妖怪たちもバザーへ!
妖怪たちもバザーへ!
「ありがとうございました!」
ミオが商品を渡すと、客は笑顔で店を離れていった。
「今ので何個目?」
「ちょっと待って」
咲子が売上を確認する。
最初の一個が売れたときには二人とも大騒ぎだったが、それから少しずつ商品が動き始め、会計にもだいぶ慣れてきた。
「さっきより落ち着いてできたよね」
「最初が慌てすぎだったんだよ」
「咲子だって慌ててたじゃん」
「ミオほどじゃない」
「またそれ!」
ミオが笑った。
最初は客が店の前で足を止めるだけで緊張していた。商品を手に取られれば二人で視線を送り、値札を見られれば「高かったかな」と不安になっていた。
けれど、一つ売れ、二つ売れ、何度か会計を繰り返すうちに、少しずつ周囲を見る余裕も出てきた。
そんなときだった。
咲子が何かに気づいたように、少し離れたところへ目を向ける。
「あ」
「何?」
「来てるよ」
「誰が?」
「妖怪たち」
「え?」
ミオも同じ方向を見る。
しかし、そこにはバザーを楽しむ人たちしか見えない。
「どこ?」
「そこにもいるし、向こうにも。結構いるよ」
「全然見えない」
「カチューシャ持ってきてないの?」
「あるよ」
「じゃあつければ?」
「あ、そっか」
ミオは持ってきていたカチューシャを取り出し、頭につけた。
もう一度、同じ場所を見る。
「……うわ」
さっきまで何も見えなかった場所に、何人もの妖怪の姿が現れた。
「結構いる!」
「でしょ?」
「いつからいたの?」
「さあ。私も今気づいた」
ミオは改めて会場を見回す。
自分たちの店の近くで商品を気にしている者もいれば、人間たちと同じように別の出店を見て回っている者もいる。
少し離れたところでは、人間が商品を手に取るたびに、落ち着かない様子で覗き込んでいる妖怪もいた。
「あの子、ずっとこっち見てる」
「自分たちに関係するのが売れるか気になるんじゃない?」
「そっか」
商品を手に取った客が元へ戻す。
近くで見ていた妖怪が、分かりやすく肩を落とした。
「……すごい落ち込んでる」
「売れなかったからじゃない?」
「私たちと同じじゃん」
「さっきまでのミオとそっくり」
「私、あんなだった?」
「もっとすごかった」
「うそ!」
「ほんと」
今度は別の客が商品へ手を伸ばした。
妖怪が期待するように身を乗り出す。
しかし客は値札を見ただけで離れていった。
「あ」
また肩を落とす。
「なんか応援したくなってきた」
「自分たちのお店なんだから、まず自分たちを応援しなよ」
「それもそうか」
ミオは笑った。
◇
改めて周囲を見ると、妖怪たちの過ごし方もさまざまだった。
全員がミオと咲子の店を見に来たわけではない。
バザーそのものに興味を持っている者は、いろいろな店を覗いている。
せっかく下界へ来たのだからと、バザーとは別の場所へ出かけている者もいるらしい。
人間の世界へ来ることができる妖怪たちは、それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
「なんか不思議」
ミオが呟く。
「何が?」
「さっきまで普通にバザーだと思ってたのに、カチューシャつけたら急に妖怪だらけになった」
「私は最初から見えてるから分かんない」
「こんな感じなんだ」
人間の客たちの間を、妖怪たちも歩いている。
同じ商品を覗き込み、人間の反応を気にしたり、別の店へ行ったりしている。
ミオには少しだけ、別のバザーへ来たようにも見えた。
「あれ?」
ふと気づいて、周囲を見回す。
「天女は?」
「さっきあっちにいたよ」
「うちの店のところ?」
「違う。向こうのお店」
「そっち!?」
◇
「あっ、ミオさん!」
少し離れた店の前で、天女がこちらへ手を振った。
ミオと咲子の店の商品ではなく、別の出店に並んだ品物を夢中で眺めている。
「すごいですよ! いろんなものがあります!」
「バザーだからね」
「こっちにはこんなのもあります! 向こうには食べ物もありましたよ!」
「全部見て回ってるの?」
「はい!」
迷いのない返事だった。
「楽しいです!」
「それは見れば分かる」
咲子が笑う。
天女はすっかりバザーそのものを楽しんでいた。
「自分たちの方は気にならないの?」
ミオが聞く。
「気になりますよ!」
「ほんと?」
「もちろんです! 売れました?」
「売れたよ」
「本当ですか!」
天女の顔が一気に明るくなる。
「よかったです!」
「最初の一個売れたとき、すごかったんだから」
咲子が笑う。
「ミオなんて――」
「咲子!」
「何?」
「それは言わなくていい!」
「何があったんです?」
天女が興味津々で聞いてくる。
「何もない!」
「絶対何かありましたよね?」
「ないって!」
「売れたのが嬉しくて、しばらく――」
「咲子!」
天女が楽しそうに笑う。
「でも、売れたんですね」
「うん」
「人間の方が選んでくださったんですね」
「そうだよ」
天女は嬉しそうにミオたちの店を見る。
「よかったです」
今度はさっきより少し穏やかな声だった。
自分たちに関係する品を、人間が実際に手に取って選んでくれた。
そのこと自体が、天女には嬉しいらしい。
しかし。
「あっ」
「今度は何?」
「あれ、気になりますね」
もう別の商品へ目を奪われていた。
ミオが笑う。
「行ってくれば?」
「いいんですか?」
「別に私たちに許可取らなくてもいいでしょ」
「では、ちょっと見てきます!」
天女は嬉しそうに歩いていった。
「切り替え早いなあ」
「ほんとにバザー楽しんでるね」
◇
ミオは接客へ戻りながらも、ときどき天女の方を見ていた。
さっきは小物を見ていた。
次に見たときには別の店にいる。
その次には、また違う場所で何かを覗き込んでいた。
「……何か買ってあげようかな」
「待って」
咲子が即座に止めた。
「何?」
「私たち今、何しに来てるの?」
「バザー」
「何をしに?」
「売りに」
「なのに、もう買う方の話してるよね?」
「ちょっとくらいいいじゃん」
「まだ始まったばっかり!」
「でも天女、ずっといろいろ見てるし。何か欲しいのかなって」
「どれ?」
「え?」
「天女が欲しそうにしてるの、どれ?」
ミオが天女を見る。
「……さっき見てたやつ」
「もう見てないよ」
「あ」
今は別の店にいる。
「じゃあ、今見てるやつ?」
「ちょっと待って」
咲子が天女を見ている。
しばらくすると、天女はそこからも離れ、さらに別の店へ向かった。
「ほら」
「……ほんとだ」
「たぶん何か一つが欲しいっていうより、全部見たいんじゃない?」
「確かに」
天女は、何かを買えなくて残念そうにしているようには見えない。
次から次へと珍しい物を見つけ、それだけで楽しそうにしている。
「絶対あれ、買い物したいんじゃなくて、バザー自体が楽しいんだ」
「たぶんね」
「じゃあ今はいいか」
「まず自分たちのお店!」
「はーい」
「売上全部使わないでよ」
「使わないって!」
「ミオならやりそう」
「信用なさすぎ!」
二人が笑っていると、ちょうど新しい客が店の前で足を止めた。
ミオはすぐに表情を切り替える。
「いらっしゃいませ!」
咲子も隣に立った。
カチューシャをつけたままのミオには、人間の客の少し後ろから、商品を気にして覗き込んでいる妖怪の姿も見えている。
さっきまでとは少し違う景色だった。
人間もいる。
妖怪もいる。
それぞれが、それぞれの理由でバザーを楽しんでいる。
ミオは少しだけ笑った。
「どうぞ、ゆっくり見ていってください!」
バザーはまだ、始まったばかりだった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




