第11話 最初の休養日
五日間の修行期間が過ぎ、初めての休養日がやって来る。
さすがに毎日詰め込んでいては疲弊するということで、五日間の修行を行い、その後に一日のお休みが挟まる。
この世界の一週間は、基本四属性と光闇の六つの属性を一日ずつ割り当てる形で六日間と決まっている。
風火水土という順番に巡り、五日目が闇の日、最終日を光の日としてお休みにしているのである。修行が休みになるのもそのためだ。
そういうわけで、アメリアも今日はのんびり……していなかった。
小さな街にいた時から敬虔な聖職者として知られていたアメリアが、お休みごときで休むわけがないのだ。いや、休め。
朝起きてからというもの、食事の前までに自室で祈りを捧げ、何食わぬ顔で朝食の席に姿を見せるアメリアである。
食堂にやってきた他の聖女候補たちは、その多くが既に満身創痍である。アメリアがこっそり使っていた治癒魔法もあんまり効果はなかったようだ。
(やはり、気休め程度の治癒魔法ではダメでしたか。ですが、あまり強く力を使うと、フォトニア様にバレてしまいますからね……)
聖女候補たちの疲れ具合を見て、アメリアはずいぶんと傷ついているようだった。
食事の前にお祈りを捧げてから食べ始めるアメリアたち。
ここまで一週間の疲れが溜まっている聖女候補たちは、なかなか食事に手がつかないようだ。
そんな中でも、アメリアだけは普通に食べている。このように普段通りに食事を取っている聖女候補は、全体で数名ほどしか見られない。
(耐えていらっしゃる方は他にもいらっしゃいますね。素晴らしいですね。その根性は、私も見習いたいと思います)
もぐもぐと黙って食べるアメリアは、元気そうな聖女候補の姿になぜか元気をもらっていた。
こういうところも、前世運動部だった時の根性論のようなものが、アメリアに転生してからも息づいているのかもしれない。
「なんで、あなたはそんなに食べられるのよ」
アメリアが黙々と食べていると、正面に座っていた聖女候補が声をかけてきた。
見たところ、アメリアと同い年か、少し上といったところだ。
いつもなら黙って食べているはずなのだが、今日は修業がお休みだからと、声をかけてきたのだと思われる。
アメリアはきょとんとしながらも、今食べかけているものを取り合えず口に運んでおく。一度皿に戻すのも失礼だし、持ったままで相手にするのも失礼だ。なので、食べてしまってからというわけである。
ごくんと飲み込んで、一度落ち着いてから相手と顔を向き合わせる。
「はい、なんでしょうか」
「なんでしょうかじゃないでしょう。どうして平然と食べていられるのかと聞いているの」
どうやら、先程の質問はそのままの意味だったらしい。ちょっと拍子抜けをしたのか、アメリアはきょとんとしている。
「ちょっと答えなさいよ」
「ああ、申し訳ありません」
怒ったように詰め寄ってくるので、アメリアは頬に手を当てながら少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「なんといいましょうか、慣れ、ですかね」
「な、慣れ……?」
アメリアが答えると、質問してきた少女が顔を引きつらせてしまった。それだけ、思ってもみなかった答えだったということだろう。
「あなた、どういう生活を送ってきていたのかしら。これほど厳しい修行をしているような教会は聞いたことありませんよ」
アメリアの回答を聞いた周りの聖女候補たちも、それはもう驚くしかなかった。
これだけきつい修行に慣れているとか、どう考えてみてもあり得ない話だからだ。一様に信じられないという顔を浮かべている。
周りの反応を見て、アメリアはなんか変なことを言ってしまったかなぁと、ちょっとだけ思ってしまった。
「え、えっと……。と、とりあえず今日は修業はお休みですので、しっかり体を回復させましょう。明日からまた、五日間修行が始まりますからね」
アメリアは取り繕ったかのような笑顔を浮かべるものの、とてもではないが、先程の答えからか完全に警戒されてしまっている。
(こ、これはお友だちはできないフラグでしょうかね……)
アメリアは完全に表情を引きつらせていた。
しかし、意外にもみんなはその状況を理解してくれたようである。
「言われた通りですわね。変に他人に突っかかって体力を使っている場合じゃないですね」
「本当ですね。体のあちこちが痛くて、本当は座っているのもきついんですよ」
「筋肉痛でしたら、優しくもみほぐしてあげるのがいいですよ。あまり力を入れますと、かえって痛みが増してしまいます。そっと触れるような感じでほぐすんです」
「まあ、そのような方法が?」
体が痛いと聞いて、アメリアはすかさず反応を示している。こういうところは、さすが前世で運動部で鍛えていただけのことはある。筋肉痛の対処法ならばっちりなのだ。
筋肉痛であるという推測は、意外と簡単というもの。
なぜなら、朝夕と二回、神殿の周囲を走っているからだ。慣れていないと足の筋肉がやられるというわけなのだ。
ただ、それをしようとしても聖女候補の部屋はとにかく狭い。誰か一人と自分一人が入れば、とても他人が入り込む余裕がない。さて、どうしたものだろうか、アメリアは考えた。
「あっ、そうですね」
どうやらアメリアは何かを思いついたようである。
「ひとまず、食事を済ませてしまいましょう。詳しいお話は、その後で」
アメリアがにっこりと話しかけると、同じテーブルにいた聖女候補たちはこくりと頷いていた。
はたして、アメリアはどうするつもりなのだろうか。




