何を買おう?
何を買おう?
「終わりましたね」
声がして、ミオと咲子が振り返った。
「天女!」
天女も片付けが終わるのを待っていたらしい。
「いっぱい売れたよ!」
「見ていました!」
「午後も?」
「もちろんです」
「ほかのお店も見てたじゃん」
「そちらも見ていました!」
「忙しいね」
天女が笑う。
朝からバザー会場をあちらこちら見て回りながら、ときどき二人の店へ戻ってきていた。
自分たちの商品が売れるたびに喜び、また別の店で珍しいものを見つければ、そちらへ行ってしまう。
最後まで天女らしい一日だった。
「でも、本当に嬉しかったです」
「何が?」
「私たちのものを、人間の方が選んでくださったことです」
ミオと咲子が天女を見る。
「最初は、どうなるのか分かりませんでした。でも、皆さんが手に取って、迷って、気に入ったものを持って帰ってくださって」
天女は商品がなくなった机を見る。
「不思議な感じです」
「私たちも」
ミオが答える。
「売れるまで分かんなかった」
「そうですね」
「でも、売れた」
「はい!」
天女が嬉しそうに頷いた。
◇
「あ、そうだ」
ミオが売上の入った袋を見る。
「これで、妖怪たちが欲しいもの買えるんだよね」
「そのために始めたんでしょ」
咲子が答える。
今回、妖怪たちの品物をバザーで売ったのは、それ自体が目的だったわけではない。
妖怪たちが興味を持っている下界の品物を手に入れるには、人間の世界ではお金が必要になる。
だから自分たちの持つ品物を売って、人間のお金に換えてみる。
それが、この計画の始まりだった。
「うん。そうなんだけど……」
ミオが天女を見る。
「何買うの?」
「えっ、私ですか?」
「何か欲しいものない?」
「あります!」
「何?」
「今日見たものなら、あれもよかったですし、あちらのお店にあったものも気になります。それから食べ物もおいしかったですし――」
「ちょっと待って!」
ミオが止めた。
「多い!」
「だって、どれも面白かったんです!」
「一個にしてよ!」
「一個ですか!?」
天女が本気で困った顔になる。
「そんな……選べません」
「そんなに?」
「はい!」
咲子が笑う。
「天女にだけ聞いて決めたら、今日の売上全部なくなりそう」
「そんなことありません!」
「ほんと?」
「…………たぶん」
「怪しい」
「たぶんって言った」
「だって、まだ欲しいものがいくらなのかも分からないんです!」
「あ、それもそうか」
天女には、人間のお金の価値がまだ分からない。
五百円と五千円で数字が違うことは理解できても、その金額で人間の世界の何が買えるのかという感覚までは持っていない。
「じゃあ余計に、天女だけで決められないね」
咲子が言った。
「妖怪みんなのためのお金なんだから」
「そうですね」
天女も頷く。
「上で皆さんに聞いてみます」
「何が欲しいか?」
「はい」
「じゃあ、欲しいもの聞いてから、私たちが値段調べればいいんじゃない?」
ミオが言う。
「人間のお金がどのくらい必要かは、私たちの方が分かるし」
「それがいいかも」
咲子も頷いた。
「妖怪側で欲しいものを決めてもらって、それがいくらくらいなのか私たちが調べる」
「お願いします!」
「まだ何買うか決まってないけどね」
「それを決めるのも楽しそうです」
天女が嬉しそうに笑った。
「じゃあ、それまではこのお金預かっとくね」
「お願いします」
咲子が売上の入った袋を確認する。
「今日の売上って分かるように、ちゃんと別にしておこう」
「うん」
ようやく手に入った、人間の世界で使えるお金。
何に使うのかは、これから妖怪たち自身が決めることになった。
◇
天女が片付いた机を見つめる。
「どうしたの?」
ミオが聞く。
「いえ……」
天女は少しだけ残念そうに笑った。
「本当なら、私も一緒にお店に立ってみたかったです」
「え?」
「皆さんが『いらっしゃいませ』って言っているのを見ていたら、楽しそうだったので」
「できないの?」
「できなくはありませんよ」
「えっ!?」
ミオだけでなく、咲子も驚いた。
「どうやって?」
「黄龍様にお願いすれば、一日くらいなら、人間の方にも普通に見える姿にしていただくことはできます」
「普通に見える姿?」
「人間の姿です」
「そんなことできるんだ!」
「はい」
咲子が聞く。
「天女だけ?」
「いえ。ほかの妖怪でも、黄龍様のお力をお借りすれば、人間の姿をいただいて下界へ降りることはできますよ」
「じゃあ今日そうすればよかったじゃん!」
ミオが言った。
「天女も一緒に売れたのに」
「それが……」
天女が困ったように笑う。
「何?」
「一人それを許してしまいますと、少々いろいろと大変になる方がいらっしゃいまして」
「大変になる人?」
「はい」
「誰?」
天女は答えない。
「…………」
ミオが咲子を見る。
咲子もミオを見る。
二人とも少し考えた。
そして、ほとんど同時に一人の姿を思い浮かべる。
「……朱雀?」
ミオが言った。
天女はにこりと笑った。
「私は何も言っていませんよ」
「言ってるようなものじゃん」
咲子が呆れる。
「絶対そうじゃん!」
「私は何も言っていません」
「二回言った!」
◇
「でもさ」
ミオが少し考える。
「天女だけなら駄目なの?」
「駄目というわけではありません」
「じゃあ次は――」
「ミオ」
咲子が止めた。
「何?」
「今、天女だけ人間の姿にしたら大変になるって話したばっかりでしょ」
「あ」
「忘れるの早すぎ」
「でも、一緒に店やったら楽しそうじゃん」
「それは分かるけど」
天女が笑う。
「私も、いつかできたら嬉しいです」
「じゃあ、いつかね」
「はい」
「朱雀が暴走しない方法考えてから」
「私は朱雀様とは言っていませんよ」
「もう遅いよ!」
三人が笑った。
初めてのバザーは終わった。
けれど、そこでできたお金を何に使うのか。
そして、いつか妖怪自身が人間の姿で店に立つことがあるのか。
今日始まったことには、まだ続きがありそうだった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




