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■6-2 ヴァレリオ編:鎖の看守長は、願いを命じられない

****


下層区画は、赤黒い光で満ちていた。

結界が乱れ、扉の一部が半開きのまま止まっている。


通路の中央には、負傷した看守。

その少し奥に、足を押さえた囚人。


さらに奥には、拘束されたまま動けなくなった囚人たち。

看守と囚人が同じ通路に閉じ込められている。


一歩間違えれば暴動になる。


第一隊は外周を封鎖している。

第二隊は負傷者救助の準備。

第三隊の若い看守が、緊張した顔で前へ出た。


「看守長」


ヴァレリオは彼を見る。


「許可は出した。判断しなさい」


若い看守は、一瞬だけ息を呑んだ。

それから、囚人たちへ向き直る。


「負傷者を運ぶため、拘束を一部緩める」


囚人たちがざわつく。

ヴァレリオの鎖が、わずかに動いた。


止めかけたのかもしれない。

だが、止めなかった。


若い看守は続ける。


「逃げれば再拘束する。協力すれば、負傷者搬送を優先する」


囚人の一人が笑った。


「看守が囚人を頼るのか」


若い看守は怯まなかった。


「足の使える者が足を使う。それだけだ」


その言葉に、囚人が一瞬黙る。

それから、舌打ちしながら負傷した囚人の肩を担いだ。


「逃げねえよ。今逃げたら、俺も潰れる」


別の囚人も動く。

負傷した看守を、看守二人が担ぐ。


通路が乱れた。

予定された配置ではない。


だが、崩れてはいない。


「晴人」


ヴァレリオの声が飛ぶ。


「左の誘導灯を回しなさい」


「どれだよ」

「赤く点滅しているものです」


「赤く点滅してるの三つあるぞ」

「一番危険そうなもの以外」


「説明が監獄向きすぎる」

「早く」


「了解」


俺は壁際の誘導灯に走った。

取っ手を回すと、床の魔導線が光り、避難経路が浮かび上がる。


若い看守がそれを見て叫ぶ。


「こちらへ! 負傷者を先に! 拘束紋を踏むな、右へ寄れ!」


囚人が負傷者を担ぎ、看守が通路を確保する。

ヴァレリオは中央に立ったまま、グリムチェインを操っていた。


鎖は、全員を縛っているわけではない。

落ちかけた結界を支え、暴走しそうな扉を押さえ、必要な場所だけを繋いでいる。


握りすぎていた鎖が、少しだけ緩んでいた。

でも、監獄は崩れない。


むしろ、動いている。

ヴァレリオの額に、わずかに汗が滲む。


彼はそれでも指示を続けた。


「第一隊、外周維持」

「はい!」


「第二隊、搬送開始」

「了解!」


「第三隊」


若い看守が顔を上げる。

ヴァレリオは一瞬だけ黙った。


それから言う。


「そのまま判断を続けなさい」


若い看守の目が見開かれる。


「はい!」


結界の乱れが、さらに強くなった。

半開きの第五扉が激しく震える。


そこから、囚人の一人が吹き飛ばされかけた。

ヴァレリオの鎖が伸びる。


だが、それより早く若い看守が動いた。


「伏せろ!」


囚人の腕を掴み、引き戻す。

ヴァレリオは止めなかった。


代わりに、鎖で扉を押さえる。


「よく見た」


短い賞賛だった。

若い看守は驚いた顔をした。


でも、すぐに頷く。


「ありがとうございます!」


最後の負傷者が通路から出る。

囚人たちも再拘束される。


誰も逃げなかった。

誰も取り残されなかった。


下層区画の結界が、ゆっくり安定していく。

赤黒い光が、静かな深紅へ変わった。


****


事態が収束すると、視察団と看守たちが下層の出口に集まっていた。

負傷者は運ばれ、囚人たちは再び安全区画へ戻された。


若い看守は息を切らしている。

けれど、顔は少し誇らしげだった。


視察団の一人が口を開く。


「統制を失わず、現場判断まで機能させた」


別の者が頷く。


「見事な看守長だ」

「以前のグリムゲートでは考えられない」


ヴァレリオは、いつものように冷静な顔をしていた。

だが、看守たちの視線が少し違う。


恐れだけではない。

従うだけでもない。


誇らしさがあった。

若い看守が、ヴァレリオの前に立つ。


「看守長。判断の許可、ありがとうございました」


ヴァレリオは彼を見る。


「私は、許可しただけです」

「ですが、信じていただきました」


その言葉に、ヴァレリオの指が一瞬だけ動いた。

鎖が、小さく鳴る。


「……結果で返しなさい」


「はい!」


若い看守は、まっすぐ返事をした。

ヴァレリオは少しだけ視線を逸らした。


照れている、というには分かりにくい。

でも、たぶん照れている。


俺はそう思った。

ヴァレリオがこちらを見る。


「晴人」

「何」


「どうして分かった」


「何が」

「私が、鎖を握りすぎていると」


そんなふうに聞かれるとは思っていなかった。

俺は少し考える。


「お前を見てれば分かるさ」


ヴァレリオが止まった。


「看守たちは動けそうだった。若い看守も、最初から悪い判断じゃなかった。なのに、お前が全部止めてた」

「……」


「鎖を使ってるっていうより、鎖から手を離せないように見えた」


ヴァレリオは何も言わなかった。

赤い目が、俺を見る。


刺すような目なのに、少しだけ揺れていた。


「無礼な男だ」


「よく言われる」

「でしょうね」


ヴァレリオは低く笑った。

今度は、ただ冷たいだけではなかった。


「ですが、悪くない」


鎖が、彼の指先でゆるく揺れる。

監獄の赤黒い光が、少しずつ薄くなった。


空中に表示が浮かぶ。


【魔導監獄グリムゲート:安定化】

【下層区画結界:復旧】

【負傷者救助:完了】

【現場判断評価:更新】


ヴァレリオは、自分の鎖を見ていた。

たぶん、彼には違う形で分かっているのだろう。


すべてを縛るための鎖が、少しだけ別の意味を持ったことを。


監獄の足音が遠くなる。

視察団の声も。

看守たちの報告も。

囚人たちのざわめきも。


赤黒い鎖の光が、俺とヴァレリオの周りを丸く囲んだ。


ヴァレリオは、ゆっくりこちらを見る。


「晴人」

「何」


「鎖を捨てろとは言わなかった」

「言ってないな」


「握りすぎだ、と言った」

「言ったな」


「……それは、なかなか厄介な言葉です」

「そうか?」


「ええ。捨てろと言われれば、拒めばいい。支配を否定されれば、必要性を説けばいい」


ヴァレリオは鎖を指先で撫でる。


「ですが、握りすぎだと言われると」


「うん」

「少しだけ、緩めたくなる」


その声は、さっきまでより静かだった。

空中に、新しい表示が浮かぶ。


【ナイトステイが発生しました】

対象プリンス:ヴァレリオ・グリム

帰還条件:対象プリンスとのキス

※条件達成後、現実世界への帰還選択が可能になります


ヴァレリオは目を細めた。


「あなたが戻るための条件、ということですか」

「たぶん」


「なるほど」


「理解が早いな」

「契約の夜が開いたなら、閉じる条件もある。監獄と同じです」


「何でも監獄に例えるな」

「分かりやすいでしょう」


「分かりやすくはない」


ヴァレリオは低く笑った。

鎖の光が一度揺れる。


周囲の下層区画が遠ざかり、黒い廊下も、看守たちの声も、赤黒い警告灯も薄れていく。

気づけば、俺たちは監獄塔の上階にある部屋に立っていた。


監獄長室。

黒い執務机。


壁一面の鍵束。

魔導結界の管理盤。


窓の外には、赤黒い霧に包まれたグリムゲートの全景が広がっている。

部屋の中央には、低い長椅子。


その横には、グリムチェインを収めるための黒い鎖掛け。

ヴァレリオはそこへ歩き、指に絡めていた魔鎖を見下ろした。


「ここも、息苦しいな」


俺が言うと、ヴァレリオは振り向いた。


「監獄長室ですから」

「だから便利に使うな」


「あなたは、ずいぶんこの部屋に文句を言いますね」

「褒めるところが少ない」


「正直な方だ」

「よく言われる」


「でしょうね」


ヴァレリオは薄く笑った。

それから、手袋を片方ずつ外し始める。


黒い革手袋。

指先から外されるたびに、鎖の音が小さくなる。


ヴァレリオは外した手袋を机に置き、グリムチェインを鎖掛けへかけた。

完全に手放したわけではない。


すぐ届く距離にある。

けれど、彼の指からは離れている。


それだけで、部屋の空気が少しだけ変わった気がした。


「外すんだな」


「捨てたわけではありません」

「分かってる」


「必要なら、また握ります」

「それも分かってる」


ヴァレリオが、少しだけ不思議そうに俺を見る。


「あなたは否定しないのですね」


「鎖が必要な時もあるんだろ」

「ええ」


「でも、ずっと握ってると手が痛いだろ」


ヴァレリオは黙った。

そして、自分の右手を見た。


手袋を外した指には、鎖の跡が薄く残っている。

赤い線。


強く握り続けた跡。


「……痛みには慣れています」


「慣れるなよ」

「あなたは本当に」


ヴァレリオは言いかけて、やめた。

少しだけ息を吐く。


「鎖より厄介ですね」


「褒めてないな」

「褒めています」


「絶対嘘だろ」


ヴァレリオは微かに笑った。

その笑い方は、看守長としての冷えた笑みではなく、少しだけ力が抜けたものだった。


空中の表示が、静かに光っている。


【帰還条件:対象プリンスとのキス】


「唇への接触」

「言い方が事務的」


「では、口づけ」

「急に古い」


「お気に召しませんか」

「そういう問題じゃない」


ヴァレリオは楽しそうに目を細める。


「嫌なら言いなさい」


先に言われた。

俺は少しだけ詰まる。


「それ、こっちの台詞なんだけど」

「あなたは言いそうですから、先に取り上げました」


「性格悪いな」

「看守長ですので」


「関係あるか?」

「あります」


ヴァレリオはそう言って、少しだけ近づいた。


「晴人」

「何」


「あなたは、私に鎖を捨てろとは言わなかった」

「何度も言うな」


「重要です」


ヴァレリオの赤い目が、まっすぐこちらを見る。


「私は、支配を否定されることには慣れています。恐れられることにも、責められることにも、反論する言葉を持っている」

「うん」


「ですが、あなたは違った」


彼は鎖掛けにかかったグリムチェインへ視線を向ける。


「鎖を認めた上で、握りすぎだと言った」


「見えたからな」

「見えすぎです」


「よく言われる」

「私には、あまりよくありません」


「何で」

「隠していたものを、引きずり出される」


ヴァレリオの声は静かだった。

怒ってはいない。


でも、無防備でもない。

鎖を外した代わりに、言葉で最後の距離を測っているみたいだった。


「嫌なのか」


俺が聞くと、ヴァレリオは黙った。

いつものように即答しない。


赤い目が、俺を見ている。

それから、ゆっくり答えた。


「嫌ではありません」


低い声だった。


「不愉快ではある。落ち着かない。制御できない。ですが」

「ですが?」


「嫌ではない」

「そうか」


「あなたは?」

「嫌じゃない」


答えると、ヴァレリオがほんの少し目を伏せた。

それが安堵なのか、照れなのか、判断が難しい。


ただ、鎖掛けのグリムチェインが小さく揺れた。

彼の指が、反射的にそこへ伸びかける。


でも、途中で止まった。

握らなかった。


「今、握りかけたな」


「見ないでいただきたい」

「見えたからな」


「その言葉は嫌いになりそうです」

「嫌いなのか」


「……嫌ではありません」

「どっちだよ」


ヴァレリオは、少しだけ笑った。

そして、俺の手を取った。


手袋のない指が、俺の手首に触れる。

冷たいと思った。


でも、触れているうちに、少しずつ温度が移ってくる。

ヴァレリオの手は、見た目より硬かった。


鎖を握り続けてきた手だった。


「拘束する気か」


「必要ですか」

「必要ない」


「では、しません」


さらりと言った。

それだけなのに、少しだけ驚いた。


ヴァレリオも、その反応に気づいたらしい。


「意外そうですね」

「いや」


「拘束されると思いましたか」

「少し」


「私はそこまで節操なしではありません」


「監獄長が言うと怖い」

「あなたは本当に無礼ですね」


「よく言われる」


ヴァレリオは俺の手首を掴んだまま、親指で軽くそこを撫でた。

脈を測るみたいな触れ方だった。


「逃げるなら、今です」


「逃げ道あるのか」

「扉も窓も、私の管理下です」


「ないじゃないか」

「ええ」


「性格悪い」

「ですが、鎖は使っていません」


確かに、鎖はない。

扉も窓も閉じている。


それでも、手首にあるのは鎖ではなく、手だった。


「逃げろって言ってるのか、逃げるなって言ってるのか、どっちだよ」


「私にも分かりません」


その答えは、少し意外だった。

ヴァレリオは赤い目で俺を見る。


「緩める、というのは難しい」

「だろうな」


「握れば分かる。離せば失う。ですが、緩めるというのは」


彼は言葉を選ぶ。


「相手が、その隙間に残ると信じる必要がある」


「残るかどうかは、相手次第だろ」

「そこが厄介です」


「でも、部下は残っただろ」


「……ええ」

「なら、少しずつ慣れろ」


「また簡単に言う」

「難しく言った方がいいか?」


「いいえ」


ヴァレリオは俺の手首から指を離した。

離した、と思った。


けれど、すぐに今度は俺の指先に触れた。

拘束ではなく、確認するみたいに。


「晴人」

「何」


「私は、あなたを鎖で繋がない」


その声は、やけに静かだった。


「ですが、今夜だけは」

「うん」


「逃げずに、ここにいなさい」

「それは命令か?」


ヴァレリオは少し黙った。

そして、目を伏せる。


「……願いです」


言い慣れていないのが分かった。

たぶん、本人も自分で気づいている。


だからこそ、部屋の空気が一瞬だけ変わった。

俺は少しだけ息を吐いた。


「最初からそう言えばいいだろ」


「難しいのです」

「そうか」


「笑わないのですか」

「笑うところじゃないだろ」


ヴァレリオは、ほんの少しだけ目を見開いた。

それから、低く笑った。


「本当に、厄介な人だ」


キスは、静かだった。

ヴァレリオが近づく。


黒衣の裾が揺れる。

赤い目が、最後まで俺を見ている。


逃げ道を塞ぐみたいな視線だった。

でも、手は俺を縛っていない。


唇が触れる直前、ヴァレリオの指が一瞬だけ揺れた。

鎖を探すように。


何かを握ろうとするように。

俺は、その手に自分の手を重ねた。


「握るなら、こっちにしろ」


言ってから、少し恥ずかしくなった。

何を言っているんだ、俺は。


ヴァレリオは目を見開いた。

それから、息を呑む。


「……無礼な」


「嫌なら言え」

「嫌では、ありません」


その返事は早かった。

さっきまでより、ずっと早かった。


ヴァレリオは俺の手を握った。

鎖ではなく、手を。


そして、キスをした。

最初は、支配するみたいな近さだった。


逃げ道を測るように、角度も距離も管理しようとする。

けれど、手を握っているせいか、途中で少しだけ崩れた。


息が乱れる。

力が緩む。


唇が一度離れかけて、また触れる。

今度は、命令でも拘束でもなかった。


ただ、確かめるみたいなキスだった。

離れると、ヴァレリオは俺の手を握ったまま、視線を伏せていた。


「……これは」


「何」

「鎖より、厄介ですね」


「何が」

「離すタイミングが、分かりません」


妙に真面目に言うから、少し笑いそうになった。

でも、笑わなかった。


代わりに言う。


「少しずつ慣れろ」


ヴァレリオは、俺を見た。

それから、低く笑った。


「また、それですか」

「便利だろ」


「ええ。悔しいほどに」


空中に表示が浮かぶ。


【帰還条件を満たしました】

現実世界へ戻りますか? YES/NO


ヴァレリオは、まだ俺の手を握っている。

けれど、指の力は強すぎない。


逃がさないためではなく、離れる前に覚えておくためみたいな握り方だった。


「戻るのですか」

「戻る」


「そうですか」

「鎖、握るなよ」


ヴァレリオが眉を上げる。


「命令ですか」


「注意」

「あなたが私に注意を」


「悪いか」

「いいえ」


ヴァレリオは鎖掛けのグリムチェインを見る。

それから、手を伸ばさずに俺へ視線を戻した。


「握りません」


「本当か」

「今は」


「そこは言い切れよ」

「嘘は言いません」


「真面目だな」

「看守長ですので」


「またそれか」


ヴァレリオはわずかに笑った。

そして、俺の手をゆっくり離す。


本当に、ゆっくりだった。


「晴人」

「何」


「次に来る時は、扉を叩きなさい」


「監獄に?」

「ええ」


「開けてくれるのか」

「私が判断します」


「そこは開けるって言えよ」

「鍵を持つ者は、簡単に約束しません」


「性格悪いな」


「ですが」


ヴァレリオは少しだけ声を低くする。


「あなたのために、鍵を探すくらいはしましょう」


返しに困る。

俺は視線を逸らした。


「そういうことを普通に言うな」


「普通ではありません」

「分かってるなら言うな」


「分かっているから言うのです」


面倒な男だ。


俺はYESを押した。


赤黒い光が、ゆっくり広がる。

最後に見えたのは、鎖掛けへ手を伸ばさず、手袋もつけないまま、俺を見送るヴァレリオの姿だった。


****


現実に戻ると、俺はリビングのソファに座っていた。

タブレットの画面には、魔導監獄グリムゲートの結果が表示されている。


【期間限定イベント】

魔導監獄グリムゲートと鎖の王国

【イベント評価:最大】

【限定スチル:獲得】

【追加ボイス:保存】

【ナイトステイ記録:保存】


画面には、監獄長室が映っていた。

黒い執務机。


壁一面の鍵束。

鎖掛けに置かれた魔鎖グリムチェイン


手袋を外したヴァレリオ。

そして、誰かの手を握る直前のように、わずかに開かれた右手。


タイトルが表示される。


【限定スチル:緩めた鎖】


「……手、痛そうだったな」


呟いてから、少しだけ画面を見続けた。

ヴァレリオは相変わらず怖い顔をしている。


でも、最初より少しだけ息がしやすそうに見える。

姉からメッセージが飛んできた。


【姉:通知来た】

【姉:限定スチル取れてる!?】

【姉:監獄長室!?】

【姉:手袋外してる!?】

【姉:鎖、置いてる!?】


俺は、追加ボイスを押した。


『鎖を捨てたわけではありません。ただ……あなたの前では、少し緩めてもいい』


低い声が流れる。

俺は画面を見た。


黒い鎖。

外された手袋。


赤い目。


「……厄介なのはどっちだよ」


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