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初めての指導

 昼食を終え、外に出ると薄く霧がかっていた。


「アイル殿!」


 アイサーから声がかかる。何かを期待したようなあの目をみると、嫌な予感しかしない。


『えーと。アイサー、どうしました?』

「その、ですね。約束の、フォレストタイガーを退けた技を教えて頂きたく!」


 技を教える約束なんてした覚えがない。うーん。まあ革が加工し終わるまで日数もあるし、霧の中を散策するのも気が乗らない。


「アイサー!ずるいですよ!アイル様は私に空間魔法を教えてくださるのです!」

「姉上こそズルいですよ!割り込みなんて。」


 どうするか考えていたらメイサーが現れ、ややこしい展開になりそうだ。騒がしくして、またサークラ様に怒られるんじゃないか?


『わかりました。ひとまず、お二人の実力を知りたいので移動しながら考えましょう。」


 メイサーが蔓と葉を呼び寄せ、三人で地上に降り立った。


『メイサーが覚えたいのは収納で良かったですか?』

「はい!昨日、荷物を出し入れしていた魔法です!」

『そうですか。収納もフォレストタイガーを退治した魔法もですが、両方とも分類としては空間魔法になります。』


 空間干渉は(スキル)との併用も可能な魔法だ。


 メイサーの案内の元、辿り着いたのは村のはずれにある戦士たちの修練場だそうだ。ここには少しばかりの広場と、弓の的だろうか円形の木の板が至る所に設置してある。


『では、まずは二人とも魔力の扱いがどの程度なのか実演してみてください。メイサーは魔力をどの程度、ほかの属性に変換できるのか。アイサーは、魔力を身体に纏うなどで外部に放出できるのか、です。』

「「はい!」」


 メイサーは手を広げると、水の玉と小さな風の渦を発現させた。アイサーは魔力が普段よりも速い速度で身体を巡っており、身体強化はできているようだが、魔力が内部に留まっている。


 う〜ん。どうしたものか。収納も、空間干渉も部類としては空間魔法であるのだが、干渉の仕方が違うし、それに教えるとなるとな。


魔法書に書かれていたことを記憶から引きずり出す。たしか魔術は術式に精通する知識が重要で、魔力を何かしらの方法で術式に供給できれば発動する。対して魔法は、知識も大事だが魔力量のバランスとイメージの方が重要。だったかな。

 とりあえず目の前でそれぞれ見せて、イメージを掴んでもらうかな。


『二人とも実力は、わかりました。では今から収納と空間干渉を、それぞれ実演するのでイメージを持てるように、しっかりと見ていてください。【収納】【空間干渉】」


 両手を左右に広げる。右手の先に黒い空間を出現させ、左手は鷲掴むようにして空間を捻じ曲げる。


『二人とも魔力を目に集中して、魔力の流れを見ることはできますか?』

「はい!」

「できます。」


ふむふむ。2人とも魔力の局所集中は出来るようだ。


『収納は、収納する空間を出現させたい先とその中をイメージする。空間干渉の場合は、手や指に触れている空間が重要ですね。』


残念ながら他人に教えたことのない私にとっては、これが限界だ。


「ふふふ。面白い事をしていますね。このような場に私を除け者にするだなんて、悲しいではないですか!」


唐突に修練場の入り口から声がかかった。叡智の番リンシーだ。リンシーの後ろには数人のエルフが、こちらを覗くように見ている。


「その技でフォレストタイガーを退治したのですか。森の神と同じような技も使えるのですね。」


 これだから嫌だったのだ。出来るだけ緑の民との接点が増えるようなことは、したくなかったのに。じとー。と、目の前の姉弟を見るが、二人とも首を横にブンブン振っている。


「あれだけ大声で騒いでいたので、丸聞こえでしたよ。」


 たしかにあの建物の奥には、サークラ様とリンシー、シールスが残っていた。聞こえていて当たり前か。恐らくリンシーの知識欲が駆り立てられ、跡をつけて来たのだろう。野次馬エルフを引き連れて。


「我々エルフは精霊術が得意なので、大抵の事はできてしまいますからね。ヒュームやドワーフなどは、魔法の規模は置いておいて、空間魔法を使える者は少なくないです。エルフは水や風に適正が強いとされており、空間魔法を使えるものは少ないですからね。」

『へー!そういうものですか。』

「ええ。ほとんどのエルフが精霊術で満足しておりますよ。身体強化などの基本は置いておいて、他の魔法を覚えるのは、冒険者を志す者や知識欲の強い者などですね。」


 後者は自分のことだろうな。と思いながらも、種族によって適正があるのか。と認識を改める。


『エルフには空間魔法を使える方は、いないのですか?』

「いない事はないですよ。カエルム大森林に住むエルフですと、空間魔法を使える者はサークラ様含め十名いるかいないかでしょう。」

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