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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編2

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第3話「欲しいもの、欲しかったもの」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、モズキャッチャーが羽衣を欲しがらなかったら」


第3話「欲しいもの、欲しかったもの」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


 次の日。


「今日は実験します!」


 則人が宣言した。


「またかよ」


 モズキャッチャーが、面倒そうに答える。


「昨日だけじゃ、まだ分かんないもん」


「何が?」


「モズキャッチャーが、何を欲しがるのか!」


「そんなの俺にも分からない」


「だから調べるんだよ!」


 則人の前には、いろいろなものが並べられていた。


 きれいな石。


 新品の鉛筆。


 小さなボール。


 カード。


 お菓子。


 どれも則人が家から持ってきたものだ。


「まず、これ!」


 則人がカードを見せる。


「どう?」


「いらない」


「じゃあ、ボール!」


「いらない」


「お菓子!」


「いらない」


「鉛筆!」


「いらない」


「きれいな石!」


「昨日もやっただろ」


「あ、そうだった」


「忘れるなよ」


 則人は腕を組んだ。


「うーん……」


 昨日。


 モズキャッチャーは、古い鳥のキーホルダーを欲しがった。


 それも。


 クレーンアームを伸ばしかけるほど、強く。


 なのに。


 今日並べたものには、まるで反応しない。


「やっぱり、値段じゃないんだ」


「当たり前じゃ」


 ぬらりひょんが横から言った。


「高価なものを欲しがるのであれば、羽衣に興味を示さなかった説明がつかん」


「じゃあ、珍しいもの?」


「それも違うじゃろうな」


「じゃあ、何?」


「それを調べておるのではなかったか?」


「あ、そっか」


 モズキャッチャーが呆れた。


「お前、本当に大丈夫か?」


「大丈夫!」


「不安になる返事だな」


「なんで!?」



「じゃあさ」


 則人は少し考えてから言った。


「昨日のキーホルダー、もう一回見に行こうよ」


「…………」


 モズキャッチャーの表情が、ほんの少しだけ変わった。


「あっ!」


「何だよ」


「今、行きたいって顔した!」


「してない」


「した!」


「してない」


「じゃあ行かない?」


「…………」


「ほら!」


「うるさい!」


 則人が笑う。


「やっぱり、まだ欲しいんだ」


「悪いかよ」


「悪くないよ」


「…………」


 モズキャッチャーが則人を見る。


「人のものを勝手に取るのはダメだけど」


 則人は続けた。


「欲しいって思うだけなら、悪くないでしょ?」


「…………」


「昨日、ちゃんと我慢できたし」


 モズキャッチャーは何も言わなかった。


「行こう!」


「何しに?」


「見るだけ!」


「欲しくなるぞ」


「取らなきゃいいじゃん」


「簡単に言うなよ」


「じゃあ、ぼくが止める!」


「それじゃ昨日と同じだろ」


「あ」


 則人が止まる。


 ぬらりひょんが、くくっと笑った。


「今度は自分で止まればよい」


「…………」


 モズキャッチャーがぬらりひょんを見る。


「できるか?」


「知らない」


「ならば、試してみることじゃ」


 しばらく黙ったあと。


 モズキャッチャーは歩き出した。


「行くの?」


「見るだけだ」


「うん!」


 則人が、その後を追いかけた。



 昨日の店は、今日も開いていた。


 店先には、いろいろな品物が並んでいる。


「あった!」


 則人が指さした。


 小さな箱。


 その中に。


 昨日と同じ、鳥をかたどった古いキーホルダーがある。


「…………」


 モズキャッチャーの足が止まった。


 じっと見る。


 クレーンアームが。


 ぴくり。


 動いた。


 則人も気づく。


 けれど。


 今日は飛びつかなかった。


 黙って見ている。


「…………欲しい」


「うん」


「すごく欲しい」


「うん」


「取れる」


「取れるね」


「簡単に」


「うん」


「…………」


 クレーンアームが、ゆっくり持ち上がる。


 則人は何も言わなかった。


 止めようともしない。


 ただ。


 モズキャッチャーを見ている。


「止めないのか?」


「今日は自分で止まるんでしょ?」


「…………」


 アームが、また少し動く。


 キーホルダーまで。


 あと少し。


「…………っ」


 モズキャッチャーが歯を食いしばる。


 欲しい。


 手を伸ばせば届く。


 取ろうと思えば、簡単に取れる。


 それでも。


「……取らない」


 クレーンアームが止まった。


 ほんの少し震えて。


 やがて。


 ゆっくりと引っ込んでいく。


 則人の顔が、ぱっと明るくなった。


「できた!」


「大声出すな」


「だって、できたじゃん!」


「欲しいのは変わらない」


「それでもいいじゃん!」


「…………」


 モズキャッチャーは、もう一度キーホルダーを見た。


 欲しい。


 昨日より。


 その気持ちは、はっきりしている。


 けれど。


 同時に。


 別の感覚も生まれていた。


 欲しい。


 でも。


 これは、自分のものではない。


 だから。


 取らない。


 昨日までは一つだった気持ちが。


 今は二つに分かれている。


 欲しいという気持ちと。


 それをどうするかという、自分の意思に。



「でも、なんで鳥なんだろう」


 店を離れたあと。


 則人が聞いた。


「知らない」


「モズだから?」


「何だよ、それ」


「鳥つながり!」


「そんな理由で欲しくなるか?」


「じゃあ違うかあ」


 則人は歩きながら考える。


「昨日は、見たことある気がするって言ってたよね」


「……ああ」


「何か思い出した?」


「いや」


「ちょっとも?」


「…………」


 モズキャッチャーは黙った。


 思い出したわけではない。


 けれど。


 昨日より。


 少しだけ近い。


 あの鳥を見ると。


 胸の奥に、妙な感覚が残る。


 懐かしい。


 そう言えばいいのかもしれない。


 だが。


 何が懐かしいのか。


 それが分からない。


 その時。


 道の向こうから、一人の子どもが歩いてきた。


 ランドセルには、いくつものキーホルダーがついている。


 星。


 動物。


 キャラクター。


 その中に。


 鳥のキーホルダーがあった。


「…………!」


 モズキャッチャーが立ち止まる。


「どうしたの?」


 則人が振り返った。


 モズキャッチャーは、子どものランドセルを見ていた。


「また欲しい?」


「…………違う」


「え?」


「欲しくない」


「鳥なのに?」


「ああ」


 子どもは二人の横を通り過ぎていく。


 モズキャッチャーは追わなかった。


 クレーンアームも動かない。


「じゃあ、鳥なら何でもいいわけじゃないんだ」


「みたいだな」


「ますます分かんない!」


 則人が頭を抱える。


 その時。


 モズキャッチャーが、ぽつりと言った。


「同じじゃない」


「何が?」


「あの店のやつと」


「キーホルダー?」


「ああ」


「どこが違うの?」


「分からない」


「またそれ!?」


「でも、違う」


 モズキャッチャーは、自分の胸へ手を当てた。


「こっちは何とも思わない」


「…………」


「でも、あれを見ると……」


 言葉が止まる。


「どうなるの?」


「…………」


 モズキャッチャーは、しばらく考えた。


 欲しい。


 確かに欲しい。


 でも。


 あの気持ちは。


 本当に、それだけなのだろうか。


「欲しいっていうより」


「うん」


「…………取り戻したい」


 則人が目を瞬いた。


「取り戻したい?」


「…………」


 自分で口にして。


 モズキャッチャー自身が、一番驚いていた。


 欲しい。


 ずっと。


 そう思っていた。


 欲しいから、取る。


 欲しいから、離さない。


 けれど。


 あの鳥のキーホルダーだけは。


 何かが違う。


 新しく欲しいのではない。


 前から知っていた何かを。


 もう一度。


 自分の手に戻したい。


 そんな感覚。


「それって……」


 則人の顔から笑みが消える。


「前に持ってたってこと?」


「分からない」


「でも、取り戻したいって思ったんでしょ?」


「……ああ」


 少し離れた場所で。


 ぬらりひょんが二人を見ていた。


「なるほどのう」


「何か分かったの?」


「まだ何とも言えん」


 ぬらりひょんは答える。


「じゃが」


 モズキャッチャーへ視線を向けた。


「『欲しい』にも、いろいろあるということかもしれん」


「いろいろ?」


「持っておらんから欲しいもの」


「うん」


「誰かが持っているから欲しくなるもの」


「うん」


「そして――」


 ぬらりひょんは、少し間を置いた。


「失くしたから、取り戻したいもの」


「…………」


 モズキャッチャーは黙った。


 失くした。


 その言葉だけが。


 妙に胸に残った。



 その夜。


 モズキャッチャーは、一人で考えていた。


 自分は。


 何を失くしたのだろう。


 物なのか。


 誰かなのか。


 それとも。


 もっと別の何かなのか。


 分からない。


 思い出せない。


 けれど。


 あの鳥のキーホルダーを見た時。


 確かに。


 自分の中の何かが動いた。


「……取り戻したい」


 もう一度。


 小さく呟く。


 欲しい。


 今までは。


 それだけだった。


 欲しいものを見つける。


 手を伸ばす。


 取る。


 けれど。


 今は違う。


 なぜ欲しいのか。


 その理由を。


 モズキャッチャー自身が、初めて考え始めていた。


 欲しいもの。


 欲しかったもの。


 そして。


 失くしてしまったもの。


 その違いを見つけた時。


 モズキャッチャーは。


 怪人になる前の自分に。


 もう一度。


 出会えるのかもしれない。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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