人間に選ばれたもの
人間に選ばれたもの
「売れました!」
天女の報告に、上界が一瞬静まり返った。
「……売れた?」
「はい!」
天女が大きく頷く。
「たくさん売れました!」
次の瞬間。
「おおっ!」
あちらこちらから歓声が上がった。
「本当か!?」
「我らの作ったものが?」
「人間が買ったのか?」
「はい! 人間の方々が、自分で選んで買ってくださいました!」
天女の周りに妖怪たちが一斉に集まってくる。
「どれが売れた?」
「我のは?」
「全部なくなったのか?」
「どんな人間が買った?」
「待ってください! 一度には答えられません!」
天女が慌てるほど、次々に質問が飛んできた。
中には、自分が作ったものが売れたのかどうかを真っ先に確認する者もいる。
「それで、あれは?」
「どれです?」
「我が作った、あの小さいやつだ」
「ああ! 売れましたよ!」
「本当か!」
その妖怪の顔が一気に明るくなる。
「人間が……我の作ったものを……」
「はい。手に取って、しばらく見てから買っていかれました」
「そうか……」
嬉しそうに何度も頷く。
別の妖怪も天女へ詰め寄った。
「では、我が作ったものは?」
「そちらも売れました」
「本当か!?」
「はい」
「どんな人間だった?」
「女性の方でしたよ。ほかのものと見比べてから選んでくださいました」
「選んだ……」
その言葉を聞いた妖怪の表情が変わる。
ただ持っていったのではない。
たくさん並んでいる中から見つけて、比べて、それを選んだ。
「我のを選んだのか」
「はい」
「そうか……!」
少し離れたところから、
「我のは!?」
と別の声が飛んでくる。
「順番です!」
天女が声を上げた。
報告は、なかなか先へ進みそうになかった。
◇
「全部売れたわけではありませんよ」
ひと通り質問に答えたあと、天女が念を押した。
「残ったものもあります」
「そうなのか」
「はい。でも、本当にたくさんの方が見てくださいました」
「売れなかったものも、人間は見たのか?」
「もちろんです。手に取ってくださったものもあります」
「それなら次がある」
一人の妖怪が言った。
「今度はもっと人間が気に入るものを作ればよい」
「そうだ!」
「我も次は作るぞ!」
「待ってください。まだ次があるとは――」
天女が止めようとするが、妖怪たちはすでに盛り上がっている。
「今度はどんなものがよい?」
「人間は小さいものを好むのか?」
「いや、大きいものも見ていたのだろう?」
「どのような形が売れた?」
「ですから、一度に聞かないでください!」
また質問攻めが始まった。
◇
人間が商品を手に取った。
気に入った。
そして、人間のお金を出して持って帰った。
人間からすれば、バザーで買い物をしただけだ。
けれど、妖怪たちにとっては違った。
今はまだ、誰もが自由に人間から認識してもらえるわけではない。
人間のすぐそばまで行くことができても、その姿を見てもらえない者もいる。
直接言葉を交わせない者も多い。
それでも、自分たちが作ったものなら人間の世界へ届けることができた。
「人間が、我らのものを受け入れたということか」
誰かが呟いた。
「そうですね」
天女が頷く。
「小さなことかもしれません。でも――」
「小さくなどない!」
別の妖怪が言った。
「大事な一歩だ!」
「そうだ!」
「我ら自身がまだ見えなくとも、我らの作ったものは人間の手に渡ったのだ!」
「しかも、人間が自分で選んだ!」
声が次々に上がる。
自分たちの存在そのものを認識してもらえたわけではない。
まだ、人間と妖怪が普通に向かい合って話せるようになったわけでもない。
けれど今日、自分たちの作ったものを通して、人間とつながることができた。
それは妖怪たちが望んでいる、人間との共存へ向けた小さな一歩だった。
誰かに強制されたわけではない。
妖怪の存在を知っていたから買ったわけでもない。
何も知らない人間が、自分の意思で妖怪の作った品を選んだ。
だからこそ、意味があった。
◇
「それから」
しばらく喜びが続いたあと、天女が手を叩いた。
「まだ報告があります」
「何だ?」
「二か月後にも、またバザーがあるそうです」
「何!?」
真っ先に反応したのは朱雀だった。
「またあるのか!」
「はい」
「出るぞ!」
「まだ最後まで聞いていません」
「出るに決まっておろう!」
朱雀が勢いよく立ち上がる。
「これだけ成果があったのだ! やらぬ理由がない!」
「珍しく意見が合うな」
白虎が言った。
「何だと?」
「我も賛成だと言っている」
「ならば最初からそう言え!」
「今言っただろう」
「言い方というものがある!」
「面倒な奴だな」
「何だと!」
「二人とも、その話はあとにしろ」
青龍が止める。
「今回、人間側がどのようなものを選ぶのかも多少分かった。もう一度試す価値はあるだろう」
「そうであろう!」
「お前に同意したわけではない」
「なぜいちいち一言多い!」
朱雀が今度は玄武を見る。
「玄武は?」
「異論はない」
玄武が静かに答えた。
「一度だけでは分からぬことも多い。続ける意味はあるだろう」
「決まりだな!」
「まだ皆さんに聞いていません!」
天女が言う。
「聞くまでもない!」
「あります!」
しかし、周囲の妖怪たちからはすでに次々と声が上がっていた。
「やりたい!」
「次はもっと作ろう!」
「今度は我のも出したい!」
「また人間に見てもらえるのか!」
「次こそ我のも売れるだろうか!」
「今度は何を作ればよい?」
どうやら答えは最初から決まっていたようなものだった。
◇
「それから、もう一つ」
天女が笑う。
「次も参加するなら、ミオさんと咲子さんが手伝ってくださるそうです」
一瞬の静寂。
そして。
「おお!」
今日一番ではないかと思うほどの歓声が上がった。
「本当か!」
「はい。『またやるなら手伝う』と言ってくださいました」
「ならば決まりだ!」
朱雀が胸を張る。
「二か月後も参加するぞ!」
「だからお前一人で決めるな」
青龍が言う。
「皆、賛成しておるではないか!」
「それはそうだが」
「ならばよい!」
「そういう問題ではない」
「細かい奴だ!」
天女は苦笑しながら周囲を見る。
反対する者はいなかった。
むしろ、すでに次の品物について話し始めている妖怪までいる。
「次はもっと細かく作ってみよう」
「人間が持ち歩きやすい大きさがよいのでは?」
「色も変えてみるか?」
「我は違うものを作ってみたい」
二か月後。
もう一度、自分たちの作ったものを人間の前へ並べる。
その話だけで、妖怪たちは楽しそうだった。
◇
「では、次の参加については決まりですね」
天女が確認する。
「当然だ!」
朱雀が答える。
「今度こそ我も――」
「朱雀様」
執事の声が飛んできた。
「まだ何も言っておらぬ!」
「言おうとしていたことは分かります」
「なぜだ!」
「分かります」
「今度こそ我も下界へ行く、と言おうとしたのだろう」
白虎が言った。
「なぜお主まで分かる!」
「分からぬ方がおかしい」
「我はまだ何も言っておらぬぞ!」
「では違うのですか?」
執事が聞く。
「…………」
朱雀が黙る。
「違わないのですね」
「二か月ある!」
「だから何です?」
「その間に何とかする!」
「何をです?」
「それを今から考える!」
周囲から笑いが起こった。
天女も笑いながら首を振る。
二か月後にも、またバザーへ参加する。
そのことだけは、全員一致で決まった。
そして――。
「ところで」
青龍が口を開いた。
「もう一つ、決めなければならないことがある」
「何だ?」
「今回の売上だ」
その一言で、今度は別の意味で妖怪たちが静かになった。
自分たちの品を人間へ届けることには成功した。
そして、人間の世界で使えるお金も手に入った。
ならば次は。
そのお金で、人間の世界から何を持ち帰るのか。
「決まっておろう!」
朱雀が真っ先に声を上げる。
「服だ!」
「…………」
「何だ、その反応は!」
どうやら、次の話し合いは簡単には終わりそうになかった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




