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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
セミスピーカー編 1

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4/23

第4話「忘れられた絵」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、最初の当たりが忘れ物小僧だったら」


第4話「忘れられた絵」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


数日後。


児童館で。


さとるは、一人で絵を描いていた。


机の上には。


色鉛筆。


消しゴム。


そして。


一枚の画用紙。


「…………」


さとるは何度も画用紙と見本の写真を見比べながら。


細い線を重ねていく。


少し離れた場所では。


則人がほかの子どもたちと遊んでいた。


さとると則人は。


前より話すようにはなった。


廊下ですれ違えば。


「よっ」


「……よっ」


くらいの挨拶はする。


でも。


毎日一緒に遊ぶような友達になったわけではない。


だから今日も。


さとるは一人で絵を描いていた。



「…………できた」


さとるが鉛筆を置いた。


画用紙の中にいるのは。


一匹のセミ。


大きなスピーカーなんてついていない。


誰かを驚かせるほど大きな声も出さない。


木の幹にとまって。


夏の日差しの中で鳴いている。


普通のセミだった。


「…………」


さとるは少しだけ満足そうに絵を見る。


特に。


羽。


細い線を何本も重ねて。


透けて見えるように描いた。


ここが一番大変だった。


だから。


誰かに見てほしかった。


さとるは絵を持って立ち上がった。


「ねえ」


児童館の職員のところへ行く。


「うん?」


職員が振り返る。


「これ」


さとるが絵を差し出した。


「あ、絵描いてたんだね」


「うん」


職員が画用紙へ目を向ける。


「…………」


さとるは待つ。


何て言ってくれるだろう。


羽に気づくかな。


すると。


「あれ?」


職員が首を傾げた。


「…………?」


「私、何しようとしてたんだっけ」


さとるの顔が止まる。


「……絵」


「え?」


「ぼくの絵」


「ああ、そうだった」


職員がもう一度、画用紙を見る。


「…………」


けれど。


「あ、ごめんね、さとる。あとで見せてね」


「え?」


別のところから声が飛んできた。


「せんせーい!」


「はいはい、今行くよ」


職員は、そのまま歩いていった。


「…………」


さとるは。


持ち上げていた絵を。


ゆっくり下ろした。



少しして。


さとるは、近くにいた子へ声をかけた。


「ねえ」


「ん?」


「これ――」


絵を見せる。


「あ、セミ?」


「うん」


「へえ」


その子は、一度は画用紙を見る。


さとるが少しだけ期待する。


「羽のところ――」


「あ!」


その子が突然、別の方を向いた。


「さっきの続きやろう!」


友達のところへ行こうとして。


ふと止まる。


「……あれ?」


さとるを見る。


「ごめん。何だった?」


「…………」


さとるは。


何も言わずに絵を胸へ抱えた。


「もういい」


「そう?」


「うん」


その子は走っていった。


「…………」


残されたさとるは。


画用紙を見る。


せっかく描いたのに。


見てほしいのに。


見てもらえない。


一度は見てくれても。


すぐに忘れられる。


「…………」


胸の奥に。


嫌な感じが広がる。


少し前にも。


こんな気持ちになった。


話を聞いてほしいのに。


途中で終わってしまう。


「あとでね」と言われて。


その「あと」がなかなか来なくて。


だんだん。


自分の話なんて。


誰も聞きたくないんじゃないかと思ってしまった。


「…………」


さとるは絵を伏せようとした。


その時。


「さとる君」


声がした。


顔を上げる。


則人が立っていた。


「どうしたの?」


「別に」


「その絵なに?」


「…………」


「見せて」


「いい」


「なんで?」


「いいから」


「でも見たい」


「…………」


さとるが則人を見る。


則人は。


本当に見たそうな顔をしていた。


「…………」


少し迷って。


さとるは画用紙を差し出した。


則人が受け取る。


「おお!」


「…………」


「セミだ!」


「うん」


「さとる君が描いたの?」


「そう」


則人は。


絵を近くで見た。


少し離して見た。


また近づける。


「うまいじゃん!」


「…………ほんと?」


「うん!」


則人が羽を指さす。


「ここすごい!」


「羽?」


「うん! なんか、本物みたい!」


「…………」


さとるの目が少し大きくなる。


「そこ」


「うん?」


「頑張った」


「やっぱり!」


則人が嬉しそうに笑う。


「細い線いっぱいあるもん!」


「うん」


さとるの口元が。


ほんの少しだけ緩んだ。


「ありがと」


「うん!」


その時だった。



則人の後ろで。


忘れ物小僧が青ざめていた。


「…………あ」


「ん?」


則人が振り返る。


「どうしたの?」


「たぶん……」


忘れ物小僧が。


おそるおそる絵を指さした。


「ぼくです」


「何が?」


「さっき」


忘れ物小僧が、少し離れた机を見る。


「そこに触ったんです」


「うん」


「その時に」


「うん?」


「たぶん、その絵にも触りました」


「…………」


則人が絵を見る。


忘れ物小僧を見る。


もう一度。


絵を見る。


「じゃあ」


則人が目を丸くする。


「みんながこの絵を忘れちゃうのって……」


忘れ物小僧が。


しょんぼりとうつむいた。


「ぼくのせいです」


「…………」


さとるは二人の様子を見ている。


もちろん。


忘れ物小僧の姿は、まだはっきりとは見えていない。


則人が。


誰もいないところと話しているように見える。


「則人?」


「ちょっと待ってね!」


則人は忘れ物小僧へ向き直った。


「戻せる?」


「はい」


「じゃあ戻して」


「いいんですか?」


「うん」


忘れ物小僧が。


そっと画用紙へ触れた。


ふわっ。


目には見えない何かが。


絵からほどけていく。


「これで大丈夫です」


「ほんと?」


「たぶん」


「たぶん!?」


「大丈夫です!」


「今、たぶんって言ったじゃん!」


「大丈夫です!」


忘れ物小僧が強く言い切った。



しばらくして。


「さとる」


声がした。


さとるが振り返る。


さっきの職員が戻ってきていた。


「あ」


「その絵」


職員が笑う。


「まだ、ちゃんと見せてもらってなかったね」


「…………」


さとるは。


少しだけ驚いた顔をした。


「見る?」


「もちろん」


職員が絵を受け取る。


今度は。


すぐに目をそらさない。


じっくり見る。


「すごいね」


「…………」


「セミ、よく描けてる」


「ほんと?」


「うん」


そして。


羽のところで目を止めた。


「ここ、細かく描いたんだね」


「……うん」


「頑張った?」


「うん」


さとるが少しだけ胸を張る。


「そこ、一番頑張った」


「やっぱり」


職員は笑った。


「ちゃんと見て描いたんだね」


「うん」


「すごくいいと思うよ」


「…………」


さとるが。


照れくさそうに笑った。



少し離れたところで。


忘れ物小僧は、その様子をじっと見ていた。


「どうしたの?」


則人が聞く。


「…………」


忘れ物小僧は自分の手を見る。


「ぼくの力って」


「うん」


「人を困らせることもあるんですね」


「あるね」


則人はあっさり答えた。


忘れ物小僧が則人を見る。


「すぐ言いますね」


「だって、さっき困ってたじゃん」


「そうですけど……」


「でも」


則人は。


自分の大きなバッグを見る。


「便利なこともあるよね」


「あります」


「じゃあいいじゃん」


「え?」


忘れ物小僧が首を傾げる。


「便利な時に使って」


「はい」


「困る時は使わなければいいんだよ」


「…………」


忘れ物小僧は少し考える。


「どうやって見分けるんです?」


「え?」


「便利かどうか」


「…………」


今度は則人が止まった。


「使ってみないと分からないこともありますよ」


「…………」


「今日みたいに」


「…………」


則人は腕を組んだ。


少し考える。


そして。


「じゃあ」


「はい」


「一緒に考えよう!」


「…………え?」


「使う前に!」


則人が笑う。


「これ大丈夫かなーって」


忘れ物小僧は。


少し驚いた顔をした。


それから。


小さく笑う。


「はい」


「分かんなかったら、ぬらりひょんに聞けばいいし!」


「最後は人任せですか?」


「だって詳しいもん!」


その時。


少し離れた場所から。


さとるが二人の方を見ていた。



「……則人」


「なに?」


「また妖怪?」


「うん!」


則人が普通に答える。


さとるは。


則人の隣を見る。


「そこにいるの?」


「いるよ」


「…………」


さとるが目を細める。


何もいない。


ように見える。


でも。


「…………」


じっと。


じっと見る。


すると。


なんとなく。


本当に。


なんとなくだけれど。


小さな影があるような気がした。


「…………あ」


「見えた!?」


則人が嬉しそうに聞く。


「分かんない」


「えー!」


「でも」


さとるは、もう一度目を凝らす。


「何かいる……かも」


忘れ物小僧が自分を指さした。


「ぼくですか?」


「声はまだ聞こえてないみたい」


則人が言う。


忘れ物小僧が。


少し残念そうな顔をした。


さとるは。


ぼんやりした小さな影を見つめる。


「ねえ」


「なに?」


「さっきの絵」


「うん」


「戻してくれたの?」


則人が忘れ物小僧を見る。


忘れ物小僧は頷いた。


「そうだよ」


則人が答える。


「…………」


さとるは。


小さな影に向かって。


少しだけ頭を下げた。


「……ありがと」


「…………」


忘れ物小僧が目を丸くする。


まさか。


自分に言われるとは思っていなかったらしい。


しばらくして。


少し照れくさそうに笑った。


「どういたしまして」


「…………」


さとるが、少し首を傾げる。


「今……」


「え?」


「何か聞こえたような……」


「ほんと!?」


則人が身を乗り出す。


「分かんない」


「えー!」


「でも」


さとるは。


ぼんやりとした影を見る。


そして。


なぜか。


少し笑った。


忘れ物小僧も。


それを見て。


もう一度、笑った。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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