追加の商品を届けたい!
追加の商品を届けたい!
「ただいま!」
「戻りました!」
ミオと咲子が店へ戻ると、ゴンさんが二人を見る。
「ちゃんと戻ってきたな」
「当たり前でしょ!」
「誰かさんがこの前遅刻したからな」
「まだ言う!?」
「今回は咲子がついてたからな」
「私、一人だと戻ってこないみたいじゃん!」
「違うのか?」
「違う!」
奥さんが二人のやり取りを見て笑いながら、売上の記録を差し出した。
「はい。留守の間の分」
「売れたの?」
「何個かね」
「ほんと!?」
ミオがすぐに記録を覗き込む。
「これと……これも?」
「そうよ」
「結構売れてる!」
「だから声大きいって」
「あ、ごめん」
咲子も机の上を確認する。
「店番、大丈夫でした?」
「会計はね」
奥さんが答えた。
「でも、商品のことを聞かれると困ったわ」
「色違いはあるのかとか、何が違うのかとかな」
ゴンさんも続ける。
「ああ……」
ミオと咲子が顔を見合わせた。
「私たちも最初困った」
「そうだよね」
「朝からよくやってたな」
ゴンさんが何気なく言った。
「え?」
ミオが振り返る。
「今、褒めた?」
「褒めてない」
「絶対褒めた!」
「気のせいだ」
「咲子、聞いた!?」
「聞いた」
「忘れろ」
「無理!」
「何でそこだけ二人とも息が合うんだ」
ゴンさんが呆れたように言うと、奥さんが隣で笑った。
「ちゃんと褒めてあげればいいのに」
「だから褒めてない」
「まだ言う!」
朝から初めての店番を続けてきた二人にとっては、ほんの一言でも少し嬉しい評価だった。
◇
「……あれ?」
咲子が机の一角を見て、少し表情を変えた。
「どうしたの?」
「こっち、こんなに少なかったっけ?」
午前中によく売れていた商品の一角だった。
休憩へ出る前から減ってはいたが、今見るとさらに隙間が広がっている。
ミオも残りを確認した。
「ほんとだ」
「こっちは?」
「あと少し」
「こっちもだ」
二人は売上記録を見る。
自分たちが休んでいる間にも、同じような商品がいくつか売れていた。
「午後までもつかな」
「微妙かも」
ゴンさんが商品を見る。
「売り切れたら売り切れたでいいんじゃないのか?」
「それでもいいんだけど……」
ミオは残っている商品を見る。
「まだお昼だし」
「午後もお客さん来るだろうしね」
咲子も頷いた。
「追加できるなら、少しくらい増やしておいた方がいいかも」
「でも、まだあるの?」
「それなんだよね」
二人が考えていると、少し離れたところから天女が戻ってきた。
「あっ、皆さん戻っていたんですね!」
「天女こそ、またどこ行ってたの?」
「あちらのお店を少し」
「ほんとに全部見る気だ……」
◇
「ねえ、天女」
「はい?」
ミオは残り少なくなった商品の一つを手に取った。
「こういうのって、まだある?」
「こういうの?」
「うん。まったく同じじゃなくてもいいんだけど」
咲子も別の商品を手にする。
「こっちみたいなのも、午前中によく売れたの」
天女は二人が持っている商品を順番に見る。
「こちらと、こちらですか」
「そう」
「さっき話した、よく売れたやつ」
「ああ!」
天女が納得する。
「先ほどおっしゃっていた、細かく作られている方ですね」
「そうそう!」
天女は二つの商品を見比べた。
「こちらとこちらでは、値札の数字も違いますね」
「うん。値段も違うよ」
「やはり見ただけでは、どちらがどのくらいの価値なのか分かりません」
「まあ、天女は人間のお金使ったことないもんね」
「はい」
天女は少し考えてから聞いた。
「人間の方は、商品を見ただけで値段が分かるのですか?」
「いや、私たちも値札なかったら正確には分かんないよ!」
「そうなのですか?」
「そうだよ!」
天女は少し安心したような顔をした。
「よかったです」
「何が?」
「私だけ分からないのかと思いました」
「そこは大丈夫」
咲子が笑う。
「それより、こういう感じの商品ってまだ残ってる?」
「あると思います」
「ほんと?」
「はい。全部こちらへ持ってきたわけではありませんから」
ミオの顔が明るくなる。
「じゃあ、追加できる?」
「確認してみます」
「お願い!」
◇
「でも、どうやって伝えよう」
ミオが言った。
「何をです?」
「追加してほしい商品」
「値段で言っても、どれがその値段なのか分からないでしょ?」
咲子が聞く。
「数字は分かります!」
「じゃあ、向こうにある商品の中から、同じ値段のを選べる?」
「…………分かりません」
「だよね」
三人で商品を見る。
「じゃあ、これ持ってって見せる?」
ミオが言う。
「売り物を?」
「それは駄目か」
「形を覚えれば大丈夫ですよ」
天女が商品を手に取り、よく見る。
「このくらいの大きさで……」
隣の商品も確認する。
「こちらは少し細かく作られていますね」
「そう。こういう感じの」
「同じものでなくてもいいんですよね?」
「うん。似た感じので大丈夫」
咲子も念を押す。
「簡単な作りの小さいのは、まだたくさん残ってるから、そっちは今はいらないよ」
「分かりました」
天女はもう一度、必要な商品の特徴を確認した。
値段ではなく、形や大きさ、作りの違いで覚えていく。
「これなら大丈夫です!」
「お願いします!」
◇
しばらくして。
「追加の品ですか?」
「はい」
話を受けた妖怪が確認する。
「今日持っていった中で、少し細かく作られた、このくらいの大きさの品がよく選ばれているそうです」
「なるほど」
「まったく同じものでなくても、似たものならよいとのことです」
「それなら、まだいくつかあったはずですよ」
保管してある品を確認する。
「これは?」
「近いですね」
「こちらもよさそうです」
「では、この辺りを追加しましょうか」
「お願いします」
何の問題もない話だった。
すでにある品の中から、よく売れているものと似た品を選ぶ。
認識資格を持つ者が、それを下界へ届ける。
それだけで終わるはずだった。
「何!?」
大きな声が響いた。
執事がゆっくりと振り返る。
そこには、目を輝かせた朱雀が立っていた。
「今、下界へ届けると言ったか?」
「朱雀様」
「追加の品を運ぶのだな?」
「そうですが」
朱雀の顔が明るくなる。
「ならば!」
胸を張る。
「我が行こう!」
「駄目です」
「なぜだ!」
即答だった。
◇
「待て! 今回は遊びではないぞ!」
「分かっています」
「荷物運びだ!」
「分かっています」
「立派な仕事だ!」
「分かっています」
「ならばなぜ駄目なのだ!」
「朱雀様に頼む必要がないからです」
「今頼めばよい!」
「頼みません」
「なぜだ!」
「認識資格を持つ方にお願いすれば済みます」
「我の方が速い!」
「速さを競っておりません」
「たくさん持てる!」
「量も競っておりません」
「すぐ届けて、すぐ戻る!」
「前にも似たようなことを聞いた気がしますね」
「今回は本当に戻る!」
「今回は、ですか」
「言葉のあやだ!」
執事は深くため息をついた。
朱雀にとっては、待ちに待った「下界へ行く正当な理由」を見つけたつもりなのだろう。
しかし、執事から見れば何も変わっていない。
「とにかく駄目です」
「納得できぬ!」
◇
「何の騒ぎだ」
そこへ白虎がやってきた。
「白虎!」
朱雀がすぐに振り返る。
「ちょうどよい! 聞いてくれ!」
「嫌な予感しかしないが」
「下界から補充の要請が来た!」
「そうか」
「我が届けると言っておるのだ!」
「そして止められているのか」
「なぜ分かった!」
「お前だからだ」
「どういう意味だ!」
白虎は追加の商品を見る。
「これを運ぶだけなのか?」
「そうだ!」
「なら、別に問題ないのではないか?」
「白虎様!」
執事の声が響いた。
「また話をややこしくしないでください!」
「ほら!」
朱雀が白虎を指さす。
「白虎もこう言っておる!」
「我は荷物を運ぶだけなら、と言ったのだ」
「同じことだ!」
「同じではない」
「では一緒に行こう!」
「なぜそうなる」
「二人ならもっと運べる!」
「量の問題ではありません!」
執事が即座に割って入った。
◇
「これは任務だ!」
「違います」
「仕事だ!」
「頼まれていません」
「人助けだ!」
「妖怪の品物を補充するだけです」
「ならば妖怪助けだ!」
「言い換えても駄目です」
「執事!」
「駄目です」
「まだ何も言っておらぬ!」
「ここまで散々おっしゃいました」
「…………」
白虎が横で小さく笑った。
「笑うな!」
「笑っておらぬ」
「絶対に笑った!」
補充の商品は準備できている。
それを運ぶ者も、本来ならすぐに決まる。
問題があるとすれば一つだけだった。
「我が持っていく!」
「駄目です!」
「すぐ戻る!」
「駄目です!」
「見るだけだ!」
「荷物を届ける話はどこへ行ったのですか!」
「…………」
朱雀が止まる。
執事が目を細めた。
「やはりバザーを見るつもりだったのですね」
「違う!」
「何が違うのです?」
「その……届けたついでに少しくらい……」
「駄目です」
「まだ最後まで言っておらぬ!」
午後のバザーが始まろうとしている頃。
上界では、追加の商品よりも厄介なものを下界へ出さないための攻防が始まっていた。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




