり仲良くなったようである。というわけで、この日のアメリアは、この五人と一緒に過ごしたのだった。


 だが、聖女修行はまだ始まったばかり。まだこの先はとても長いのである。

 どのような修行が待っているのか分からない。少しばかり、不安も感じるアメリアなのであった。

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