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素材の行方

 フォレストタイガーを提供した後、すぐに訪れてきた服飾の職人に要望を伝え、身体を採寸された。そして今、サークラ様達に招かれ昼食を食べている。

 メイサーとアイサーも一応呼ばれたようで良かったと言うべきか。さっきよりも顔に明るさが戻ってきた気がする。


 私の正面にはサークラ様、両隣はアイサーとリンシー。サークラ様の両隣にはシールスとメイサーという形で一つのテーブルを囲んで座っている。

 テーブルの上には果物だろうか。実が黄色く葉が尖っている物や、小さく丸い青い実が木の容器に入っている。他には植物の根や茎が使われたクリーム状の食べ物。丸みを帯びた茶色い物などが並んでいた。


『昨日の夜とは,また随分と違う食事ですね。』

「ええ。本日は、火の時期の前に実る旬の果物をご用意させて頂きました。黄色い物がフォンの実、青く小さい物がティフの実です。ともに酸味が強いですが、甘みもあります。2種類とも朝の時間帯しか取れませんし、鮮度がすぐに落ちてしまうので宴の際にはお出しできませんでした。この果物達は朝日を浴びるように実が顔を出し、日が頂点へ登る頃には葉が実を包み隠してしまうのです。」

『面白い習性を持った果物なんですね。』


 黄色いフォンの実は、控えているエルフがその場で皮を剥き、切り分けてくれた。


「シチューには、フォレストボアの肉を燻したものを入れております。パンは、数種類の干した果物が練り込んでありますよ。」


 シチューとパンというのか。肉を燻したと言っていたが、焼くとは違い不思議な匂いが鼻を抜けていく。クリームの液体の甘みと、肉がとても合う。

 パンもカリカリしていて不思議な食感だが、噛むと香ばしい香りがする。パンに混じった果物の実も甘みが凝縮されており、とても良いアクセントだ。


『どれも美味しいです。』

「ありがとうございます。パンはヒュームとの交易により小麦が手に入りますので。神体山を下り、森を抜けると麦畑が広がっています。麦畑の近くに街があるのですが、そこで作った小麦を使っているのですよ。」


 サークラが、昼食の食材について教えてくれた。山を下ると比較的近くにヒュームの住処があるらしい。


『ヒュームと交流があるのですか?』

「千年ほど前にヒュームとエルフで公約が交わされてから、正式に交易や交流も行っていますよ。カエルム大森林のエルフは他の森のエルフに比べ、公約前よりも小規模ですが交易していたのですがね。私も前は、よくその街に訪れていました。」


 今度は叡智の番のリンシーが教えてくれた。リンシーは以前、一時期旅に出ていたとか言っていたな。


 本には、森人は森から滅多に出ない。ヒュームが森人の子を攫うため確執がある。というのを見たことがあったのだが。


「今だに、エルフを狙う粗野な者どももおりますが。」


 アイサーの眉間に皺が寄っている。彼ら戦士としての役目はエルフを守ることだ。粗暴なヒュームとの諍いもあったのだろう。


「アイサー、いつもありがとうございます。事が起きたらエルフと王国の取り決めで、貴族であろうと王族であろうと裁きを与えるのです。その際は、シールス。任せましたよ。」

「ええ。承知しておりますよ。」


 こんなに美味い食事なのに少しばかり剣呑な雰囲気になってしまった。せっかくの食事だ。明るく良い雰囲気で食べたいものなのだが。と何か話題を持ちかけ話を変えようと思ったら、サークラ様から話題が提供された。


「アイル様、申し訳ございません。関係のないお話に飛んでしまいまして。」

『いえいえ!あ、あの、勉強になりました。』


 気の利いた言葉も出ない自分に少し情けなくなる。会話は、まだまだ課題だらけだ。


「お食事に誘いましたのは、フォレストタイガーの素材についてです。まずは皮についてですが、精霊の助力もいただいて革に加工し、靴や衣服とするのに最低5日は頂ければと思います。ヒュームの街では相当な魔法の使い手でも、革にするのに20日は要するので、日数がかかる事はご了承ください。」


 村を見てまわった時にエルフがやっていた【なめし】とやらか、なかなかの重労働なんだな。少しやってみたいと思ったが、邪魔になりそうだ。


「ちなみにですがアイル様は、今後の予定はどのようなものでしょうか。神体山から降りて来られたと報告を受けているのですが。」


 今後も何もノープランだ。強いて言うなら、アイサーとメイサーに会った時に、確認するはずだった祭壇を訪れたい。あとは、うーん。近くにヒュームの街があるならば、そこに行くのも良いな。


『しばらくは、森を散策したいと思っています。あとは近くにあると言うヒュームの街も訪れたいですね。』

「アイル殿は、冒険者なのですかな。ドラゴニュートには稀に、修行と称して各地を旅する者もおるそうで。」


 よく冒険者という単語が出てくるが、冒険というよりも行楽だ。行楽者よりも冒険者の方が格好いいから否定はしないでおこう。


『ええ。そんなものですね。エルフの村も色々と新しい物があり面白いですよ。』


「なるほど。ヒュームの村にですな。でしたら、フォレストタイガーの素材は一部いただけると嬉しいですが、大半はアイル様がお持ちください。フォレストタイガーは討伐ランクが高いので冒険者組合に提出なさると良いでしょう。」


 冒険者組合?冒険者の組織があるのか?冒険なんて自由気ままなものなのに、そんなことを支援でもしているのか?それを支援してくれるとは優しい者達もいるものだ。いや、ヒュームはひ弱な生物だから、お互いに支え合っている、とか?


「アイル様。ヒュームの街の場所はお分かりですか?」

『い、いえ。すみません。わからないです。』


 ヒュームの街に行くと言っても、たしかに場所がわからない。まあ、空を飛べば上空から確認できるのだが。


「では、後ほど簡単な物ですがリンシーに地図を手配させましょう。リンシーよろしくお願いします。」

「サークラ様、承知しました。」


ひとまず、今後の大雑把な方針は決まった。フォレストタイガーの革で、靴と衣服を作ってもらいヒュームの街で美味い物を食う!これに限るな。


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