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渓谷への準備

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「え。徒歩で森を抜けるだけでも、五日はかかると思いますけど。森抜けてからも渓谷に着くまで、山を登って、、、」

『上空は遮る物は無いですからね。遮る物はは、飛んでる魔物くらいですよ。あー、でも誰かを連れて行かなきゃ行けないのか。そうなると三日四日くらいなのか?』


 遮る物が無いからと言って、渓谷まで片道でも十日はかかると思って良いだろう。


「それでも早すぎる気がするのですが」

『あ!荷物は収納するんですけど、一緒に来てもらう方はどうしましょうかね。』


 確かに荷物が無くなれば、移動速度も相当早くなるけど、アイルさんはどれ程の速度で空を飛ぶつもりなのか。ミーオの尻尾が隠れているので、ミーオも高速で空を飛ぶのを想像したのだろう。えー、これわたしが行くことになるの?


「ミ、ミーオ。いつだったか空を飛んでみたいって言ってなかった?」

「ミーオそんなこと言ってない。薬草、間違えられないからポシュカが行くべき」

「えー?ずっと前に言ってましたよ?それに、上級冒険者たるミーオが薬草を間違えるはずないじゃない」

「空を飛びたいって言ってたのはポシュカ。それに渓谷らへんは色んな薬草があるから、ポシュカはそういうの好き」

『二人とも、空を飛んでみたいですか?それなら、二人をどうやって運ぶか考えてみますよ!』


 待って!アイルさん、待って!!確かに小さな頃に、鳥をみて空を飛んでみたいとは思ったことありますけど。それは、優雅に景色を楽しんでみたいわけで。それにどうやって運ぶかも決まってないのに。


「ポ、ポシュカは重いから、アイルはポシュカ運ぶだけで大変。ミーオは大人しくお留守番してる。」


 こ、この猫いまなんて言った!?


「ミーオと比べたら確かに重いのかも。かも!しれませんけど、ミーオは軽すぎてアイルさんの負担にはなりませんよ。ね?アイルさん?」

『え、え、ええ。』


 うんうん。逃がさない。ミーオ、絶対に逃しませんよ。


『で、では、私は二人を運ぶ方法を考えておくので、お二人は他の準備をお願いします。』

「はい。わかりました。ミーオ?行くわよ?」


 ミーオの腰を抱えて、拠点へ帰る道を行く。ふふ、道連れなんだから。


 アイルはポシュカから黒いオーラのような物が漂っているように感じ、二人を背にして出店のある広場へと足を向けた。 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『うーむ。人を運ぶ方法か。』


 アイルは行き交う小さき者達を眺めながら、ミーオとポシュカをどうやって連れていくのか考えていた。身体を元の姿に戻せば、背中に乗せれば良いのだがこの姿では背中に乗ってもらうには狭すぎる。魔法で容器を作っても良いのだが、二人入る大きさの容器持つときに両手が塞がってしまうのがな。


『まあ、なんとかなるな!魔物が出たら魔法で撃退すれば良いか。そんなことよりも、さっき見きれなかった屋台だ』


 再び、中央で水が噴いている広場に来た。昼の時間を過ぎたためだろう、先ほど来た時よりも広場にいる小さき者達の数は少ない。


「よお、翼の兄ちゃん!また来たのかい!」


屋台を見てまわると、先ほど肉串を買った店主から声がかかった。


『肉串、とても美味しかったよ。』

「おお!そりゃあ良かった!この肉はなトースラ領のグレイカウの肉なんだ。味は絶品だぜ!また買ってくか!?」


 グレイカウ。初めて聞く名前だ。トースラ領は確か隣接している領地だったな。


『グレイカウっていうのは、何ですか?』

「翼の兄ちゃんは、クスパリング王国に来たばっかりか?グレイカウっつーのは、クスパリング王国で売りにしてる灰色の大きな牛のことだよ。トースラ領は、農業、酪農とかが盛んでな。トースラ領のグレイカウがクスパリング王国一の牛だぜ。」


 店主が、屋台の奥に描かれている黒塗りの模様を指差し得意げに教えてくれた。神体山と呼ばれているあの山がクスパリング王国にあるのだったら、ずっと、いやむしろ建国当時からクスパリング王国にいることになるのだけど、そんな事を言えない。

 店主の指差した模様は、黒塗りなので詳細はわからないが、立派な角を二本持ったグレイボアよりも一回り大きいくらいの生物のようだ。


『トースラ領のグレイカウか。一度見てみたいな。』

「おうおう!しばらくスプマンに滞在するなら、グレイカウはしょっちゅう運ばれてくるから、その内見れるぜ!」

『運ばれてくる?グレイカウは、どうやって運ばれてくるんですか?』

「そりゃ、歩いてだろ。行きは荷物持ちにもなるからな、トースラ領からティムぺオール領にくる冒険者の良い護衛案件だな。」

『そうなんですか。』


 ミーオとポシュカを運ぶ良いアイディアになるのかと思ったら、歩いて来るらしい。


「おうおう。そんなことよりも、翼の兄ちゃん串買ってかねーのか?」

『ああ、それな。あ、、、』

「ん?どうした?」

『すみません。金を持っていなくて。』

「なんだなんだ。金がねーのか!じゃあ、また来た時に買ってくれよ!」

『はい!美味しかったので是非また!』


 残念ながらミーオとポシュカは容器を作って運ぶしかなさそうだな。それにしても、小さき者達の生活は何かと金が必要だな。

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