爺の燻製
食料を燻すのは、専用の小屋があるらしい。アイサーに連れられ、村の中にある小屋についた。小屋は2つ並んでおり、小屋の前には少し顔にシワのある二人のエルフが、木の皮を剥いでいる。
「ソー爺、セン爺。」
「なんだ、小僧か。今日は狩りの日か?」
「お客様が来ていてね。こちら、アイル殿。今日は、フィノムバードとツイストホーンが獲れたよ。」
『よろしくお願いします。』
「ふむ。お主が村で噂になっとるドラゴニュートか。」
「アイル殿、こちらセン爺とソー爺です。二人とも、秩序の番シールス様と幼馴染で、この村の最年長者になります。」
ドラゴニュートという種族は珍しいのか、二人は翼やら尻尾やらとジロジロ見ている。
「ふむ。アイサー、今日は中々大量じゃな。」
「ツイストホーンとフィノムバードか。何羽おるんじゃ。」
「獲れたのは、全部で二十四羽。燻製にして欲しいのは十羽だ。」
「いつものところに置いておけ。ツイストホーンとフィノムバードの置き場は、別けるんじゃぞ。」
「わかってますよ。」
アイサーは、片手を挙げて左の小屋に入っていく。
「さてと。お客様、何故に、このエルフの村においでになすったのじゃ。」
『エルフ達が、フォレストタイガーに襲われてましてね。助太刀したら、招かれたんですよ。』
「それだけですかな?」
『え、ええ。まあ。』
二人のエルフは、鋭い眼差しでこちらを見てくるが、私はご馳走をくれるかついて行っただけであって、他意はない。
「まあ良い。あなた様がこの森におっても、不思議ではないのでの。もう十日もすれば、森の神様もこの村に着くじゃろうて。」
『え!?十日!?』
十日であいつが、サラ村に着くなんて。森の中で鉢合わせるのも嫌だし、革の加工が済んだら直ぐにサラ村を出なければならない。
未だにエルフの二人は、アイルをジーっと観察しているが、それを気にしているどころではなくなってしまった。
「ソー爺。セン爺。アイル殿が燻製の工程を見学したいそうだ。」
小屋から出てきたアイサーが、二人に声を掛けると「うむ。」と返事をして、右の小屋へ歩いていった。
二人は、それぞれ木屑のような物と四角い箱を持って小屋の表に出てくる。セン爺に手招きされる。近くに寄れということだろう。
ソー爺が箱を開けると、箱の中には段々が出来ており、それぞれの段に肉とチーズが入っていた。
「これは、グレアポの木の枝から作ったチップじゃ。他にも色んな木からチップは作れるんじゃが。チップは、枝から皮を剥いで、砕いて乾燥させとる。これを箱の一番下に入れて、火をつける。チップから出てくる煙で、箱の中の材料を燻せば良い。」
「燻す時間は、食材と好みじゃ。燻すと、食材の保存がきくようになる。あとはチップによって、食材に移る香りが違う。」
ほお。小さき者達は、面白い食べ方をするものだ。この村にきて、肉に火が通っているのにも感激したが、燻製とは煙に晒すのか。なかなかに面白い食べ方だ。よく考えたな、と感心する。
「アイルさまー!!」
箱から漂ってくる匂いを満喫していると、向こうからメイサーがやってきた。
『どうかしましたか?』
「サークラ様がご用意があるとのことで。お邪魔でしたか?」
「もう、燻製は待つだけじゃ。連れていってもらって構わんぞ。」
セン爺!私は、まだ燻製を楽しみたいのに!
勝手に承諾され、メイサーに腕を組まれて誘導されてしまった。
「晩飯に、燻製を出しておくでの。楽しみにしててくだされ。」
そう言われたら、しょうがない。二人に軽く頭を下げて、小屋を後にした。
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「なにか、訳があるようじゃの。」
「ああ。ドラゴニュートを真似たとしても、変わりすぎじゃて。」
アイル達がサークラの元へ向かった後、二人のエルフは大量の燻製を作るため、小屋で作業していた。
「あの魔力の色と精霊の集い方。忘れることはない。」
「小さき頃に、一目見た天空の神に違いないの。精霊の接し方が、森の神と似ておる。しかし、何か訳ありのようじゃ。森の神には、伝えてほしくなさそうじゃったな。」
「うむ。しかし、姿は違えど、またご尊顔を拝見出来るとはな。」
「長生きはするものじゃな。」
「我らの燻製を食して貰えるとはな。これは、腕によりをかけんとな。」
「「ほっほっほっ。」」
二人のエルフは、上機嫌に大量の燻製を作り始めた。




