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ヘンタイはタイヘンだ  作者: 窓井来足
第二章
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第二章 その3

前回、釉美の事情説明で終わっていましたが。

彼女を待ち受けていたのは何か。そしてそれによってどうなったのか。


それがこの回で明らかに!!

「ボスには強力な仲間がいたんだ……」


 そう言ってから、お茶をすする釉美さん。


 ここは事務所の応接質、という名前のついているお茶の間。

 一節には宇宙人と話し合うのにも向いているとされるお茶の間(この空間)で、異世界人と、特殊部隊の隊員たちによる、会議が行われていたのだ。

 ……いや、単に俺と観基と釉美さんとで事件について話していただけなんだけど。


 ちなみに。

 今、俺たちが飲んでいるお茶は俺が淹れたものだったりする。

 これは俺の方が観基より格下だから「お茶係」をしているため――ではなく。

 観基がお茶を準備すると、彼女の趣味のために、茶葉の種類や湯の温度、茶器まで徹底的に相手好みのものを用意しようと努力してしまい、時間がかかり過ぎるので俺が用意しているんだったりするのだった。


「仲間というのはさっき君も会ったあの亜犯とかいうヤツ。それと、おそらく同じぐらいの実力者が二人だ」


 釉美さんは自身の湯飲みにお茶を注ぎながら、そう告げる。


「あと二人も……」


 あんなのがまだいるのか。それはやっかいそうだ。


 ……あれ?

 なんでだろう。

 釉美さんは「同じぐらいの実力者が二人」と言ったはずなのに、俺の頭の中には「亜犯みたいな変質者っぽいのがあと二人」いるイメージが浮かんだんだが。

 別にそんなことは一切言われていないんだけど……まあ、でも可能性としてはなんか高そうだ。

 類は友を呼ぶと言うし。


「それで……私一人では亜犯みたいのを三人も相手にして、その上ボスを捕らえるというのは困難だ。しかもそれが、今日の夕方までとなると尚更」


 まあ、確かに。あんな奴を三人も相手にして、更にそれを束ねているボスを捕らえるなんて言うのは大変だろう。

 しかも今日の夕方まで――


「って、夕方ァ!?」


 釉美さんがさらりというからつい、つっこむタイミングが遅れてしまったが。

 いくらなんでも急すぎるだろう。

 さっき、釉美さんは確かに「時間がない」とか言っていたけど、だからといってまさか、そんなにもないとは。


「ああ。研究所を偵察しに行った時に奴らが話していたのを聞いたんだが、何でも、今晩には奴らのボスはこちらの世界の仲間を引き連れて元の、私が住んでいた世界に帰ってしまうらしい。そうなると――」


 釉美さんは、元の世界に帰れなくなる。ということなのだろう。


 異世界移動装置の出所(でどころ)は俺たちの世界ということなので、その装置か、それに似たものなら観基の人脈を使えば手に入るかもしれない。

 だが、そうやって手に入れた装置を使うにしても、「元の世界とこの世界の位置関係」みたいなのがわからないとやっぱり、駄目なのだと思う。


 いや、やろうと思えばそういうところまで何とかして、釉美さんが元の世界に帰れるようにすることまではできるかもしれないが。

 そうやって、苦労して帰った頃には、既に例の変態集団がボスの帰還で勢いづいて国中を乗っ取っているかもしれないのだ。


 釉美さんとしてはやはり、今日中にボスを捕まえて何とかしたいというのがあるのだろう。


「こんな状況で、私一人ではもう、どうしようもないんだ。それで……力を貸していただきたいのだが……」


 申し訳なさそうに協力を求める釉美さんに俺は。


「いや、まあ、もう、頼まれなくても協力するんだけど」


 と、すぐに返す。


「……え? え? あ、いや、でも」


 あまりにあっさり要求が受け入れたためか、釉美さんはやや取り乱し、更に。


「でもこれは私の問題で、君たちに無理は言えないし……私にはもう依頼料とか払う余裕もないし……つまり、君たちから言えば、私を助けても何の徳にもならないし……それでもいいのか?」


 などと、自ら自分の要求が受け入れられ難くなるようなことを口にする。


 まあ、確かに普通の人なら彼女の挙げたようなことを理由に、タダ働きなどせず、断ってしまうのだろう。

 しかし。


「正義の味方を名乗る俺が、ここまで話を聞いておいて助けなんて、そんなのありえないだろう?」


 と、まあこういう理由で行動している俺にとって、釉美さんの挙げたようなことなんて、些細な問題であって、大したことはないのだ。


 ――いや、正直に言ってしまえば。

 本当は、観基が手を出した事件が、俺たちにとって「何も関係がなかった」とか「利が出なかった」なんてことは今までに一度もないというのが、俺がこうやって気安く依頼を引き受けている理由だったりする。


 この、人助けをするとそれが自分達の利にもなる、まさに「情けは人のためならず」という言葉通りになるという現象。

 これもおそらく、観基の能力の一端なんだろうが――正義感だけで突っ走ることが多い俺は、こういう冷静な時に考えてみると、この能力に、かなり助けられているのかもしれない。


 観基に会わず、正義感だけで本当にタダ働きばかりしていたら、俺は一体、どうなっていたのだろうか。

 ……どうなっていたんだろう?

 想像はつかないが――まあ、きっと良くない方向に進んでいたのだろう。

 多分。


 ちなみに、「正義の味方だから」という理由で相手を助けるというように俺が宣言すると観基が、


「まったく。仕事なんだからあんまりそういう安請け合いは良くないと思うよ」


 というもっともなつっこみを入れた後、やや間を開けてから、


「しかし……タダ働きは良くないとはいえ、そういう不審な集団を放っておくのは、この街の治安の悪化にも繋がるし。それに、その手の集団は他の事件と関係がある場合も多いし…………まあ、私も協力しよう」


 と、依頼者(この場合は釉美さん)に向かっての言い訳をするというのが、いつものパターンになっている。


 何でも俺達に関して「トラブルをタダで助けてくれる便利な人達」というような認識が世間に広まったら良くないからというのが、こういう言い訳をしている理由がらしいんだが……

 端から見ると、いわゆるツンデレっぽく見える気がしないでもない。


「本当に、助けてくれるのか?」


 観基の能力について、そこまで詳しく説明を受けているわけではない釉美さんは、俺たちに対して再度、確認する。

 事件に関わった段階で助けると決めている俺は迷うことなく、自分の好きなヒーローの真似をして。


「ああ、力を合わせて戦おう。お互いの街の自由と平和のために」


 と返し、更に観基も俺にあわせて。


「私たちは仲間だ……ずっとな」


 と答えた。


 俺としては、上手い具合に自分の好きなヒーローものの台詞を真似できていい感じだったのだが。


「…………………………」


 釉美さんはちょっと引いていた。

 いや、かなり引いていた。


 やっぱり、こういう真面目な場面でパロディ的な台詞は空気読めていなかったのか。

 それとも演技っぽくて胡散臭いしゃべり方が悪かったのか――あ、両方か。


 このままでは気まずいので。


「ま、まあ、ともかく。そうと決まったら奴らをどうするか、作戦を立てようぜ」


 と、話題を切り替えることにする。


「あ、ああ。それじゃあ……」


 釉美さんもやはりこの何とも言えない怪しい空気を変えたいと思ったのか、すぐに提案に乗り、手にしていた携帯型情報機器を操作して資料のファイルを開く。

 それはこの街の地図に印や書き込みが入っているものだった。


「最初に狙うのなら、やはりさっきの亜犯がいいと思う。確かに、奴の〈超防御〉とかいう能力は強力だが」


「強力だが?」


「アイツはいつも大体決まった時間帯に、この地図に印をつけてある場所で一人でナンパをしているからな。普段は研究所にいることの多い他の二人とは違って相手にしやすい」


「なるほど……でも、どうやってあの亜犯を相手にする?」


「私としては単なる攻撃が効かない以上、捕獲するというのがいいと思うのだが……観基さん。ここにそういう道具はあるだろうか?」


「まあ、あるんだけど。ネットとか、縄とか、手錠とか……でも、これを使ってその後どうするの?」


「この後?」


 首を傾げた俺に観基は。


「強引な手段を使って捕獲しただけだと、相手の戦力を一人減らすだけになる。それよりも、こっちの有利に進めるのなら、その亜犯を味方につけるか、最低でもなんかの情報を引き出した方がいいと思うんだけど?」


 と、意見を述べる。


「確かにそうなんだが」


 実際に亜犯に会っている俺としては、アイツから上手く情報を引き出すということが果たしてできるのかといわれたら難しいんじゃないかとしか思えない。

 ましてこちらの味方につけるというのはできる気がしない。

 それは釉美さんも同意見だったらしく。


「あの亜犯というのから情報を引き出すとかいうのが難しいと思うのだが?」


 と、観基の考えに対して否定的な意見を口にする。

 これに観基は。


「え? でも、その亜犯とかいうヤツはナンパをしているんだから、それに引っかかったフリをすればいいんじゃないか?」


 という作戦を提案。

 確かに、その作戦は非常にわかりやすく、誰でも最初に考えるようなものではある。

 だが。


「本当にそれでいいのか?」


「何が?」


「いや、何がって観基。その作戦でナンパに引っかかる役をできるのはお前しかいないじゃないか」


 既に亜犯と遭遇している釉美さんにはその役はできない。

 顔を知られている上に男の俺では問題外だ。

 そうなると、そのナンパに引っかかる役になれるのは観基だけしかいない。


 単に情報を引き出すということだけに考えを絞るならば、予知能力を持った観基を囮役にするというのは賢い判断なのかもしれないが。

 果たしてアイツの、あんな不審で変態的なヤツのナンパに引っかかる役なんて観基(ひと)に任せて良いものか。

 自らがナンパに引っかかる役をすることができない釉美さんが、この作戦を提案しなかったのもこの辺りのことを慮ってのことなんだろう。


 だが、観基は。


「まあ、何とかなるだろう。だって、相手は単にお茶に誘ってくるだけなんだろう?」


 などと、別段囮になる事に抵抗はないという感じだ。


 観基は当然、何で俺が心配しているのかというようなことを、能力で感じとってはいるはずなんだが。


「そんなに心配かい? 私は大して問題ないと思うんだけどね。それにこの事件に関わる以上、変なのとの接触は避けられないと思うんだけど?」


「まあ、そうなんだが……」


「なら、別にここで私が囮になっても構わないだろう?」


 力強い口調で観基は言う。これはもう、説得してもそう簡単に意見を変えてはくれないだろう。これまでの経験から俺はそう判断した。


「……囮になる本人がそこまで言うなら、観基の提案した作戦をとることにするか。釉美さんはどう思う?」


「観基さん。本当に囮役なんて引き受けて大丈夫なのか?」


 釉美さんは観基に問う。これに対して観基は口元に笑みを浮かべ、


「そんなに心配しないで大丈夫だってば。私だってこれでも一応、何度も修羅場をくぐり抜けてきているんだから。これぐらい平気、平気」


 と軽い口調で返答した。これを聞いた釉美さんは、手を顎に当てて少し考え込んだ後に、


「うん。そこまで言うのなら観基さんに任せよう」


 と決断した。


 おそらく彼女は観基の余裕ぶった態度を、自分に心配をかけないためにそうしているのだと思い、これ以上余計な気遣いをさせるよりはここは観基を信じて囮役を任せようと考えたのだろう。


「よし、そうと決まったら」


 観基はと言いながら勢いよく立ち上がり、


「ちょっと準備してこよう」


 と茶の間を出て行った。


 準備か。ナンパに引っかかるフリをする準備だから、おそらく化粧を整えるとか、服を着替えにでも行ったのだろう。

 だとすると結構時間がかかるかもしれない。流石にその間、ただ単に待っているというのも何だし……とはいえ俺の方は別段準備をするものはないし……

 まあ、心の準備だけはしておくか。


 変態相手に戦うなんて、今まで経験したことどころか想定したこともはないが。

 やると決めた以上やらなければならないだろう。もう、なるようになれ――だ。

さて、こうして。

再び第一章で対決した亜犯に挑むことにした夕輝達ですが。


果たして作戦はうまくいくのか……こうご期待!!

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