フォレストタイガーの素材
「アイル様、申し訳ございませんが下の広場へ来ていただけますか?長達がフォレストタイガーを拝見したいと。」
宿泊部屋まで呼びに来たエルフに了解の旨を伝えて、下へ降りる。
降りて少し歩くと開けた場所があり、そこにサークラ様達を含むエルフが、輪を作る様に立っていた。輪の外の方には、暗い顔を見せるメイサーとアイサーの姿もある。
「アイル様、この度はフォレストタイガーの討伐ありがとうございます。メイサー達は、氷の柱を見たのみで、討伐したフォレストタイガーはアイル様の空間魔法に収納されているとか。宜しければ拝見させていただけますか?」
『ええ。ここに出してしまってもよろしいですか?』
「はい。」
空間魔法【収納】を発動して、どんっ!という音を鳴らし、フォレストタイガー十頭が氷漬けになっている氷塊を引っ張り出す。
「「おおー!」」
「こ、凍っている。フォ、フォレストタイガーが。しかも、まとめて十頭も。」
エルフ達の響めきと、叡智の番リンシーの驚愕たる声が響いた。
「これは凄いですね。討伐の早さもですが、これには驚きでどう反応すれば良いのか、正解がわかりません。」
サークラ様も困惑している様だ。
『あ、あの。フォレストタイガーの皮を使って、靴や衣服を作りたいのですが。』
「ええ、メイサー達から伺いました。氷が溶け次第、こちらですぐにでも解体しましょう。フォレストタイガーの皮は丈夫ですし、汚れにも強いのでとても良い素材ですよ。」
『ありがとうございます!それなら,今ここで溶かしちゃいますね!【自己発熱伝達】』
魔法陣がアイルを包み、周囲の温度が徐々に上がる。アイルが氷塊に手を添えると、辺りの熱が全て氷に集中して一瞬にしてら溶け切った。
氷塊の跡には地面がわずかに湿り気を帯び、ドサドサという音とフォレストタイガーの山が積み重なっていた。
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「リンシー、シールス。貴方達、今の魔法はご存知ですか?」
「今まで長い事生きてきましたが、初めて見ますな。」
「ええ、わたしも存じ上げません。魔法で火を出すわけでもなく、氷を溶かすとは。それに一瞬見えた魔法陣の文字は、知らないものでした。」
冒険者として様々な場所へ旅をし、知識を求めたリンシーと、サラ村で一番の年長者であるシールスも知らぬ魔法を使うなんて。ましてや、ヒュームやドワーフよりも長い寿命を持つエルフが知らない魔法。
リンシーは、好奇心が抑えられない目をしているが、その気持ちにサークラも共感した。
ドラゴニュートという種族もエルフ同様の長命種であるらしいが、ここまで凄い魔法を体得しているのか。可能であれば、ドラゴニュートの里と交流を持ちたいくらいだ。あとでアイル様や森の神に相談してみよう。
その前に、この大量のフォレストタイガーを解体せねばならない。氷漬けになっていたので、傷んではいなそうだが大型の肉食の魔獣は時間が経つと臭いがキツくなる。そもそも肉も固く、美味しくないので食べられる部位など無いようなものだ。
「それでは早速解体に移りたいと思います。皆、手の空いてる者で解体に参加しなさい。」
数十人のエルフが、積み重なっているフォレストタイガーを一匹一匹崩して数人がかりで運んでいく。
「アイル様。相談したいことが新たに出来てしまいましたが、まずはフォレストタイガーから取れる素材についてです。皮は勿論ですが、牙や爪も武器やら装飾の素材となります。肉は食べられる部位は少ないですが、肝は薬の素材として高値で取引されます。雄のフォレストタイガーから取れる睾丸も同じです。こちらは種類によっては薬に精製することもできますが、いかがしましょう。」
『私は服と靴を、うーん。そうですね。二セットほど作っていただければ、あとはエルフの皆様で使っていただくなり自由にしてもらえたら。』
十頭もの素材。衣服を二セット作ったとしても大量に余る。それに強力な魔物であるフォレストタイガーの素材はとても高値で取引されるというのに。アイル様は、この価値をわかっているのか。
「そうですか。余った素材については、一先ず考えさせて頂きます。後ほど職人を遣しますので、採寸や要望を伺わせてください。何せドラゴニュートの方の衣服を作るのは初めてなので。」
考えなければならないことが山積みですね。
サクーラは、お辞儀をして巨木の方へと歩みを進めた。




