第四章 その2
さて、この回で。
ついに主人公である夕輝が敵と戦うことになります!!
果たして彼の力とはいったいどのようなものなのか……それは読めばわかる!!
事務所でのやり取りから、およそ十五分後、偉止に案内された俺たちは近所の公園に来ていた。
この公園、偉止の言うように確かに広い場所である。
キャッチボールのようなスポーツをする目的で作られた広場というような雰囲気の公園で、遊具などはほとんど無く、強いてあるものを挙げたとしても公園の端っこの方の鉄棒とベンチくらいのものしかない。
その上、地面は凹凸のない平坦で安定した状態になっている。
なので、スペースの面、足場の面ではとても戦うのに向いている場所ではある。
だがしかし、この公園は住宅街のすぐ側にあり、更にそれなりに人通りのある道と接しているので、いつ人が来てもおかしくない。
「おい、本当にここは人の来ない場所なんだろうな?」
偉止はさっきそう言ったはずだが。
俺たちが戦っている最中に子供とかが入ってきて、怪我をしてしまったら問題になるので、一応確認しておく。
「ふむ、その点は問題ないはずですぞ」
偉止は迷わず返答したが、しかし、どうも俺には信用できない。
確か、少し前に事件調査の関係でこの辺りに頻繁に来ていたときは、昼頃になると学校が終わった子供達が遊んでいた覚えがあるし。
偉止の奴が何か勘違いしているのかもしれない。もう一度念を押して確認しておこう。
「付近の様子からいって誰かが来てもおかしくない感じなんだが……本当に誰も来ないんだろうな?」
「いや、これが案外誰も来ないんですな」
「何でそう言い切れる?」
「うむ。何せ、我輩がこの街に呼ばれてから何度か、ここを昼のトレーニングに使っていましたが、一般の人は誰も来なかったぐらいですからな。こんな広々と遊べるような公園だというのに。全く、最近の子供たちは外で身体を動かしては遊ばないのですかな? 実に嘆かわしい」
「…………………」
いや、それはお前がトレーニングに使っていたから、知らずに公園に近づいた子供達はお前を見て気持ち悪がって逃げたし、連絡を受けた教師や保護者は不審者が出るから近づいてはいけないと子供達に注意を促すしで、結果として誰も近寄って来なくなったんだと思う。
だがまあ、ずっとこいつがトレーニングに使っていたということは、今この公園は「変質者が出るから近寄っては行けない場所」になっているはず。結果として人が来なくなっているだろうから、戦っても大丈夫だろう。
「さて、ではそろそろ戦いましょうかな? 緋暮殿と観崎殿、どちらが我輩の相手をするのですかな?」
そう言いながら、さっき事務所で取ったのと同じポーズを取り、戦闘態勢を取る偉止。
どうやら一対一の決闘をしたいようだ。こちらとしては別にそれを受ける必要性はまるでなく、二人がかりで挑んでもいい。
だが、観基の〈強さ〉はあくまで相手の考えが察知できる能力。そうである以上、二対一にして下手に偉止に狙われる可能性をつけるよりは俺と偉止のサシでの勝負にして、観基には助言によるサポートに徹してもらった方が良さそうだ。
「夕輝、任せていいかい?」
「ああ、当然ここは俺の出番だろう?」
観基に任せられるまでもなく、俺は既に戦う構えを取っている。
本当は変なポーズのフンドシ男と戦うのは人に任せたいんだが……ここで「嫌だから観基に任せる」なんていったら戦略的にどうこういう前に、〈ヒーロー〉の卵として失格だろう。
それに、今回の事件を俺が主人公の物語にするんなら、そろそろ俺自身が能力を使ってカッコよく戦うところも描かれるべきだ。
と、いうかこの辺りまで来て、全然能力が描かれないようなヤツは主人公として流石に問題があるだろう。
「ほう、緋暮殿が相手でよろしいですかな?」
「おう。もう、いつ初めてもいいぜ」
「そうですか。では…………始めさせていただきますぞッ――ッ!!」
偉止はまるで晴天の中で突如轟いた雷鳴のごとく激しく叫んで戦いの始まりを告げた。
その声の勢いから、俺は偉止がそのまま攻撃を繰り出してくると予想して無意識のうち防御の姿勢を取る。
だが、いつまで経っても偉止は攻撃を仕掛けては来ない。いや、それどころかさっきまでのポーズを崩さず、こちらの攻撃に備えているようにも見える。
これはこのまま時間稼ぎをして、ボスの計画の準備を進行させようという魂胆だろうか? それとも。
「夕輝、気をつけて。おそらく、何かカウンターみたいな技を狙っている」
俺に助言する観基。
なるほど、そういう事か。
偉止の事を能力で探ったであろう観基の助言だから間違いなくカウンター狙いの行動に違いない。
とはいえ、攻めなければ攻めないで、奴らのボスの計画が進行していくワケだし。
「観基、他にあいつについて何かわからないか?」
「残念だけど、これ以上は。具体的な技までは読めそうにない。けど、一発で致命傷とか、そういうのじゃないはず」
「……そうか、それならやるしかねぇな」
こうなったら、もう、恐れずに接近するしかないだろう。
俺は偉止に向かって雄叫びを上げながら突進する!
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「むはぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
俺が突進した直後、いきなり偉止のヤツが得体の知れないポーズと、今までで一番不気味な表情をしてこちらを威嚇したんで、流石の俺も寒気というか怖気が走り、ビビって後ろに飛び退いてしまった。
何だ、あのとんでもなく奇妙奇天烈摩訶不思議理解不能意味不明な雰囲気は。
俺も一応、仕事の都合なんかもあって、今までの人生では色々な恐怖を体験しているが……そのどれともまるで方向性の違うものを心の奥に叩き込まれたような感じだ。
が、まあ、偉止から離れて冷静になってみると、気持ち悪いっていう精神的なもの以外は別段、身体にダメージがあるってワケでもないし、戦えるか。
そう、思ったのだが。
「フハハハハハ、やらせていただきましたぞ」
高笑いしながら、何とも得意げな表情で俺の方を見ている偉止の様子からすると、どうやら何かされたらしい。それも結構まずいことを。
「こちらが能力を持っていることを知って一対一で戦う辺り、さては緋暮殿、あなたも能力者ではないかと思いましてな……我が能力『超威嚇』で能力を封じさせていただきましたぞ」
ご丁寧にも自身が使った能力について、自ら明かし始める偉止。
普段だったら「自信の能力を明かしてしまうなんて、自身が不利になるだけじゃないか」という感想を持つところだが、彼の言っていることが本当だとすれば、それどころではない。
「お、おい。能力を封じるって……何だよ?」
「言葉の通り、緋暮殿の能力を当面の間、まあ大体半日ほどですかな。使えなくさせていただいたということです」
「なっ!」
「我輩の『超威嚇』は、我輩が取る雄々しくも美麗な、力強いポーズを相手に見せることによって、相手に威圧感を与え、精神の根源を揺さぶる。これにより精神エネルギーを源としている超能力の類を使用不能にする……という能力なのです。いやぁ、これの開発には約三年の厳しい修業と、ドクター宇焚の熱心な協力が……」
なるほど。
かつて偉止が自身の技を披露したとき、格闘家やアーティストが彼を受け入れなかったのは、そんな能力を未完成のものとはいえ見せられたから、威圧感によって恐れをなしたためだったのか……
って、そんなことを考えている場合ではない。
「いや、別に開発秘話はいいんだけど……つまり、俺はもう、今日は能力が使用できないと?」
「うむ、半日ですからな。能力が使用できるようになるのは早くとも日付が変った辺りというか……まあ、その辺りでしょうな」
「じゃあ、当然。俺がこれから能力を使って、お前や、お前の仲間とカッコよく戦うという状況も」
「無いでしょうな」
「っ……! おい! どうしてくれるんだ!? 折角、この事件が後に物語になったとき、『攻撃をヒットさせた相手の持つ強さと同等のものを、俺自身の強さに上乗せできる』って便利かつ、対人戦ならほぼ無敵に近い俺の能力を表わす、最大のチャンスだったのに!」
「何と。そのような能力だったのですか? ほう、それは早めに封じておいて正解でしたぞ」
「『この能力は相手の技術的な強さや、装備による強さまで考慮されて上乗せされるぞ』とか『能力発動まで身を守るために、特注の戦闘服を制作したのだ。決して趣味のために着ているんじゃないぞ』みたいな解説や、『亜犯相手に使わなかったのはお互いの能力が〈相手の強さ〉に関係する能力同士だったので、相殺されてしまう可能性が高かったからだぞ』みたいな補足もここで戦いながら入れようと思っていたのに!」
「今、自分で喋って説明したのですから。良いではないですかな?」
「うるせぇ! 単にこれじゃあ単に『僕の考えたカッコいい能力・設定』をべらべら話す危ない中二病のヤツみてぇじゃねぇか!」
「この物語自体が、そんな感じの危ない中二病的なものなのですから。今さらそれを言われましても」
「いや、それは言っちゃいけないだろう……」
まあ、この物語が中二病的かはとりあえず、置いておくとして。
これで、俺は能力が使えなくなってしまったようだ。
後ろで観基は。
「ゴメン! 命に関わるようなものじゃなかったから、読めなかった」
なんて言っているが、物語の、しかも能力バトルものの主人公として見たら明らかに致命傷だと思う。
観基の能力は漠然とした危険を感じとったり、相手が何かを企んでいることまでは知ることができても、余程集中しないと具体的にそれが何なのかまではわかららない。
なので、こんな状態になったからといって、それを彼女のせいにだけするワケにはいかず、俺自身ももう少し警戒した方が良かったとは思うのだが……それでも「いや、ゴメンで済む問題じゃねぇよ!」という気持ちはある。
何せ、この状況は「俺の見せ場が無くなった」とかそういう、物語的な要素を抜きにしても致命的な状況になっているのだ。
能力が使えない俺は、ただのちょっと格闘技を学んでいて実戦経験もあるという程度の、いうならば成人男性の平均と比べたら少し強い人程度の存在だ。
対して、偉止は仮にさっきの『超威嚇』しか能力を持っていなかったとしても、あの体格、あの筋肉である。
いくら格闘技が体格や筋力的に不利な場合でも勝てるようにするための技術だといっても、偉止も偉止で戦闘の素人というわけではない以上、それなりの技術は持っているだろうし……どうも、俺に勝目はない気もする。
「さて、戦いの続きを始めましょうかな?」
「ええと……やっぱり、話し合いで解決するというは……駄目?」
「何を今更」
「じゃあ、観基に代わるってのは……」
正直、能力が使えない俺よりは、能力で相手の急所や、筋肉のゆるんだ隙を突いて攻撃できる観基の方がまだまともに戦えると思う。
それに、『超威嚇』はさっき、俺が接近するまで放たなかったことを考えると、至近距離からじゃないと効果がないみたいだし。基本、銃による遠距離攻撃で戦う観基なら問題ないだろう。
「別に我輩はそれでも構わないのですが……はて? 観崎殿は一体何処に?」
「え?」
言われて振り返ると、さっきまでいたはずの観基がいなくなっていた。
まさか、新手の敵にさらわれたのか……いや、彼女なら自身の身に危機が迫っていたら気がつくだろうし。
じゃあ、逃げた……って、そこまで無責任ではないだろうし。
……一体どこに?
「まあ、かわる相手がいないのでは仕方がありませんな。このまま戦いを続けさせていただきましょう」
観基のことを気にしている俺に、飛びかかってくる偉止。
俺はそれを横っ飛びでかわす。しかし、すぐに態勢を変えて、偉止は再び俺に向かって手を伸ばす。
それをかわす。再び攻撃が迫る。かわす。またしても攻撃が迫る……
漫画なんかでは大抵、こういう筋肉質で大柄なヤツはスピードが遅かったり、一度技を繰り出してから次の技を繰り出すまでの間に隙があるものなんだが。
ポージングをするために強靱なだけではなく柔軟でもある身体をつくっているためか、偉止は素早く体勢を切り替えられるので、残念ながらそういう弱点がない。
いや、それでも多少は技を繰り出す瞬間とかに弱点があるのかもしれないが……今の俺にはその微妙な隙を見抜く力も、突く技術もない。
そして勿論、あの筋肉質な偉止に力まかせに正面衝突して勝てるだけのパワーもない。
能力さえ封じられていない状態なら、偉止に擦る程度でも攻撃を当てることで、隙を突くことも、あるいは力でねじ伏せることも可能になるのだが。
何とかして偉止の『超威嚇』を破れないものだろうか?
…………
あ、そうだ。
こういう精神面に関連する能力は意志の力、例えば気合なんかでどうにかなったりするかもしれない。
観基の予知能力だって圧倒的に強い意志を持っている相手には効果がないことがあるらしいし。あながち間違った対応法ではないだろう。
というわけで気合で何とかやってみようと決意した俺は。一旦、大きく後ろに退いて、偉止との間合いを取ってから、
「うおぉぉぉおおぉぉぉぉぉーッ!!」
と、気合を入れるために雄叫びをあげた。
が。
「……どうしましたかな?」
偉止がその雄叫びに対して冷静に突っ込みを入れてきたために。
「え? い、いや……その……」
俺はしらけてしまい、気合を入れることに失敗した。
その上。
「夕輝殿、さては気合で我輩の能力を何とかしようとしたのでしょうかな?」
偉止に俺の企てを読まれてしまい。
「確かに、我輩を圧倒的に上回る気力があれば『超威嚇』を破れるでしょうが……果たしてそんな気力を簡単に出せるとお思いですかな?」
指摘までされてしまった。
確かに、そう指摘されてしまうと『超威嚇』の威圧感を超えるような気合を簡単に出せるとは思えない。
ヒーロー好きの俺としては気合によって相手を打ち破るとか、そういう展開は嫌いじゃないのだが、それが出来るほど現実は甘くはないということか。
いや、あるいは。
それができるようになったら俺も一人前のヒーローを名乗れるのかもしれないけど。
偉止も気合で能力を破るってこと自体は否定していないワケだし、案外、能力者同士の戦いでは、最後の最後に決め手になるのは気合だったりするのかもしれない。
しかし、今の俺にはこの状況を気合で何とかするってのは無理だとすると……『超威嚇』を破るのは諦めて何か、俺が能力を使えなくてもできるような別の対策を考える方がいいかもしれない。
例えば、あえて偉止に接近して攻撃をさせ、それをかわし続けることで相手が疲れるのを待つというのはどうだろうか?
いや、偉止の攻撃をかわす俺の方だって疲れるのだ。どちらかが疲れるまでの根比べに持ち込んだら、あそこまで鍛えている偉止の方が有利の気もする。
それにもし、今の俺が偉止の攻撃を数発受けたらそれで決着がついてしまう気もするし。あるいはあの太い腕に掴まれたら逃げられない気もするし……
偉止の間合いに飛び込む必要のある作戦はリスクが高いか。だとすると別の手を考えたほうがいいだろう。
……そうだ、応援を呼ぶというのはどうか。
今、一対一で決闘をしているのはあくまで偉止が勝手に望んだこと。やや卑怯な気もするが、こっちがそれに従い続ける理由は何も無いはずだ。
だが、こんな状態でどうやって応援を呼べばいいんだ? 相手のあの、俊敏な動きから繰り出される数々の攻撃を避けながら通話にしろメールにしろ、そういう操作をすることなんてできるのか?
それ以前に、誰を呼び出せばいいんだ?
確かに、こういう能力者とかを相手に仕事をしている人を何人かは知っているけど、それはあくまで観基の知り合いであって、俺の知り合いではないし。
第一、そういう人たちは別にこの地域を守っているワケじゃないから、呼んでもすぐに来てくれるワケじゃないし……
くっ、全く、こういう超常事件に対しても警察みたいな組織があって、通報すれば駆けつけてきてくれたりすればなあ。何か遠くでサイレンの音がするけど、あんな感じで……ん?
サイレンの音がこっちの方に向かってきているような。
そしてこの公園の前で止まったような……
俺と偉止は、一度戦闘を中断し、サイレンの音が聞こえてきた方向に顔を向ける。
そこに現れたのは二人の警察官、それと観基だった。
「お巡りさん。この男です」
観基は偉止の方を指さす。
「おい、観基。これは……?」
「いや、君が能力を封じられてまずいと思ってね。何かないかと考えたんだけど……」
「だけど?」
「よく考えれば、今、この辺りの住民にとっては偉止は公園に出没する変質者だし。不審者の出る事件も街では増えているワケだし。能力者とか、超常現象以前の問題として警察が対処してくれるかな……と」
「まあ、確かにそうだけど」
そうだけど……いいのかなぁ?
仮にも能力バトルものの主人公が最終的に警察を頼ったりして。
ううむ、色々まずいんじゃないかなあ……どうなんだろう?
そんな、悩んでいる俺の横を素通りして、観基が連れてきた警察官は偉止の方に向かっていく。
「む、お前か。最近この公園に出没して、不審な行為を行っているという変質者は?」
偉止に向かって確認する警察官。
「変質者とは無礼千万! 我輩の名は偉止! この公園でトレーニングを行っていただけである」
警察官の言葉に憤慨し、反論する偉止であったが、当然のことながら、その容姿では「変質者ではない」という旨の発言に説得力があるワケもなく、警察官は彼の意見を完全に無視し、
「フンドシ一丁の大柄な男……先輩、こいつさっき連絡があった、街中を走り回ってあちこち壊したヤツじゃないっすかね?」
「取り押さえようとした警官六人を振り切って逃げたという、あれか?」
などと二人で話を進めていた。
どうやら偉止は俺たちと出会う前にも問題を起こしていたらしい。
そういえば、さっき偉止が事務所に現われたとき、もめ事に巻き込まれたとかいっていたが。警官が話しているのは、どうやらその事のようだ。
「確かに、そんなこともあったかもしれんが、我輩、仲間のために急いでおったので……」
偉止は警察の言った内容に対して言い訳。
勿論その言い訳は当然、警察官にとっては事件に関わっていたと認める供述となったため、警察は彼が噂の事件の犯人と判断。
「公園での不審な行為に、器物破損、更には公務執行妨害……まあ、とりあえず署の方に来てもらおうか」
と言うが早いか、偉止の腕をしっかりと掴んだ。
「そ、それは困る。我輩はまだやらねばならない使命が……」
腕を掴んだ警察官を振り払おうと、偉止は軽く腕を振るう。
ただし、それはあくまで偉止にとっての〈軽く〉であって、あの巨体の、人の家の塀や壁を壊すような筋肉のついた腕による払いが常識的な威力から見て軽いものであるはずもなく。
腕を掴んでいた警官は公園の端、約十数メートルの距離を、もの凄い勢いで吹っ飛ばされてしまった。
だがしかし。
なんと飛ばされた警察官は空中で姿勢をコントロールし、片腕一本で一度地面を叩くようにして落下の衝撃を緩めながら軽く跳ね上がり、その後両足で安定した着地をするという、普通ではない受け身の取り方を使って無傷で着地をした。
確か、警察官は警察学校時代に剣道や柔道、あるいは逮捕術なんかを学ぶと聞いたことがあるが、今の動きは明らかにそういうものとは違うものに思える。
あるいは仮にそれらだとしたら余程鍛練を積んだものが行う事が出来る動きに違いない。
さっきはあまり良い意味で言わなかったが、俺だって格闘技をそこそこ勉強していて、実戦経験も多少あるのだ。あれがかなり高度な技術であることぐらいはわかる。
と、いうか。超能力とかそういうのを抜きにすれば、俺が知っている中には、彼を凌ぐ体術の使い手は一握りもいない……気さえする。
何者なんだ? あのお巡りさん。
「だ、大丈夫っすか!?」
駆け寄る後輩に。
「何ぁに、大した問題じゃあねぇよ。長年、この街で警察官してると、たまにこういう化物みてぇな奴と当たることがあるんでね……普通の街なら〈ただのお巡りさん〉ってところの俺だって、これぐらい余裕で受け身が取れるようになっちまうのさ」
と、不適な笑みを浮かべながら返す先輩のお巡りさん。
彼は更に。
「さて、この偉止とかいう奴。見た感じ、どうやら俺と互角ぐれぇの実力のようだ。試しに本気出して戦ってやりたいところだが……」
などといい、まるで一昔前の少年漫画にありがちな、強い者を見ると血が騒ぐというようなタイプの主人公みたいな目つきで偉止を睨む。
それに応じて、警官の方に戦いの構えを取る偉止。だったが、
「残念だが、俺のやることは私闘じゃあなくて、職務としててめぇを署の方に連行することなんでね。悪いが、安全のために応援を呼ばせて貰うとするぜ……」
と、別段、戦う事もなく無線を使って応援を呼んだ。
こうして、数分後。
偉止は応援に駆けつけた警察官十数人に囲まれ、署の方に連行されたのだった。
……と、まあ。
結局、そんな決着でいいのかという感じですが。異能力バトル的には。
しかし、まあ世の中そんなもんですよねぇ……と。
まあ、それはともかく物語は第五章に続く!!




