↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
アリア編1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/85

第三話 それは、私の強さ?

第三章 ANOTHER

第三話 それは、私の強さ?


 数日後。


 咲子は、また道場にいた。


「やっ!」


 拳を放つ。


 踏み込む。


 蹴る。


 受ける。


 怪人の身体にも、少しずつ慣れてきていた。


 最初は、自分でも持て余していた力だった。


 ほんの少し腕を振るだけで、人間だった頃とは比べものにならない速さが出る。


 一歩踏み込めば、以前なら到底届かなかった距離まで、一気に詰められる。


 最初の頃は、その力に身体の方が振り回されていた。


 けれど。


 何度も稽古を重ねるうちに。


 咲子は少しずつ、その力を自分の意思で扱えるようになっていた。


「…………」


 構えを解く。


「もう一回」


 目の前にいた男子が、少し困ったように笑った。


「また?」


「なによ」


「いや」


 男子は頭をかいた。


「やってもいいけどさ」


「だったら、やりましょう」


「…………」


「どうしたの?」


 男子は少しだけ言いにくそうにする。


「俺じゃなくてもよくないか?」


「え?」


「ほかの奴ともやれば?」


「…………」


 咲子が周囲を見る。


 近くにいた一人と目が合った。


 けれど。


 その男子は、すぐに視線をそらした。


「俺はいいよ」


「どうして?」


「どうしてって……」


 苦笑する。


「勝てるわけないだろ」


「…………」


 別の一人も手を振った。


「俺も遠慮する」


「え?」


「昨日も見てたけど、あれは無理だって」


「…………」


「咲子、強すぎるんだよ」


 強すぎる。


 少し前までなら。


 その言葉を聞くだけで、胸が弾んだ。


 もう誰も。


『女の子だから』


 とは言わない。


 それどころか。


 今では、自分の方が圧倒的に強い。


 ずっと欲しかったはずの言葉。


 ずっとなりたかったはずの自分。


 なのに。


「…………」


 今日は。


 その言葉が、少しだけ違って聞こえた。


     ◇


 結局。


 また。


 あの男子が相手をしてくれることになった。


「ごめんね」


「何が?」


「何回も」


「別にいいよ」


 男子が構える。


「俺だって練習にはなるし」


「…………」


 咲子も構えた。


「始め!」


 男子が動く。


 咲子も動く。


 一発目。


 かわす。


 二発目。


 受ける。


 三発目。


 腕を払う。


 男子の体勢が崩れる。


 そこへ。


 咲子が踏み込む。


「…………!」


 拳。


 寸止め。


「そこまで!」


「…………」


 また。


 勝った。


「もう一回」


 咲子が言う。


 男子が息を整えながら。


「いいけど」


 そして。


 二回目。


 また勝った。


 三回目。


 また。


 四回目。


 また。


「…………」


 咲子は。


 ほとんど息を切らしていなかった。


 男子の方は。


 肩で大きく呼吸している。


「もう一回」


 咲子が言った。


「…………」


 男子が答えない。


「どうしたの?」


「咲子」


「なに?」


「今日は、もういいだろ」


「…………」


「俺、さすがに疲れた」


「あ……」


「明日ならまたやるよ」


「…………」


 咲子は。


 小さく頷いた。


「うん」


     ◇


 次の日。


「組手、お願いしていい?」


 咲子が声をかける。


「俺?」


「うん」


「いや……」


 相手は苦笑した。


「俺じゃ相手にならないだろ」


「そんなこと」


「いやいや」


 手を振る。


「昨日も見たって」


「…………」


「やっても、どうせ俺が負けるし」


 その次。


「ごめん。今日はちょっと」


 また次。


「俺より、あいつの方がいいんじゃない?」


 そして。


「咲子とやるのは、ちょっとなあ……」


「…………」


 誰も。


 咲子を嫌っているわけではない。


 咲子が来れば普通に話してくれる。


 笑ってもくれる。


 稽古だって一緒にする。


 けれど。


 組手だけは。


 少しずつ。


 避けられるようになっていた。


「…………」


 強くなりたかった。


 誰にも負けないくらい。


 強く。


 そのはずだった。


 なのに。


 強くなったら。


 戦ってくれる相手がいなくなった。


     ◇


「咲子」


「…………」


「咲子?」


「え?」


 呼ばれて顔を上げる。


 あの男子だった。


「ぼーっとしてたぞ」


「ごめん」


「組手する?」


「…………」


 男子の方から言ってくれた。


 本当なら。


 嬉しいはずだった。


「……うん」


 二人が向かい合う。


 礼。


 構える。


「始め!」


 男子が踏み込む。


 咲子も動く。


「…………」


 今までと同じ。


 見える。


 遅い。


 届かない。


 そして。


 咲子が踏み込めば。


 簡単に届く。


「そこまで!」


 一回目。


 咲子。


「そこまで!」


 二回目。


 咲子。


「そこまで!」


 三回目。


 咲子。


「…………」


 男子が大きく息を吐いた。


「やっぱ無理だな」


「…………」


「強すぎるよ、お前」


「…………」


 また。


 その言葉。


「もう一回」


 咲子が言った。


「え?」


「もう一回やろう」


「…………」


 男子は少し迷った。


「お願い」


「……分かった」


     ◇


「始め!」


 四回目。


 咲子が動く。


 男子も動く。


 今度は。


 咲子の方から、少しだけ攻め方を変えた。


 簡単に終わらせたくなかった。


 すぐには踏み込まない。


 わざと距離を取る。


 相手の攻撃を待つ。


「…………」


 男子が拳を出す。


 かわす。


 もう一度。


 かわす。


 蹴り。


 受ける。


 それでも。


 痛くない。


「…………」


 もっと。


 もっと本気で。


 もっと速く。


 もっと。


「ねえ」


「?」


「もっと来てよ」


「は?」


「もっと本気で来て」


「本気だよ」


「もっと!」


 咲子の声が大きくなる。


「もっとできるでしょう!?」


「…………」


 男子の表情が変わった。


「咲子」


「なに?」


「もうやめよう」


「え?」


「今日の組手」


「なんで?」


「…………」


「まだ終わってないじゃない」


「もういいよ」


「よくない!」


 思わず。


 声が強くなる。


「私、ちゃんとやってるじゃない!」


「分かってるよ」


「だったら!」


「分かってるけど!」


 男子の声も大きくなった。


「勝てないんだよ!」


「…………」


 道場が静かになる。


「何回やっても」


 男子が言う。


「何をしても」


「…………」


「今のお前には勝てない」


「そんなの、やってみなきゃ――」


「やっただろ!」


「…………」


「何回も!」


 咲子は黙る。


「俺だって考えてる」


「…………」


「どうやったら当たるか」


「どうやったら崩せるか」


「どうやったら一本取れるか」


「…………」


「でも」


 男子が。


 咲子の身体を見る。


「無理なんだよ」


「…………」


「速さも」


「力も」


「身体の丈夫さも」


「全部違いすぎる」


「…………」


 咲子の拳が。


 ゆっくりと握られる。


「じゃあ」


 声が震えた。


「私が強くなったから?」


「…………」


「強くなったから、もう相手にしてくれないの?」


「違う」


「何が違うの?」


「そうじゃなくて」


 男子は。


 言葉を探した。


「咲子が強いとか」


「俺が弱いとか」


「そういう話じゃなくて……」


「じゃあ何?」


「…………」


 男子が。


 咲子を見る。


 そして。


 言ってしまった。


「その身体が、強すぎるんだよ」


「…………」


 咲子が止まった。


     ◇


「その身体……?」


「あ……」


 男子も。


 言った直後に気づいた。


「咲子、違う。そういう意味じゃ――」


「じゃあ、どういう意味?」


「…………」


「私だって」


 咲子が拳を握る。


「ちゃんと考えてる」


「分かってる」


「相手の動きも見てる」


「分かってるよ」


「空手だって!」


 声が大きくなる。


「ずっとやってきた!」


「分かってるって!」


「だったら!」


 咲子は。


 自分の胸を指した。


「これは私でしょう!?」


「…………」


「今、動かしてるのは私!」


「戦ってるのも私!」


「考えてるのも私!」


「なのに!」


 言葉が止まる。


「…………」


 男子も。


 すぐには答えない。


 しばらくして。


「……そうだよ」


「…………」


「戦ってるのは咲子だ」


「…………」


「でも」


 男子は静かに続ける。


「その速さも」


「その力も」


「前のお前にはなかっただろ」


「…………」


 胸の奥に。


 何かが刺さった。


「じゃあ……」


 咲子の声が小さくなる。


「私がやってきた空手は?」


「それは咲子のものだろ」


「じゃあ!」


「でも、その身体の力まで全部そうなのかって言われたら」


「…………」


 男子は。


 答えを続けられなかった。


 咲子も。


 何も言えなかった。


     ◇


 その日の夜。


「…………」


 咲子は。


 一人で鏡の前に立っていた。


 そこに映っているのは。


 怪人の自分。


 蟻のような顔。


 蜂を思わせる腕。


 蝶の羽。


 大きな身体。


 強い身体。


「…………」


 拳を上げる。


 鏡の中の怪人も。


 同じように拳を上げる。


 これを動かしているのは。


 自分だ。


 技を選んでいるのも。


 相手を見ているのも。


 寸止めしているのも。


 全部。


 自分。


 なら。


 この強さも。


 自分のもの。


 そう思いたい。


「…………」


『その身体が、強すぎるんだよ』


 男子の言葉が蘇る。


「…………」


 もし。


 この身体じゃなかったら。


 昨日の組手は。


 どうなっていただろう。


 今日の組手は。


 もし。


 人間だった頃の身体なら。


 自分は。


 あの相手に。


 何回勝てただろう。


「…………」


 答えは。


 分かっていた。


 だからこそ。


 考えたくなかった。


 咲子は、もう一度拳を見る。


 これは。


 確かに自分の身体だ。


 今は。


 自分が動かしている。


 でも。


 ここにある力は。


 自分が何年も鍛えて手に入れたものではない。


 昨日より今日。


 今日より明日。


 そうやって積み上げてきたものでもない。


「…………」


 咲子は。


 鏡の中の自分へ。


 小さく問いかける。


「……ねえ」


 返事などない。


「これって」


 巨大な拳を見る。


「本当に……」


 言葉が。


 少しだけ震えた。


「私の強さなのかな」


 鏡の中では。


 怪人の咲子が。


 ただ。


 同じ拳を握っていた。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。