地図の魔道具
「アイル様。ご足労おかけしまして、申し訳ございません。」
いま、サークラ様達と最初に顔を合わせた部屋にいる。部屋にいるのは、サークラ様、シールス、メイサーにアイサーだ。リンシーの姿が見えない。
きょろきょろ見渡していると、サークラ様が困った顔をして再びの謝罪が入る。
「申し訳ございません。リンシーは、ずっと自室に引きこもっておりまして。地図だけは取ってきましたので、今回は地図の引き渡しと、もしご迷惑でなければ地図の説明をさせていだだければと思います。」
『おお!ありがとうございます!』
どうやらリンシーは、魔法書を手に入れてから外に出ていないようだ。さすが、叡智の番というのか何というか。
シールスは呆れ顔をし、メイサーとアイサーは苦笑いをしている。
サークラ様が、木の台に一枚の地図を広げた。地図には、クスパリング王国と書かれた国が中央に描かれている。また、大まかにだが大森林や山脈を表す様な印も見られる。
神体山をほぼ中心にカエルム大森林が広がっていて、サークラ様は大森林の一部を指差し、サラ村の場所を教えてくれた。サラ村は、神体山から南東に少し下った位置だ。カエルム大森林内の村は、地図には表示されていないらしい。
「国境は、明確な部分もありますが、山脈や特定種族の不可侵地域などによって、曖昧な箇所もあります。ここクスパリング王国は、国土の約1/5がカエルム大森林です。首都のクレイヴァンは、ここから東にあります。南西には平原地帯と湿地帯があり、南にナバ王国があります。ナバ王国の国土は、クスパリング王国と同じくらいの大きさですね。」
地図には、前にアイサーたち戦士が言っていたドウン帝国や、西側には複数の国も記載してある。地図を見る限り、クスパリング王国とナバ王国がこの大陸では大きな土地を治めているみたいだ。
「ここから、南に進んでも東に進んでも、比較的大きな街があります。それぞれの街の特徴も、ご説明しましょうか?」
『はい。お願いします。』
「では、南の街から。こちらはティムぺオール領のスプマンの街になります。南にあるナバ王国との交易路の一つであり、また平原や湿地帯、大森林など様々な環境に囲まれている為、多種多様な魔物も多いです。そのため、多くの商人や冒険者が集います。次に東ですが、ティムぺオール領の上、トースラ領になります。カエルム大森林に近いのはウェイザン村で、更に東に行くとエスモーソの街があります。トースラ領は、農業と牧畜がとても盛んです。エスモーソの街はティムぺオール領と王都を結ぶ交易路の一つですね。」
地図には街を標す印があり、その上にはクレイヴァンや、スプマン、エスモーソと書いてある。そして村を記す印だろうか、そこにサークラ様が指を触れるとウェイザン村の文字が浮き出てきた。
南、東どちらの街も栄えていそうだ。農業は本で読んだことがあるが、牧畜とは何だ?
「現在、サラ村と直接交流のあるのはスプマンの街とウェイザン村です。また、この地図は久しく更新されておりませんので、大きな街に着いたら更新する事をお勧めします。」
『地図の更新ですか?』
「ええ。こちらの地図はリンシーが冒険者をしていた時に、クスパリング王国で購入した物です。その為、王国内の領地情報と、周辺国の大まかな情報でしたら表示されます。大きな街の冒険者ギルドか商業ギルドであれば、更新することが可能です。」
地図に【解析】を発動すると、色々な魔法が組み込まれていた。
『これは面白いですね。』
「ええ。天才魔法具士マイルが開発したようで、大体の上級冒険者の方は、持ち歩いているそうです。この地図が更新されたのは十年前に、リンシーが国に召集された時ですね。」
上級ということは、冒険者には階級のような区別があるのか。
『この地図、リンシーは使わないのですか?』
「ええ。リンシー曰く、興味深い魔法書をもらったので、そのお礼にとのことです。」
あの魔法書は昔、祭壇に置いてあった物で、既に読み終えている。コレクションが減ったのは少しだけ残念だけれど、魔法書も求める者がいたら、眠っておくよりは、その者に使われた方が良いだろう。
そいうことでしたら。と礼を言い、魔道具の地図を貰った。
「アイル様は、今後の予定はどうされるのですか?」
メイサーから質問がきた。
『あまり考えていないのですが、ずっとお世話になるのも悪いので、革の加工が終わったら、まずは先程のどちらかの街を目指してみようと思います。』
「そんな!もう行かれてしまうのですか。」
「メイサー。アイル様は冒険者なのですから、引き止めては悪いですよ。」
サークラ様が咎めると、メイサーは顔を落とし落ち込んでいた。アイサーも、暗い顔をしている。
『メイサー、また様子を伺いに来ますよ。アイサーも、その時はまたお酒を振る舞ってください。』
サラ村の酒や食事は美味しかった(肉は少ないが)し、面白い物もたくさんあったので、また訪れたいと思っている。
こういう時、どう声をかけたら良いかわからないが、メイサーとアイサーは顔を上げて「絶対ですよ!」と微笑んでくれたので良しとしよう。




