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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
セミスピーカー編 1

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第5話「忘れられない妖怪」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、最初の当たりが忘れ物小僧だったら」


第5話「忘れられない妖怪」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


それから。


忘れ物小僧は、少しだけ慎重になった。


「これ、触っていいですか?」


「ダメ!」


「これは?」


「それもダメ!」


「じゃあ、これは?」


「何それ?」


「テレビのリモコンです」


「絶対ダメ! お母さん怒る!」


忘れ物小僧が首を傾げる。


「便利だと思うんですけど」


「なくしたら困るものはダメ!」


「なくなるわけではないですよ?」


「忘れちゃったら同じでしょ!」


「なるほど」


少し離れたところで聞いていたぬらりひょんが、感心したように頷いた。


「ほう。少しは学んだようじゃな」


「ぼくが?」


則人が自分を指さす。


「二人ともじゃ」


「ぼくも!?」


「お前が一番じゃ」


「えー!」


忘れ物小僧と則人が顔を見合わせる。


「ぼくたち、そんなに危なかった?」


「かなりな」


即答だった。


「忘れ物小僧」


「はい」


「お前もじゃ。何でもかんでも触るでない」


「はい」


「則人」


「はい」


「面白そうだからという理由で、何でも試すでない」


「…………はい」


「今の間はなんじゃ」


「ちゃんと考えてた!」


「何をじゃ!」


忘れ物小僧が、くすっと笑った。



しばらくして。


則人は部屋の隅に置かれた、大きなKIDのバッグを見つめていた。


「じゃあ、これは?」


忘れ物小僧もバッグを見る。


「KIDのバッグですね」


「これなら、みんなから忘れられてた方が便利かも」


「前に誰かぶつかってましたよ」


「今度はちゃんと持ってる!」


則人はバッグの持ち手をぎゅっと握った。


「置きっぱなしにしない!」


「なるほど」


「持ってれば、誰かがぶつかりそうになっても避けられるし」


「それなら前より安全ですね」


ぬらりひょんが横から口を挟む。


「人の邪魔になるところへ置きっぱなしにせんことじゃ」


「分かってるって!」


「本当に分かっとるのか?」


「分かってる!」


前にも似たようなやり取りをした気がする。


だが今回は、則人もちゃんと考えていた。


KIDの着ぐるみが入ったバッグは大きい。


児童館へ持っていけば、どうしても目立つ。


かといって。


どこかへ置いてくるわけにもいかない。


なら。


バッグそのものを消すのではなく。


周囲の人が、気に留めにくくなるだけなら。


「これ、いい使い方じゃない?」


忘れ物小僧は少し考えてから頷いた。


「いいと思います」


「じゃあ、お願い!」


「はい」


忘れ物小僧がバッグへ手を置く。


ぺた。


見た目は。


何も変わらない。


大きさも。


重さも。


そこに存在していることも。


何ひとつ変わっていない。


「これで?」


「忘れられやすくなりました」


「おお……!」


則人がバッグを持ち上げる。


「これなら児童館でも目立たない!」


「便利ですね」


「変身する時も困らない!」


「着替えですよね?」


「変身!」


「着替えです」


「変身!」


「着替え」


「ぬらりひょん!」


則人が助けを求める。


ぬらりひょんは即座に顔をそらした。


「わしを巻き込むな」


「どっちだと思う?」


「知らん」


「変身だよね?」


「自分で着ぐるみを着とるじゃろうが」


「でも変身!」


「着替えですね」


「二人ともひどい!」


忘れ物小僧が笑った。


則人も。


少し遅れて笑った。



その日の帰り道。


大きなKIDのバッグを持った則人が歩いていると。


向こうから、さとるがやってきた。


「よっ」


「よっ」


二人は軽く手を上げる。


それだけだった。


前よりは話す。


顔を合わせれば挨拶もする。


でも。


まだ毎日一緒に帰るほどの仲ではない。


二人は、そのまますれ違った。


一歩。


二歩。


三歩。


すると。


「ねえ」


さとるが立ち止まった。


則人も振り返る。


「なに?」


「この前の妖怪」


「忘れ物小僧?」


「うん」


さとるが、則人の周りを見る。


「まだいる?」


則人の隣で。


忘れ物小僧が目を丸くした。


「いるよ」


「そこ?」


「そこ」


則人が隣を指さす。


さとるは目を細めた。


「…………」


じっと見る。


何もいない。


ように見える。


それでも。


前とは違った。


ぼんやりと。


本当に、ぼんやりと。


何かがいる。


小さな影。


前に見た時よりも。


ほんの少しだけ輪郭がはっきりしている。


「…………」


さとるが一歩近づいた。


「どう?」


則人が聞く。


「前より……」


「うん!」


「分かる気がする」


「ほんと!?」


則人が嬉しそうに声を上げる。


忘れ物小僧は自分を指さした。


「ぼくが見えてるんですか?」


さとるは反応しない。


則人が答える。


「声はまだ聞こえてないみたい」


「そうですか……」


忘れ物小僧は少し残念そうにする。


すると。


さとるが言った。


「この前」


「ん?」


「絵のこと」


則人が黙る。


さとるは。


ぼんやりと見える小さな影へ顔を向けた。


「ありがと」


「…………」


忘れ物小僧が固まった。


自分へ向けられた言葉だと気づくまで。


少し時間がかかった。


やがて。


忘れ物小僧が、小さく笑う。


「どういたしまして」


さとるが、わずかに眉を動かした。


「……今、何か言った?」


「えっ?」


則人が身を乗り出す。


「聞こえた!?」


「分かんない」


「えー!」


「なんか……聞こえた気がしただけ」


則人は忘れ物小僧を見る。


「『どういたしまして』だって」


「そっか」


さとるは。


ぼんやりした影をもう一度見る。


そして。


少しだけ笑った。


「じゃあね」


「うん。またね」


二人は、今度こそ反対方向へ歩き始めた。



忘れ物小僧は。


しばらく、さとるの背中を見つめていた。


「どうしたの?」


則人が聞く。


「ぼく」


「うん」


「忘れ物小僧なのに」


「うん?」


忘れ物小僧は。


遠ざかっていくさとるを見る。


「忘れられなかったみたいです」


則人は少し考えてから。


笑った。


「よかったじゃん」


「…………」


忘れ物小僧も。


小さく笑う。


「はい」


二人は歩き出した。


則人の手には、大きなKIDのバッグ。


道ですれ違う人たちは。


それを一度見ても。


すぐに気にしなくなる。


けれど。


則人は忘れない。


バッグがそこにあることを。


忘れ物小僧が隣にいることを。


そして。


見てもらえないこと。


気づいてもらえないこと。


忘れられてしまうことが。


思っていたより、ずっと寂しいことも。


「ねえ、忘れ物小僧」


「はい?」


「これから触る時は、ちゃんと一緒に考えようね」


「何をです?」


「忘れられても困らないものかどうか!」


「はい」


「分かんなかったら、ぬらりひょんに聞こう!」


「結局そこなんですね」


「だって詳しいもん!」


後ろから。


ぬらりひょんの声が飛んできた。


「最初から自分で考えんか!」


「考えてるよー!」


「なら、わしに丸投げするでない!」


忘れ物小僧が笑う。


則人も笑った。


忘れ物小僧は。


人から何かを忘れられやすくする妖怪だった。


けれど。


少なくとも今日。


一人の少年は。


その小さな妖怪のことを覚えていた。


そして。


もう一人の少年も。


まだぼんやりとしか見えないその姿を。


少しずつ。


覚え始めていた。


――Another Story 完

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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