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第18話 バッターリア

 

 今日もいつも通り、翔とカナは登校する。歩きスマホならぬ歩き新聞の翔は猫耳ヘッドホンを首に掛けている。


 「ねぇ翔」


 「んー?」


 「今日は天気悪いね…」


 「そうだな…天気予報、見事に外れたな。」


朝からカナは何かよからぬ事が起きそうな気がしていた。


 「おはよ、カナ」


レイカが浮かない顔で声を掛けてきた。


 「なんだ?桜木もテンション低いのか?」


翔は普段通りのノリだ。


 「なんかこうも天気悪いとね…」


 「なんていうか…猫耳と尻尾がざわつくよねぇ…」


 「そうそう…」


 「なるほど、アストレアならではの感覚か」


3人は窓の外を見る。まさに曇天だ。

 

 その日の昼休み、翔はコンビニへ行こうと席を立つ。

 

 「翔、コンビニ行くの?」


 「ああ。」


 「私も行くよっ」


 「あれ?カナは普段弁当じゃなかったか?」


 「今朝起きれなくてね…」


 「なるほどな」


2人は外のコンビニへ向かった。その時、サキとすれ違う。


 「三島先生?」


翔は違和感に気づき声を掛けた。


 「何ですか?樟葉君」


 「肩に掛けた、そのバッグ何ですかね?」


 「それを聞いて何になるんですか?」


 「言っとくぜ?何企んでるかは知らんが、俺を甘く見ない事だな」


凍てつく声で警告する。


 「甘く見たりはしてませんよ。では、失礼」


サキはそのまま立ち去った。


 「翔…どうしたの?」


カナが不安そうな表情になる。


 「まーちょっとド派手な事が起きそうな気がしたんだ」


 「三島先生ってさ…何か…こう、普通の人じゃない気がする」


 「おー分かってんじゃん。ありゃただのアストレアじゃないな」


話しながらコンビニで買い物を済ませる。


 「何者なんだろうね…それとさっき聞いてたバッグ、あれなんだろ?」


サキが運んでいたバッグはかなり長めだった。


 「まぁ…ちょっと危険なシロモノだろうな」


 「どうする…?」


 「とりあえず、寮に寄ってから生徒会室向かおう。急ぐぞ」


 「うん!」


危機感に駆られ走り出した。翔は寮の自室に戻る。

 

 (ちっ…洒落にならんぞ…とりあえず、スマホにタブレット、ノーパソは持ち出すとして…パソコンは電源切るか)


急いで部屋を出た。


 「翔、私は何か持ち出した方がいい?」


カナが尋ねる。


 「スマホとノーパソだ。あとデスクトップは電源切っとけよ!」


 「わかった!」


他の生徒は至って普通に過ごしている中、翔とカナだけはまさに非常事態といった趣だ。周りの生徒は訝しげな視線を向けるが、2人は全く気づいていない。生徒会ビルへ向かって全力で走る。その時、


ズドォン!ズダァアアン!


爆発音と銃声のような音が響いた。


 「マジかよ…」


 「な…何が起きてるの!?」


翔とカナは思わず立ち止まり、辺りを見回す。今の音でパニックが起きている。すると校内放送が入った。


 『全校生徒に告げます。2学年主任の三島です。我々、教師連合は生徒会室を制圧しました。皇ハルカ、更科ルリ、長谷川ヒビキ、仁科マキを人質にしています。よって生徒会副会長、樟葉翔に交渉に応じるよう求めます。なお、一般生徒諸君は自宅または寮へ帰るように。尚、寮は我々の監視下に置いています。交渉に応じる場合は一人で生徒会室まで来て下さい。以上です。』


事実上のクーデター宣言だ。


 「先手打たれたか…」


 「翔…どうするの…?」


カナは冷静さを失っている。


 「落ち着け。さっきの人質の中にシオリとレイカが居ないから探すぞ!」


 「う…うん…」


翔はカナの手を引いて走り出した。走りながら、翔はスマホで電話を掛ける。


 『天満さん!』


 『ど…どうしたんだい!?そんな大声で…』


 『緊急事態だ!事情は後で話すから、学園の校門前に車回してくれ!』


 『わ…わかった!直ぐに行かせるよ!』


電話を切る。


 「ど…どういうつもり!?」


カナが走りながら聞く。


 「教師連合は武装してやがる!こっちは丸腰だからな!さっさと戦術的撤退したほうがいい!」


2人は校舎へ向かっていた。入口に人影が見える。


 「誰かいるよ!」


カナが叫ぶ。


 「スモークで見えないな…誰だ!」


翔が大声で問うた。


 「その声、樟葉君?私よ…レイカ!げほっ…げほ…」


咳込みながら出て来る。


 「桜木か…無事でよかった。」


 「レイカ…!」


2人が駆け寄る。

 

 「樟葉君!追手が来てるわ!逃げないと!」


レイカが伝える。


 「シオリは居ないのか!?」


そう言っていると、


パリンッ!!


4階のガラスが割れる音がした。そして割れた窓から飛び降りる人影が見える。


 「ちょ!?死ぬ気!?」


レイカが素っ頓狂な声で叫ぶ。しかし、人影は空中で綺麗に回転し、鮮やかに着地した。


 「猫は高所からの飛び降りに強いって言うが…アストレアもなんだな…」


妙に冷静に翔が呟く。


 「翔!!」


叫びながら走って来たのはシオリだ。


 「シオリも無事か!」


 「とにかく逃げないと!!」


既に、追手が迫っていた。


 「分かってる!!全員、校門まで走れ!!」


翔が叫ぶ。全力疾走で校門へ向かった。


 「樟葉君!あの車は!?」


レイカが止まっている黒塗りの高級車を指さす。


 「決まってんだろ!銀行からの迎えだ!」


 (出たぁあああ!!銀行パワー!!)


全員が歓喜する。翔ならでは打開策だ。


 「よし、乗り込め!」


翔が大声で指示する。追手が後一歩まで迫っていた。


 「しつこいわよ!!スモークグレネード!」


シオリがすかさす投擲する。辺りに煙幕が展開した。その隙に全員、車に飛び乗る。


 「全員乗車!」


レイカが叫ぶ。


 「よし、出してくれ!!」


翔の一声で車は一気に校門前を離脱した。


 「た…助かった…」


カナが胸を撫で下ろす。


 「流石に追ってこないわね」


レイカが後ろを見る。


 「そりゃ…教師連合は…あくまで学園内だけでしか動けないはずだから…」


息が荒れているシオリ。


 「ギリギリだったな…にしてもシオリ、よくあんなトコから飛び降りたな」


翔は既に冷静さを取り戻す。


 「まぁね…訓練してるし…」


 「なるほどな。てかハルカたちの事は何か知ってるか?」


 「昼休みに風紀委員会と保健委員会の予算を会長たちとで調整してた所に襲撃されてね…私も残ろうと思ったんだけど…翔に伝言してくれって会長がね」


 「ハルカが俺に?」


 「学園を守る為にも何とか教師陣に打ち勝ってくれ、って」


 「おいおい…マジかよ…」


 「単刀直入に聞くけど、勝てるの?」


 「は?このままじゃ無理に決まってるだろ」


その言葉に全員絶句する。


 「ちょっと!会長が願ってる事なのよ!?」


シオリが突っかかった。


 「落ち着け。今のままじゃって言っただろ?何のために銀行に向かってるのか考えろ」


 「まさか…銀行使って、勝つ気?」


 「いや俺に出来る事ってそれ位だしな」


 「でもどうするつもりよ!?」


 「それをこれから考えるんだ」


車はCTF銀行東京本店へ到着する。全員、最上階の会議室へ入った。宮日が迎える。


 「やれやれ…一体どうしたんだい?」


 「あぁ…学園で教師連合がクーデターを起こしやがった。」


 「そ…それはまた…大変だね…」


 「しかも武装してやがるからな…」


 「ふむ…」


宮日は考え込む。


 「とりあえず…俺、シオリ、レイカ、カナ、天満さんか…5人しかいないとなると大変だな…カナは糧食管理任せたいし、俺と天満さんは司令塔だから動けるのはシオリとレイカだけか…」


 「私は単独行動でも大丈夫!」


シオリが胸を張る。


 「ならむしろ、シオリを学園に潜入させて、それ以外全員でサポートの方がいいか」


 「潜入は得意よ!学園内の地図も頭に入ってるし!」


 「どこのボスだお前…まぁいい。とりあえず、人手がもうちょっとあればいいんだがな」


この場合、人手は多ければ多いほどいい。


 「本店長、樟葉様のお知り合いという方がいらっしゃいましたが…」


部下が宮日へ報告する。


 「ん…?」


 「ああ、通してくれていいぜ」


宮日より先に翔が返事する。


 「すみませんね、急に押しかけて」


そう言って現れたのは美鶴だ。


 「ったく…やっぱあんたか。三条さん」


 「お嬢様の危機ですからね。今日は本家で執務をしていたのですが、お嬢様から緊急メールが届きまして。大至急、ここへ向かえとの事でしたから」


 「まぁいい。助かるよ。」


 「なるほど…皇家の執事さんでしたか」


宮日も納得する。


 「さてと…とりあえず、情報収集と整理だな」


翔が取り仕切る。早速、ノートパソコンを立ち上げる。


 「すみません、台所あります?」


カナが宮日に尋ねる。


 「あぁあるよ。この部屋を出て向かい側だ。食材も備蓄があるはずだ」


 「ありがとうございます!」


女将モードに入るカナ。


 「樟葉君、こちらで出来そうな事があったら言ってくれ」


 「そうだな…とりあえず、天満さんは通常業務をなるべく片づけてくれ。後で缶詰させちまうかもしれないから」


 「分かった。じゃあ仕事に戻る。何かあったら呼んでくれ」


宮日は部下を連れて退室した。


 「さてと…学園の現状を知りたいが…どーすっかな」


 「学内ネットワークに侵入して監視カメラの映像を傍受するとか…?」


レイカが提案する。


 「三条さん、そんくらい出来るだろ?」


美鶴に丸投げする。


 「ええ、お任せを」


すぐにノートパソコンのキーを叩き始める。


 「さてと…ハッキングは時間かかるだろうし…こっちもこっちでやるか…」


翔もハッキング態勢に入る。


 「どこをハックするの?」


レイカが尋ねた。


 「んー内緒だ。」


翔は猫耳ヘッドホンを装着し、集中する。


 「シオリ、できること何かないかしら?」


 「学園内への侵入ルート検討するわ」


 「分かったわ。付き合う。」


2人が画面に見ているのは学園の完全な見取り図だ。


 「一番バレないのは…地下からよね…やっぱり」


レイカが注目しているのは共同溝だ。


 「そうね…電線や水道管を敷地に引き込んでるし…でもどこから入るかなのよね…」


シオリは共同溝への侵入経路を探す。


 「うーん…」


考える間、沈黙の時が流れる。



 「学園ネットワーク、ハッキングしましたよ」


美鶴が顔を上げる。


 「流石だな。プロジェクターで映像出してみるか」


翔も自分の作業を中断し、確認する。


 「とりあえず、生徒会室の周辺や内部を映してみましょう」


スクリーンに映像が出る。


 「あ、ハルカや他の皆が映ってるわ!」


レイカが指差す。


 「無事は無事みたいね…」


シオリもまずは安心する。

 

 「やっぱ武装してやがるな…アサルトライフルかよ…M4か…?」


翔が注意深く映像を見る。


 「警察へ通報しますか?」


美鶴が提案する。


 「いや、警察が介入したら、社会問題になってアストレアの地位が悪くなる。三島先生はアストレアだからな」


 「そうなると…私たちだけでどうにかするしかないのね…」


レイカが悩ましそうにしている。猫耳もぺたんと畳んでいる。


 「そうなるな…まぁ…スナイパーが居れば良いんだが…」


その言葉にシオリの背筋が氷結した。触れられたくない琴線に触れられたようだ。


 「って、シオリどうした?」


気になった翔が声を掛ける。


 「い…いや、何でもないわ!それよかなんでスナイパーなの?」


何とか冷静さを保ち、話を進める。


 「長距離狙撃で生徒会室の三島先生を制圧できれば、後はそう苦労しないだろうからな」


どうやら翔はサキだけに特段の注意を払っている。


 「三島先生以外は?」


 「見るからに素人だ。部屋での歩き方や目つきを見れば分かる。」


 「な…なるほどね」


 (翔…もしかして気づいちゃってるのかな…)


シオリは内心、不安で仕方ない。


 「それはそうと生徒会ビルの地下って監視カメラないのか?」


翔が美鶴に尋ねる。


 「それが地下のものだけは電源を落とされているようです。コマンドを受け付けないところから、物理的にケーブルが切断されているかと」


 「てことは地下に何か仕掛けてあるんだな。むしろ、わざと地下に目が行くように仕向けたか」


 「地下に仕掛けるものの定番って…」


 「そりゃ映画でもドラマでもよくあるが、爆弾だろうな」


その言葉にシオリとレイカが固まる。


 「ちょっと!爆弾なんてあったらどうするのよ!」


レイカが物凄い剣幕で詰め寄る。


 「落ち着け。対策はある。とりあえず地下室の仕様はどうなってたっけ?」


 「えっとね…セキュリティシステムが機能している時は赤外線センサーが侵入者を検知するわ」


シオリが答える。風紀委員会は学内施設の全てを把握していなければならない。


 「んじゃ、明日アキバ行って、その後に潜入してみるか」


 「え?翔も行くの?」


 「まぁな」


 「でも翔の方もハッキングあるんじゃ…?」


 「もうすぐ終わるから大丈夫だ」


 「そ…そっか」


シオリはいつになくせわしない。翔は気づいていたが、敢えて何も言わなかった。



 「そろそろ夕飯にしない?」


カナが会議室へ戻ってきた。


 「ちょうどいい。明日の計画について話すから皆で飯だ。」

 

 「はーいっ。じゃあ料理出すね!」


カナが手早く配膳する。


 「お、仕事終わったから見に来たらちょうど夕飯かい?」


宮日も戻って来た。


 「いいタイミングだな。って今日は…カツカレーか!しかも大盛り!」


翔が思わず、唾を飲み込んだ。


 「ふふー、スタミナつけてね!」


カナがウィンクする。


 「そういえば…泊まるところとかお風呂って…?」


レイカが思い出したように宮日に尋ねる。


 「心配しなくていいよ。このフロアに全て揃っているから」


 「銀行の本店ともなりゃ凄いよな…ほんと」


 「よかった…」


翔は感心し、レイカは安心した。皆、カナのカツカレーに舌鼓を打っていたが、シオリだけはどことなく元気がなかった。


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