初めての街
「なかなか面白い、にいちゃんだな。これで、よしっ!と。一時滞在だからな。七日以降も滞在する場合は、ギルドで身分証なり発行するか、一時滞在延長に100ルピ必要だ。無断で滞在すると、強制労働になるから気をつけてな!ミーオも気をつけろよ!」
「うん。もちろん」
どうやら七日過ぎるまでにギルドに行くか、カネを得なければならないらしい。
「おれはガイルだ。何か困ったことがあったら言ってくれ」
手を差し出されたので不思議に見ていると、ほれっ。とガイルが手を揺らす。握り返せということか。
「ようこそ。スプマンの街へ」
ガイルに背を押されて送り出され、無事にスプマンの街に入ることができた。私の後ろには、ミーオと呼ばれる小さき者がついて来ている。
外壁の中は、人も建物も何もかもがバラバラというか、種々雑多な雰囲気だ。獣人やらヒュームやら、色々な種族の者達が所狭しと歩いている。冒険者が多いと言う話だったので、武装しているのは冒険者なのだろう。門番のガイルと似たような格好の者もいる。
大通りには木と石をつかった建物が並び、様々な模様の看板が飛び出ていたり、建物の前では木の台の上に果物やら肉やら、よくわからないものが並んでいる。
ゴチャゴチャした街並みを人々がひしめき合うように動く姿を眺めていると、クラクラしてきた。気持ち悪い。人も何もかもが多すぎる。
「どうしたの?」
街に入った大通りで、すぐに立ち止まったため、ミーオが声をかけて来た。
『ちょっと、ごちゃごちゃし過ぎていて』
「こっち」
ついて来いということだろう。ミーオが、人混みをすいすいと進んでいく。大通りをなんとか進むと、脇道に入った。
脇道も同じ様に木と石を使った建物が並んでいるが、大通りよりも人通りは少ない。木と石を使った建造物が、この街で主流なのだろうか。建物も何もエルフの村とは随分と違う印象だ。
なんとかミーオに追いつくと、一軒の建物の前で足を止めた。入り口のあたりに木の板が出ており、草?植物を模したようなマークが描かれている。その建物に無言で入っていくミーオの後に続く。
「いらっしゃい。あら、ミーオじゃない。お帰りなさい」
「うん。お客さん」
「ミーオが、お客さんを連れてくるなんて珍しいわね」
「うん。アイル」
褐色の肌で耳から金色の金属を垂らし、灰色と濃緑色の布を使った衣服に身を包んだ者が、奥の開口部から姿を現した。顔立ちや耳は、エルフのような印象を受ける。
「なんか、顔色があまり良くないみたいね。あら?」
『え、えっと。どうも。アイルと申します』
相変わらず、気持ちが悪い。それにしても随分とジロジロ見てくるものだ。
「まあ、いいか。ミーオ、彼はどうしたの?」
「街に入るなり、気持ち悪いって言うから、とりあえず連れて来た」
「わかったわ。アイルさん、こちらにどうぞ」
左手に簡単な木の仕切りのような物があり、そこにある布が敷かれた木の台に誘導された。ミーオと後ろをついてくる。
「ここの椅子で、座ってお待ちくださいね」
建物の中には、植物が乾燥した物や、瓶によくわからない物や液体の入った物が棚に飾られていた。森というか植物の様々な香りが混ざったような匂いがする。
「こちらをどうぞ」
白い器が二つ差し出され、その中には緑色の液体が入っている。一つは、ミーオの分のようだ。
「薬草を煎じた物です。気分が少しスッキリすると思いますよ」
口に含むと、初めは少し苦味があったが後から爽やかな香りが鼻を突き抜ける。暫く椅子に座って休むと、気分がだいぶ良くなって来た。
『なんか、スッキリしますね。気分が良くなってきました。ありがとうございます。えっと』
「ご紹介が遅れました。ダークエルフのミュルク・ポシュカです。ポシュカとお呼びください」
『えーと。ポシュカ、ありがとうございます』
メイサー達に似てると思ったら、やはりエルフだったらしい。ダークがつくと言うことは、少し違うのか?
「アイルさんは、エルフのお知り合いがいるんですか?」
ポシュカが、アイルの左腕を指差して聞いてきた。
『ええ。カエルム大森林に知り合いが』
「やはり、そうでしたか!エルフが精霊の祝福を与えた組紐を、親しい者に贈ると聞いたことがありまして」
『えっと。ダークエルフとエルフというのは、どういった関係で』
「んー、関係ですか。そうですね。精霊で例えるならば、同じ精霊ですが属性が違うと言ったところでしょうか。種族的な特徴は、精霊とはどちらも親しいですね。魔法では、エルフは水と風の適正がありますが、ダークエルフは、土と風に適正があります。住む環境が違うので、魔法の適正が違くなったという節もあります。ほとんどの物事は精霊術で、なんとかしてしまうんですけどね」
ポシュカは、ふふふ。と口元に手を当てて笑いながら教えてくれた。種族の違いや住む環境が違うということで、エルフはエルフ。ダークエルフはダークエルフと考えておいた方が良さそうだ。
不意にグゥゥという音が聞こえたため、後ろを向くとミーオが腹部に手を添えて、目を細めていた。




