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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編2

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第4話「欲しいものを見つけても」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、モズキャッチャーが羽衣を欲しがらなかったら」


第4話「欲しいものを見つけても」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


 次の日。


 モズキャッチャーは、またあの店の前にいた。


「…………」


 店先の小さな箱。


 その中には。


 昨日と同じ、鳥のキーホルダーがある。


「まだあった」


 後ろから声がした。


 モズキャッチャーが振り返る。


「……お前、いつからいた?」


「今来た!」


 則人だった。


「また見に来たの?」


「見るだけだ」


「ほんと?」


「取らない」


「まだ何も言ってないよ」


「言う顔してた」


「どんな顔!?」


 則人はモズキャッチャーの隣に並んだ。


 二人で、鳥のキーホルダーを見る。


「やっぱり欲しい?」


「ああ」


「昨日より?」


「分からない」


「じゃあ、取り戻したい?」


「…………」


 モズキャッチャーは答えなかった。


 ただ。


 キーホルダーから目を離せない。


 欲しい。


 手に入れたい。


 その気持ちは変わらない。


 けれど。


 昨日までとは、少し違っていた。


 クレーンアームが動かない。


「今日は動かないね」


「何が?」


「腕」


「…………」


 モズキャッチャーが、自分のクレーンアームを見る。


「本当だ」


「自分で気づいてなかったの!?」


 則人が驚く。


「昨日は、すぐ伸びてたじゃん」


「そうだったか?」


「そうだよ!」


 モズキャッチャーは、もう一度キーホルダーを見る。


 欲しい。


 それでも。


 手は動かない。


「変なの」


「いいことじゃない?」


「欲しいのに?」


「欲しいからって、絶対取らなきゃいけないわけじゃないでしょ」


「…………」


 モズキャッチャーは黙った。



 その時だった。


「すみませーん!」


 店の奥から声がした。


 一人の店員が、大きな箱を抱えて出てくる。


 箱の中には、店頭へ並べるらしい商品がぎっしり入っていた。


「よいしょ……っと」


 店員が箱を置く。


 その拍子に。


 ころん。


 何かが地面へ落ちた。


「あっ」


 則人が気づいた。


 小さなキーホルダーだった。


 店員は気づかない。


 そのまま店の中へ戻っていく。


「落ちたよ」


 則人が言う。


「…………」


 モズキャッチャーも見ていた。


 地面に落ちたキーホルダー。


 鳥ではない。


 小さな車の形をしている。


「どう?」


「何が?」


「欲しい?」


「いらない」


「じゃあ、拾ってあげよう」


 則人が近づこうとした。


 だが。


 その前に。


 クレーンアームが伸びた。


「え?」


 がしっ。


 アームがキーホルダーをつかむ。


 則人が目を丸くした。


「モズキャッチャー?」


「いらない」


「でも取ったよ?」


「…………」


 モズキャッチャーは、自分のアームを見る。


 確かに。


 キーホルダーをつかんでいる。


「欲しくないのに取ったの?」


「…………」


「なんで?」


「分からない」


 モズキャッチャーの顔が曇る。


 欲しくない。


 なのに。


 目の前にあるものを、反射的につかんでいた。


「…………」


 則人も黙った。


 昨日まで。


 二人は「欲しいもの」のことばかり考えていた。


 けれど。


 もしかしたら。


 問題は、そこだけではないのかもしれない。


「返そう」


 則人が言った。


「…………」


「それ、お店の人のだから」


「ああ」


 モズキャッチャーは店へ向かった。



「これ」


 店員が振り返る。


「え?」


 目の前に立つモズキャッチャーを見て、一瞬ぎょっとする。


 そのクレーンアームには、店の商品がつかまれていた。


「落ちた」


「あ……!」


 店員が気づく。


「それ、さっきの箱から?」


「たぶん」


「拾ってくれたの?」


「…………」


 モズキャッチャーが少し考える。


「勝手につかんだ」


「え?」


「でも、いらないから返す」


「モズキャッチャー!」


 則人が慌てる。


「もうちょっと言い方あるでしょ!」


「本当のことだろ」


「そうだけど!」


 店員は二人を交互に見て。


 それから。


 少しだけ笑った。


「ありがとう」


「…………」


 モズキャッチャーが止まった。


「ありがとう?」


「うん。落としたの、気づいてなかったから」


「…………」


「助かったよ」


 店員はキーホルダーを受け取った。


 モズキャッチャーは、空になったクレーンアームを見つめる。


「どうしたの?」


 則人が聞いた。


「分からない」


「また?」


「でも……」


 モズキャッチャーは、自分の胸へ手を当てた。


「今のは、嫌じゃなかった」


「返したこと?」


「たぶん」


「そっか」


 則人が笑った。


「取るだけじゃなくて、返すこともできるんだね」


「当たり前だろ」


「昨日までできなかったじゃん」


「うるさい」


「できなかったじゃん!」


「二回言うな!」



 店を離れようとした時。


 モズキャッチャーの足が、また止まった。


「…………」


 あの鳥のキーホルダー。


 まだ。


 そこにある。


 則人も気づいた。


「欲しい?」


「ああ」


「取る?」


「取らない」


 今度は。


 迷わなかった。


 則人が少し驚く。


「すぐ答えた」


「取ったら、あいつのものじゃなくなる」


「お店の人?」


「ああ」


「売り物だからね」


「それに」


 モズキャッチャーは、さっき商品を返した自分のアームを見る。


「取るより」


「うん」


「返した方が、変な感じがしなかった」


「変な感じ?」


「うまく言えない」


「じゃあ、いい感じ?」


「それも違う」


「難しいなあ」


「お前が聞いたんだろ」


 則人は笑った。


 そして。


 もう一度、鳥のキーホルダーを見る。


「いつか、ちゃんと買えるといいね」


「…………」


「欲しいんでしょ?」


「ああ」


「だったら、取らないで手に入れようよ」


「どうやって?」


「お金を貯める!」


「俺、金ないぞ」


「だから貯めるんだよ!」


「どうやって?」


「え?」


 則人が止まる。


「…………」


「…………」


「どうしよう?」


「考えてなかったのかよ」


「今から考える!」


「大丈夫か?」


「大丈夫!」


「その返事、前にも聞いたぞ」


「今度は大丈夫!」


「余計不安だ」


 二人は店を離れた。



 帰り道。


 ぬらりひょんが待っていた。


「どうじゃった?」


「取らなかったよ!」


 則人が答える。


「ほう」


「それだけじゃないよ。落ちた商品を拾って、お店の人に返した!」


「ほうほう」


「でも最初は勝手につかんだ」


「それは言わなくていいだろ!」


 モズキャッチャーが叫ぶ。


 ぬらりひょんが、くくっと笑った。


「なるほどのう」


「何が?」


「少しずつ変わっておるということじゃ」


「俺が?」


「そうじゃ」


「何も変わってない」


「そうかのう?」


 ぬらりひょんは、モズキャッチャーのクレーンアームを見る。


「以前のお主なら、手にしたものを返したか?」


「…………」


「欲しいものを目の前にして、自分から手を伸ばさずにいられたか?」


「…………」


 モズキャッチャーは答えない。


「欲しいという気持ちが消えたわけではない」


「うん」


 則人が頷く。


「じゃが、それでよいのかもしれん」


「え?」


「欲しいと思うことと、奪うことは別じゃ」


 モズキャッチャーが顔を上げる。


「欲しいものを見つけても」


 ぬらりひょんは言った。


「その後どうするかは、自分で決められる」


「…………」


 モズキャッチャーは、しばらく自分のクレーンアームを見つめていた。



 その日の夜。


 モズキャッチャーは、一人だった。


 目を閉じる。


 浮かんでくるのは。


 あの鳥のキーホルダー。


 欲しい。


 今でも。


 欲しい。


 けれど。


 もう。


 勝手に取りに行こうとは思わなかった。


「…………」


 代わりに思い出したのは。


 店員の言葉だった。


『ありがとう』


 たった一言。


 なのに。


 妙に残っている。


「……変なの」


 モズキャッチャーは呟いた。


 取った時より。


 返した時の方が。


 胸の中に何かが残った。


 欲しいものを手に入れたわけでもない。


 何かをもらったわけでもない。


 それなのに。


「…………」


 クレーンアームを見る。


 これは。


 ものを取るためだけの腕なのだろうか。


 欲しいものをつかむためだけの腕なのだろうか。


 今日。


 この腕は。


 初めて。


 誰かのものを、その人のところへ返した。


 欲しいものを見つけても。


 取らない。


 手が届いても。


 伸ばさない。


 そして。


 つかんでしまっても。


 返すことができる。


 欲しいという気持ちは。


 まだ消えていない。


 消す必要も。


 ないのかもしれない。


 大切なのは。


 欲しいと思った、その次に。


 自分が何を選ぶのか。


 取るのか。


 諦めるのか。


 それとも。


 いつか、ちゃんと手に入れるのか。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 モズキャッチャーの中で。


「欲しい」の意味が。


 変わり始めていた。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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