旅立ちの準備
リンシーから、精神的な攻撃を受けた翌日。
昨日は大変な目にあった。魔法書を一冊奪われてしまったが、魔法書が原因で緑の民に身元が割れることはないだろう。
今日は霧も無く晴れているので、祭壇に向かうことにした。じっくり掘り出し物を探したいし、自分が空の民(小さき者達からすると天空の神だが)だとバレたくないので、単独行動だ。もちろん行き先は告げていない。森の散策という体だ。
サラ村を出てしばらく歩く。村が見えなくなってから、念のためステスルの魔法を発動し、翼を広げて空を飛ぶ。
もう火の時期も近そうだ。巨木の葉は緑の深みが増し、伸び伸びと生い茂っている。今日も風の精霊は活発なようで、数匹の精霊がアイルの周りを回っていた。
まずは祭壇に行く前に、住処に行くことにした。グングンと雲を突き抜けしばらく飛んでいると、山頂が見えてきた。しばらくは洞窟に戻ることが無いかもしれないので、他の魔獣に使われないように隠蔽しようと思う。
洞窟の入り口に降り立つ。洞窟の中を見て回り、何か使えそうな物がないか探すことにした。
エルフ達はドラゴニュートは修行すると言っていたな。となると、何かしらの武器があるとそれっぽく見えるかな。
何個か武器を見繕い空間魔法に収納することにしたのだが、鑑定すると宝石や装飾がゴテゴテの見栄えだけで耐久性も切れ味も無い武器が結構ある。
『おっ!これは良いな。』
一本の魔法武器を見つけた。槍のように見えるが先刃の部分は反っていて、片方しか刃がつけられていない。組み込まれた魔法の効果により、サイズが変更できるようだ。最長2mほど、一番小さくすると手のひらに収まるくらいか。付与されている魔法には他にも面白いものがあるな。
『変わった形の槍だけど、他の武器よりも良さそうだな。』
武器を見終えて、他に面白そうな物がないか一通り見て回っていたら、もう日が頂点に登ってしまっていた。
『じゃあ、土魔法で偽造させて結界を張りますか。』
いつでも帰れるのだが、何万年と過ごした洞窟を離れるとなると何とも言えない気分になった。しかし、私は気付いたんだ。小さき者達が作る食事は美味しいと。それに本以外から学べるモノも沢山ある。
【岩壁・結界】
魔法を同時に行使する。塞がった箇所は、よく見れば違和感を感じるが、こんな山頂付近まで小さき者達が来る事は今までなかった。魔物が気付いても力技で突破できなければ諦める為、問題ないだろう。
『これでよしっと。次に帰ってくるのはいつなんだろうな。じゃあ、祭壇に行くか。』
住み慣れた洞窟にしばしの別れを告げて再び空を飛び、上空から探知魔法を発動させる。祭壇付近に生物はいないようだ。少し高度を下げたらステルスを解除して、祭壇に降り立つことにしよう。
祭壇には結構な数の宝石や武器・防具が置いてあった。今回は書物の関連は無さそうだ。あってもボロボロで読めもしない。衣服類もダメだな。
古くなった食べ物は、祭壇に訪れた者が廃棄してくれているのだろう。熟れた果物が数個置いてあるくらいだった。もしかしたら、先日メイサー達が置いた物かもしれない。
食べられそうな果物は胃袋に入れさせてもらい、ダメだった物は衣服と合わせて火魔法で焼却した。
『祭壇にもいつ来れるのか分からないから、残りは、とりあえず収納だな。』
空間魔法を発動して、異空間にポイポイ放り投げる。空になった祭壇は風の精霊にお願いして、軽く掃除してもらった。結界である程度の土埃は防げるが、物が置いてあった場所は汚れが多少溜まっていた。
とりあえず今日のノルマは達成したし、森の散策をして食料を調達するか。エルフの村にやっかいになり思ったのだが、サークラ様が言っていた様に、エルフの食事には肉があまり出てこない。フォレストタイガーの肉は美味しくないらしく、ほとんど調理には使われなかったようだ。
まあ、食事は美味いに限ると私も思う。となると、調達するのは肉で決定だ!
獲物は既に決まっている。昨日の夜食の際に、アイサー含む戦士達から、美味い獲物を聞いてきたのだ。格別に美味しい鳥がいるらしいが、その鳥は早朝の方が行動が活発で姿を見ることができるそうだが、もう昼を過ぎている。この時間帯なら鹿の魔物を狙った方が良いか。
鹿の魔物は、ツイストホーンというらしい。頭から生えた二本の角が、伸びるにつれて絡まり最終的には1本の角のように見えるそうだ。動きは俊敏で、肉食の魔物に襲われそうになると角を刺して、刺した角を根本から折って逃げるらしい。
『とりあえず探知魔法で大型の魔物を探すか。【探知】』
魔力を地上に走らせる。魔力を込めすぎると、不自然な魔力の流れを察知されてしまうのが探知魔法の難しいところだ。
比較的近場だと南に2体、北東に3体か。
どうせならサラ村に近いほうが良いと思い、北東に向かうことにした。




