第1話 見えてないけど、いる
第1話 見えてないけど、いる
夕方。
さとるは一人で、いつもの道を歩いていた。
学校帰りでもない。特別な用事があったわけでもない。ただ、少し遠回りをして帰っているだけだった。
「…………?」
ふと、足が止まる。
道の端。
電柱のそば。
何もいない。
少なくとも、目には何も見えない。
「……なんだろ」
でも。
いる。
そんな気がした。
そこには実際、小さな妖怪が座っていた。
もちろん、さとるには見えていない。
妖怪の方は、さとるがこちらを見たことで首を傾げた。
「……なんじゃ?」
さとるは少しだけ目を細める。
「気のせいかな」
「まさか」
妖怪が立ち上がった。
「わしが見えておるのか?」
返事はない。
さとるには、その声も聞こえていない。
しばらく、人間と妖怪が互いに相手を気にしながら止まっていた。
「まあ、いいか」
さとるが歩き出そうとする。
そこで妖怪は考えた。
「待て」
試すように右へ移動する。
数歩。
さとるの目も、なんとなく右へ動いた。
「…………」
妖怪が止まる。
「見えておるではないか」
今度は左へ移動した。
さとるも、そちらを見る。
「やはり!」
妖怪がさとるの前へ回り込む。
さとるが足を止める。
「なんか……いる気がする」
「いるぞ!」
「でも、何も見えないんだよな」
「どっちじゃ!」
当然、その叫びも届かない。
さとるは少し考えてから、また歩き出した。
妖怪も気になって、ついていく。
さとるの右へ行けば、なんとなく右を見る。
左へ行けば、そちらへ目を向ける。
そして後ろへ回ると。
「…………」
さとるが振り返った。
「やっぱり、なんかいる」
「見えておる!」
「いや……見えてはないんだけど」
「では、なぜ分かる!」
妖怪の方が、だんだん混乱していた。
さとるはしばらく、その不思議な感覚を確かめながら歩く。
怖くはない。
嫌な感じもしない。
以前なら、もう少し気味が悪いと思ったかもしれない。
でも今は、則人や咲子の周りで、説明できないものがいることを何度か感じている。
だから。
「……まあ」
さとるが小さく呟いた。
「悪いものじゃないのかな」
「わしを何だと思っておる」
妖怪は少しむっとする。
それでも、さとるから離れようとはしなかった。
しばらくして、道が分かれるところまで来た。
さとるが立ち止まる。
「僕、こっちだから」
誰もいないように見える場所へ向かって言った。
「…………」
妖怪が固まった。
さとるは少しだけ手を振る。
「じゃあね」
「待て!」
さとるはそのまま歩き出した。
「おい!」
振り返らない。
「やっぱり見えておるではないか!」
届かない。
妖怪は一人、道の真ん中に残された。
「…………」
少し考える。
「いや」
もう一度考える。
「見えては……おらんのか?」
自信がなくなった。
少し離れたところで、さとるが一度だけ振り返った。
何もいない。
いつもの道。
電柱。
夕方の空。
それでも。
「……やっぱり、いた気がする」
さとるはそう呟いて、また歩き出した。
その背中を見送りながら、小さな妖怪もぽつりと言った。
「……なんじゃったんじゃ、あやつ」
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




