1.出会い
初めての連載作品になります。
最後まで書けるように頑張ります。
駄文ですが、読んで頂けたら嬉しいです。
曽祖父の代から続く御蔵グループ。
御蔵グループは不動産や宿泊業、飲食店に小売業も経営している。
日本国内でも有数の大企業であることは間違いないだろう。
そんな御蔵グループの後継者として育てられてきた。
幼い頃から、たくさんの習い事や礼儀作法を身につけてきて、後継者として恥ずかしくないようにと、それが父の口癖だった。
大学を卒業して会社に入り、二十七歳の時に副社長に就任した。
副社長に就任したとなると、さまざまな業界のパーティに招待される事もある。幼い頃から父親に連れられ何回か行ったことはあるが、大人になった今でもあまり好きになれるものではない。
化粧品会社のBijou。
手頃な価格で求めやすいコスメブランドを展開しており、幅広い年齢層に受けて今最も勢いのある会社だ。
女性だけでなく、メンズコスメも販売しており男性からも支持を得ている。
姉も確か愛用していると言っていた気がする。
Bijouの会社が設立して二十周年を記念してパーティが開かれることとなり、招待された。
会場にはさまざまな会社の社長や、テレビや雑誌等で観たことのある芸能人も招待されており、皆、テーブルに用意された食事を楽しみながら談笑していた。
自分も何人かと挨拶を交わし、ワインを飲んでいたら声を掛けられた。
「遼太郎君!元気かい?」
Bijouの会社の社長、百々瀬実社長だ。
自分の肩に手を置きながら、話しかけて来る。
「お久しぶりです、百々瀬さん。今日は招待して 頂きありがとうございます。」
「こちらこそ、今日は来てくれてありがとう。」
ニコニコと笑顔で話すこの人に、自分の気持ちも穏やかになってくる。
「叔父も本来だったら来るはずだったのですが、急遽来れなくなってしまい申し訳ございません」
社長である叔父も招待されていたが、仕事でトラブルが発生してしまい、急遽来れなくなってしまった。
「気にしなくて良いよ。こっちは全然大丈夫だから。急用だったら仕方ないさ。」
気分を害した様子もなく、笑顔を向けてくれる。
本当に良い人だ。
百々瀬さんと会話をしていると、黒いドレスを着た女性が近寄ってきてた。
「百々瀬社長〜!」
百々瀬さんの左腕に腕を絡め体を密着させながら、甘ったるい声で話続ける。
「今度〜、ご飯連れて行って下さいよ〜」
「そうだね、皆で焼き肉とか良いかもね」
「えー!私は〜、二人っきりが良いですぅ〜」
「ハハハ…二人ではちょっとな」
何なんだこの女は。
露出の高いドレスは、体のラインに沿っておりスタイルの良さを際立てさせている。
スタイルの良い体を、グイグイと百々瀬さんに密着さて困惑させている。
「ごめんね、遼太郎君。彼女は今度、発売する新商品のイメージモデルに起用された愛華さんだ」
「はじめまして〜、モデルの愛華です〜」
語尾を伸ばさなければ喋れないのか。
「はじめまして。御蔵遼太郎です。」
「愛華さん、彼は御蔵グループの副社長をしているんだ。」
握手をしようと手を差し出そうとしたが、
「御蔵グループって大企業じゃないですか〜!若いのに副社長ってすごいですね〜!」
そう言いながら、右腕に腕を絡ませてきた。
「ちょっ…愛華さん!?」
百々瀬さんが驚愕して声を出したが、彼女お構いなしにグイグイと体を密着させて、喋り続ける。
「お兄さん、イケメンですよね〜!身長だって高いし〜、体だって意外にガッチリしてますし〜、モテるんじゃないですか〜?」
「そんな事はありませんよ。全然モテないです。」
ベタベタとわずわらしい。
「えー!本当ですか〜?愛華は恋人に立候補したいくらいですぅ〜!」
「ありがとうございます。」
表面上は笑顔で答える。
ああ、この甲高い声も耳障りだ。
早く離れろ。
「愛華さん、そろそろ行こうか?」
百々瀬さんが苦笑いしながらそう口に出した。
「えー、御蔵さんとまだ話したいです~」
俺はもう話したくない。
彼女に対する第一印象は最悪だ。
「愛華さんを紹介して欲しいって会社の社長がいらっしゃるから、挨拶に行こう。」
そう言って、さりげなく彼女の肩を押しながら自分と離してくれた。
「そうなんですか!じゃあ、早く行きましょ〜。
御蔵さん、また会いましょう〜」
「じゃあ遼太郎君、またね。パーティを楽しんで。」
百々瀬さんは、申し訳なさそうな顔をしながら彼女と離れていった。
二人の姿が見えなくなった所で、ワインを口に含んで一息ついた。
パーティーが始まって一時間程だが、この数分で一気に疲れが押し寄せた。
「御蔵の副社長様だ。」
「相変わらず派手な顔だな。モデルの方が向いてるんじゃないか?」
ザワザワと周りから聞こえてくる雑音。
「女をはべらすのは父親譲りだな」
「おい!それ以上は言うな!」
こんなものいつもの事だ。大丈夫だ。慣れている。
胸にドロドロと黒い煮詰まったものが渦巻くが気にすることじゃない。
パーティーが終わり、会場の外で秘書の黒井の迎えを待っていた。
夏が終わりを迎え始め、朝晩は涼しくなってきていた。夜風を心地よく感じていると、あの甲高い声声が聞こえてきた。
「御蔵さ〜ん!待ってくださいよ〜!」
こちらに近付いてきて、また腕を絡めて喋り始めた。
「もう、帰られるんですか〜?」
「ええ、帰ります」
「愛華は、御蔵さんともっとお話したいです〜」
ここは、パーティー会場の外だ。まだ、たくさんの人達がいる。
こちらを見ながらヒソヒソと話す声が聞こえる。
「申し訳ございませんが、この後予定がありますので失礼させて頂きます。それと、誤解されてしまいますので腕を離していただけますか?」
早く腕を離せ!
くっつかなければ喋れないのか!
「ええ~、愛華は誤解されても大丈夫ですよ〜?それと、さっき言った恋人に立候補したいって話〜、本気ですよ~?」
胸元を押し付け、上目遣いで言ってきた。
こうすれば、男が落ちると思っているのだろう。
それに、この女が欲しいのは御蔵の名前と財産だ。
力任せに腕を振り払う事もできるが、女性相手にそんな事はできない。
どうするかと悩ませていたら、目の前に迎えの車が止まった。
「副社長、お迎えに参りました。」
車から降りてきて、頭を下げる秘書の黒井。
良いタイミングで来てくれた。
「迎えが来たので、腕を離してくれますか?」
そう言ったが、さらに強い力で腕を掴んできた。
「せめて〜、連絡先交換しましょうよ〜?」
「申し訳ございませんが、それは出来ません」
「え〜!何でですか〜?交換してくれないと離しませんよ〜!」
黒井が見かねてこちらに近付いて来ようとしたが、手のひらを向け制止させた。
ああ、本当に腹立たしい事ばかりだ。
会場に居た好き勝手言う奴らも、この女にも。もう、限界だ。
「離せと言っているだろう。分からないのか?いい加減にしろ。」
今の自分は、とてつもなく冷え切った目をしているだろう。その冷えた目で見下ろす。
自分の顔を見た彼女が青褪めた顔になっていた。
「あ…、その…、ごめんなさい。」
そう言いながら、腕をゆっくりと離した。
「恋人だと?笑わせるな。」
顔は下を向き手は震えていたが、可哀想だとも思わない。
彼女はそのままにして、車に乗り込んだ。
「このままご自宅に帰られますか?」
何も聞いてこない黒井。
聞かなくても分かっているのだろう。先程の事は良くある事だか、今回はいつも以上にしつこかった。
「ああ、家まで頼む」
「畏まりました」
ゆっくりと車が走り出し家に向かう。
今日はいつも以上にぐっすりと寝れるかもしれないな。
家に着くまでの間、目を閉じながら車内に流れる音楽に耳を傾けていた。
だが、この時に気づいておけば良かった。
一台のカメラが向けられていた事に。




