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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編3

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第2話「戻る前に」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、天狗がピコピコハンマーを投げ損ねたら」


第2話「戻る前に」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「今度は、お主が取りに来い」


 天狗は、ピコピコハンマーを握ったまま言った。


「えー!」


 則人が声を上げる。


「そこまで行くの?」


「そうじゃ」


「投げた方が早いじゃん」


「投げん!」


「なんで?」


「二度と失敗せんためじゃ!」


「やっぱり怖くなったんじゃん!」


「違う!」


「じゃあ投げてよ」


「断る!」


「怖いんじゃん!」


「うるさい!」


 ぬらりひょんが、深いため息をついた。


「いつまでやっておる」


「だって天狗が!」


「則人!」


「ほれ。さっさと取りに行かんか」


「はーい」


 則人が歩き出す。


 その後ろから。


「走らんか!」


 天狗の声が飛んだ。


「どっちなの!?」


 モズキャッチャーが。


 また少し笑った。



 則人が天狗のところまで行く。


「はい」


「落とすでないぞ」


「天狗に言われたくない」


「何か言ったか?」


「何でもない!」


 則人は、ピコピコハンマーを受け取った。


 これで。


 今度こそ。


 モズキャッチャーを人間へ戻せる。


「じゃあ、戻すね!」


 則人が振り返る。


「…………」


 モズキャッチャーは。


 その場に立っていた。


「どうしたの?」


「いや」


「すぐ終わるよ」


「…………」


 モズキャッチャーは、自分の身体を見る。


 大きな翼。


 胸の筐体。


 クレーンアーム。


 人間だった自分とは。


 まったく違う姿。


「ねえ」


「何?」


「戻ったら」


 モズキャッチャーが聞いた。


「俺、この姿だった時のこと、覚えてるのか?」


「え?」


 則人の手が止まった。


「どうなんだろ」


「知らないのか?」


「うん」


「お前、戻すって言ってたじゃん」


「戻せるのは知ってるよ!」


「その後のことは?」


「…………」


「知らない?」


「…………うん」


「大丈夫なのか?」


「たぶん!」


「その『たぶん』が怖いんだけど」


「大丈夫だよ!」


「今度は『たぶん』もなくなったな」


「細かいなあ!」


 ぬらりひょんが二人を見る。


「気になるか?」


「…………」


 モズキャッチャーが、ぬらりひょんを見る。


「少し」


「ならば、聞いておけばよい」


「何を?」


「今、気になっておることをじゃ」


「…………」


 則人も、ピコピコハンマーを下ろした。



「じゃあ」


 則人が言う。


「戻る前に、聞きたいことある?」


「俺が?」


「うん」


「…………」


 モズキャッチャーは考える。


 本来なら。


 こんな時間はなかった。


 天狗がハンマーを投げる。


 則人が受け取る。


 そして。


 すぐに人間へ戻っていた。


 けれど。


 ハンマーが外れた。


 たった、それだけで。


 自分には。


 考える時間ができてしまった。


「俺は……」


 モズキャッチャーが、自分のクレーンアームを見る。


「何で、こんなに欲しがってたんだ?」


「え?」


「何でも」


 モズキャッチャーは続ける。


「見つけたら欲しくなった」


「うん」


「欲しくなったら、取ろうとした」


「うん」


「取ったら、離したくなくなった」


「…………」


「でも」


 クレーンアームが。


 ゆっくり開く。


「今は、それが変だったって分かる」


 則人は黙って聞いていた。


「じゃあ」


 モズキャッチャーが聞く。


「どっちが俺なんだ?」


「どっち?」


「欲しがってた俺と」


 少し間を置く。


「今の俺」


「…………」


 則人は考えた。


 難しいことは分からない。


 けれど。


 目の前にいるのは。


 ずっと同じモズキャッチャーだ。


「どっちもじゃない?」


「え?」


「だって、どっちもモズキャッチャーでしょ?」


「そういう話じゃなくて」


「でも、そうじゃないの?」


 則人は首を傾げる。


「欲しくなったのも本当で」


「…………」


「今、変だったって思ってるのも本当」


「…………」


「だったら、どっちも本当なんじゃない?」


 モズキャッチャーは答えなかった。


 ぬらりひょんが、少しだけ笑う。


「子どもの方が、案外難しいことを簡単に言うものじゃな」


「難しいこと?」


「お主は分からんままでよい」


「なんで!?」


「その方がお主らしい」


「それ褒めてる?」


「さてのう」


「ぬらりひょん!」



 モズキャッチャーは。


 少し離れた場所で言い合っている二人を見た。


「…………」


 不思議だった。


 少し前まで。


 欲しいものしか見えていなかった。


 誰が何を言っても。


 関係なかった。


 欲しい。


 取る。


 自分のものにする。


 それだけ。


 なのに。


 今は。


 則人の言葉が残っている。


 どっちも本当。


「…………」


 モズキャッチャーが呟く。


「じゃあ、人間に戻っても……」


「ん?」


 則人が振り返る。


「また何か欲しくなるのかな」


「なるんじゃない?」


 則人は即答した。


「人間だって欲しいものあるもん」


「お前も?」


「あるよ!」


「何が欲しい?」


「えっとね――」


 則人が考える。


「新しいゲーム!」


「…………」


「あと、お菓子!」


「…………」


「それから、かっこいい変身ポーズ!」


「それは買えないだろ」


「練習するの!」


「欲しいものなのか、それ」


「欲しい!」


 モズキャッチャーが笑った。


「変なやつ」


「だからモズキャッチャーに言われたくない!」


 則人も笑う。


 それから。


 少しだけ真面目な顔になった。


「でも」


「ん?」


「欲しいって思っても、取っちゃダメなものは取らないよ」


「…………」


「お金がいるなら買うし」


「うん」


「買えなかったら我慢する」


「うん」


「たまに、お母さんにお願いする」


「最後だけ急に子どもだな」


「子どもだもん!」


「そうだった」


「忘れないでよ!」


 モズキャッチャーは。


 自分のクレーンアームを見る。


「欲しくなることが悪いんじゃないのか」


「ぼくはそう思うけど」


「じゃあ」


 モズキャッチャーが言った。


「欲しくなった後に、どうするか?」


「うん!」


「それを自分で決める?」


「そう!」


「…………」


 欲しいという気持ちそのものは。


 なくならないのかもしれない。


 人間に戻っても。


 きっと。


 何かを欲しいと思う。


 それでも。


 その先は。


 自分で選べる。


「…………」


 その言葉が。


 少しだけ。


 自分の中に残った。



「さて」


 ぬらりひょんが言った。


「そろそろよいかの?」


「あ」


 則人が、自分の手を見る。


 まだ。


 ピコピコハンマーを持っていた。


「忘れてた!」


「忘れるな!」


 天狗が叫ぶ。


「誰のせいでこんな話になったと思ってるの!」


「わしのせいではない!」


「投げ損ねたじゃん!」


「それとこれとは別じゃ!」


「同じだよ!」


「もうよい!」


 ぬらりひょんが二人を止める。


 則人は。


 改めてモズキャッチャーを見る。


「今度こそ、戻す?」


「…………」


 モズキャッチャーは。


 すぐには答えなかった。


 そして。


 自分の姿を。


 もう一度見る。


 翼。


 筐体。


 クレーンアーム。


 この姿になって。


 欲しいという気持ちに振り回された。


 誰かのものを取ろうとした。


 自分でも。


 止められないほどに。


 それでも。


 最後には。


 自分で止まることができた。


「…………」


「モズキャッチャー?」


「覚えておきたい」


「何を?」


「今のこと」


「…………」


「人間に戻っても」


 モズキャッチャーは言った。


「俺が、こうなったこと」


「うん」


「欲しいものばっかり追いかけてたこと」


「うん」


「それで」


 少しだけ。


 クレーンアームを握る。


「自分で止まれたことも」


 則人が笑った。


「じゃあ、忘れないようにしよう」


「どうやって?」


「え?」


「人間に戻ったら覚えてるか、分からないんだろ?」


「…………」


「…………」


「どうしよう?」


「お前、そこまで考えてなかったのか?」


「今から考える!」


「またそれか」


 モズキャッチャーが笑った。



「そうだ!」


 則人が声を上げた。


「何じゃ?」


 天狗が聞く。


「何か残せばいいんだよ!」


「残す?」


「うん!」


 則人はモズキャッチャーを見る。


「人間に戻って忘れちゃっても、見たら思い出せるもの!」


「そんなものあるのか?」


「今から作る!」


「何を?」


「それは……」


 則人が止まる。


「…………」


「…………」


「今から考える!」


「やっぱりそれか!」


 モズキャッチャーの笑い声が。


 今度は。


 はっきり聞こえた。


 本来なら。


 もう。


 人間へ戻っていたはずだった。


 天狗がピコピコハンマーを投げる。


 則人が受け取る。


 そして。


 モズキャッチャーを元の姿へ戻す。


 ほんのわずかな時間で。


 終わっていたはずだった。


 けれど。


 天狗が。


 たった一度。


 ピコピコハンマーを投げ損ねた。


 その失敗が。


 モズキャッチャーに。


 本来なら存在しなかった時間を与えた。


 人間へ戻る前に。


 自分が何をしていたのか。


 何を感じていたのか。


 何を間違えたのか。


 そして。


 何を忘れたくないのか。


 考えるための時間。


 失敗したから。


 生まれた時間。


 もし。


 あのハンマーが。


 最初からきれいに則人の手へ届いていたら。


 この時間は。


 どこにも存在しなかった。


「何を残そうか?」


 則人が聞く。


「知らない」


「一緒に考えようよ!」


「お前、さっき自分で考えるって言ってただろ」


「一人より二人の方がいいじゃん!」


「都合いいな」


「いいの!」


「…………」


 モズキャッチャーは。


 また少し笑った。


 人間へ戻るまで。


 あと少し。


 けれど。


 その「あと少し」は。


 思っていたより。


 大切な時間になるのかもしれなかった。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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