↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/29

第1話「届かなかったハンマー」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、天狗がピコピコハンマーを投げ損ねたら」


第1話「届かなかったハンマー」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


 モズキャッチャーは。


 もう、何かをつかもうとはしていなかった。


 欲しい。


 手に入れたい。


 絶対に離したくない。


 そんな気持ちに振り回されていた自分から。


 ほんの少しだけ。


 自分の意思で離れることができた。


「…………」


 則人は、そんなモズキャッチャーを見上げる。


 そして。


 少し離れたところにいる天狗へ目を向けた。


 天狗の手には。


 ピコピコハンマーがある。


 着ぐるみモンスターを、元の人間へ戻すための不思議なハンマー。


「天狗!」


「分かっておる!」


 天狗が答える。


 ハンマーを則人へ渡す。


 あとは。


 則人がモズキャッチャーを、ぽこんと叩けばいい。


 それだけだった。


 天狗がピコピコハンマーを持ち上げる。


「則人、いくぞ!」


「うん!」


 則人が両手を出した。


「それっ!」


 天狗が投げる。


 ひゅん。


 ピコピコハンマーが宙を飛ぶ。


 則人が構えた。


「よし――」


 ところが。


 ハンマーは、その両手の少し上を通り過ぎた。


「え?」


「え?」


 則人と天狗が、同時に声を上げる。


 ぽすっ。


 ピコピコハンマーは。


 少し離れた植え込みの中へ消えた。


「…………」


 則人が植え込みを見る。


 天狗も見る。


「…………」


「…………」


 それから。


 則人が、ゆっくり天狗を見る。


「天狗」


「なんじゃ」


「今の……」


「…………」


「投げるの失敗した?」


「…………」


 天狗が顔をそらした。


「少し手元が狂っただけじゃ」


「失敗したんだ」


「手元が狂っただけじゃ!」


「それを失敗って言うんじゃないの?」


「うるさい!」


 則人は、思わず笑いそうになった。


「こんな時に失敗する?」


「誰にでも失敗くらいあるわ!」


「でも、今はダメでしょ!」


「わしだって好きで外したわけではない!」


 二人が言い合う。


 その横で。


 モズキャッチャーは、ただ立っていた。


「…………」


 何も起こらない。


 当然だった。


 ピコピコハンマーは、まだ誰にも当たっていない。


 だから。


 モズキャッチャーは。


 モズキャッチャーのままだった。



「取ってくる!」


 則人が植え込みへ走る。


 がさがさ。


「どこ?」


「今、入ったところじゃ!」


「分かってるよ!」


「なら早く探せ!」


「天狗が失敗したんだから、天狗も探してよ!」


「探しておる!」


 がさがさ。


 がさがさ。


「ない!」


「そんなはずはない!」


「もっと奥に入ったんじゃない?」


「そんなに強く投げておらん!」


「でも、ぼくのところ通り越したよ!」


「…………」


「結構強かったんじゃない?」


「細かいことを言うでない!」


「細かくないよ!」


 ぬらりひょんが、その様子を見ながら深いため息をついた。


「何をやっておるんじゃ、お主らは」


「天狗が外した!」


「則人!」


「本当じゃん!」


「わざわざ報告するでない!」


 ぬらりひょんが額を押さえる。


「まったく……」


 その間も。


 モズキャッチャーは。


 まだそこにいる。



「…………」


 モズキャッチャーは、自分の身体を見る。


 大きな翼。


 胸の筐体。


 巨大なクレーンアーム。


 何一つ。


 さっきまでと変わっていない。


 則人が植え込みから顔を出した。


「ちょっと待っててね!」


「何を?」


「今、ハンマー探してるから!」


「ハンマー?」


「うん!」


 モズキャッチャーは、植え込みを見る。


 さっき。


 赤いハンマーが飛んでいったのは見えていた。


「それ、何に使うんだ?」


「モズキャッチャーを戻すの!」


「戻す?」


「人間に!」


「…………」


 モズキャッチャーは、自分の身体へ目を落とした。


「俺、人間に戻れるの?」


「戻れるよ!」


 則人は、何でもないことのように答えた。


「これまでの着ぐるみモンスターも、みんな戻ってるもん!」


「…………」


「だから、ちょっと待ってて!」


 則人はまた植え込みへ潜る。


 がさがさ。


「どこ行ったのー!」


「もっと右じゃ!」


「右って、どっちから見て!?」


「わしから見てじゃ!」


「分かんないよ!」


「そこじゃ! そこ!」


「ないって!」


 また。


 騒がしい声が始まった。



 モズキャッチャーは。


 一人。


 自分のクレーンアームを見つめた。


 人間に戻る。


 さっきまで。


 そんなことは、ほとんど考えていなかった。


 欲しいものを見つける。


 取る。


 離さない。


 そればかりだった。


 けれど。


 今は。


 その「欲しい」から。


 ほんの少しだけ離れている。


 そして。


 次には。


 人間へ戻る。


 そのはずだったらしい。


「…………」


 なのに。


 ハンマーは見つからない。


「変なの」


 モズキャッチャーが呟く。


 ほんの少し前までなら。


 自分がこんな姿でいることさえ、気にならなかった。


 けれど。


「人間に戻る、か……」


 言葉にすると。


 急に。


 その先のことが気になった。


 人間に戻ったら。


 自分は、どうするのだろう。


 何をするのだろう。


 そして。


 何を欲しがるのだろう。


「…………」


 答えは。


 まだ出なかった。



「あったー!」


 則人の声が響いた。


「本当か!?」


「……あ」


「どうした?」


「違った」


 則人が植え込みから出てくる。


 手には。


 赤いもの。


「何じゃ、それは」


「おもちゃのスコップ」


「なぜそんなものが入っておる!」


「ぼくに聞かないでよ!」


 天狗が頭を抱える。


 モズキャッチャーは、その様子を見て。


 ふっと笑った。


「…………?」


 則人が気づく。


「今、笑った?」


「別に」


「笑ったよね?」


「笑ってない」


「笑った!」


「うるさいな」


 則人も笑った。


 そして。


 ふと気づく。


 もし。


 天狗がちゃんとハンマーを投げていたら。


 今頃。


 モズキャッチャーは、もう人間へ戻っていた。


 こんなふうに。


 少し笑ったり。


 話したり。


 そんな時間は。


 なかったのかもしれない。



「ねえ」


 則人が聞いた。


「何?」


「人間に戻ったら、何したい?」


「…………」


 モズキャッチャーが止まる。


「何って?」


「だって、戻るんでしょ?」


「たぶん」


「だったら、そのあと」


「…………」


 考えたことがなかった。


 人間だった頃。


 何をしていたのか。


 何が好きだったのか。


 何を大切にしていたのか。


 何を欲しがっていたのか。


「分からない」


「そっか」


「…………」


「じゃあ、戻ってから考えればいいね!」


「簡単に言うな」


「だって、まだ戻ってないし!」


「それは、お前らがハンマーなくしたからだろ」


「ぼくじゃないよ! 天狗だよ!」


「則人!」


 植え込みの向こうから天狗の声が飛ぶ。


「本当のことじゃん!」


「何度も言うでない!」


 ぬらりひょんが、また深いため息をついた。



 本来なら。


 ここで。


 すぐに終わるはずだった。


 天狗がピコピコハンマーを投げる。


 則人が受け取る。


 そして。


 モズキャッチャーは、人間へ戻る。


 ただ。


 それだけ。


 けれど。


 天狗が。


 ほんの少しだけ。


 投げ損ねた。


 それだけで。


 モズキャッチャーには。


 人間へ戻るまでの。


 少しだけ余分な時間ができた。


 たった数分かもしれない。


 けれど。


 本来なら、なかったはずの時間。


 その時間の中で。


 モズキャッチャーは。


 初めて。


 人間へ戻ったあとの自分を。


 ほんの少しだけ考え始めていた。


「則人!」


「なに?」


「あったぞ!」


「ほんと!?」


「今度こそ本物じゃ!」


「じゃあ投げて!」


「…………」


「どうしたの?」


「…………」


 天狗は。


 ピコピコハンマーを握ったまま。


 則人を見る。


「今度は」


「うん?」


「お主が取りに来い」


「投げないの!?」


「二度と失敗せんためじゃ!」


「それ、失敗するの怖くなっただけじゃない?」


「うるさい!」


 本来ならなかったはずの時間は。


 もう少しだけ。


 続くことになった。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。