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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編2

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22/29

第2話「欲しい理由」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、モズキャッチャーが羽衣を欲しがらなかったら」


第2話「欲しい理由」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「待って!」


 則人が叫ぶ。


 だが。


 ばさっ!


 モズキャッチャーは大きな翼を広げ、紙袋を持った男へ向かって飛び出した。


「もう!」


 則人も慌てて追いかける。


 男はまだ、背後で起きていることに気づいていない。


 紙袋を片手に、ごく普通に歩いている。


 その背中へ。


 巨大なクレーンアームが、ゆっくりと伸びていく。


「ダメだって!」


 則人がモズキャッチャーの腕へ飛びついた。


「何すんだよ!」


「それ、人のもの!」


「分かってる」


「分かってるのに取るの!?」


「欲しいから」


「それじゃダメでしょ!」


 則人が必死に腕を引っ張る。


 それでも。


 モズキャッチャーの目は、紙袋から離れない。


「離せよ」


「離さない!」


「欲しいんだよ」


「だからって取っちゃダメ!」


「じゃあ、どうすればいい?」


「我慢する!」


「嫌だ」


「即答!?」


 その騒ぎに。


 ようやく男が気づいた。


 振り返った瞬間。


「うわっ!?」


 顔が引きつる。


 無理もない。


 大きな翼。


 胸についた筐体。


 そして、巨大なクレーンアーム。


 そんなモズキャッチャーが、自分の紙袋へ腕を伸ばしている。


 その腕には、小学生くらいの少年が必死にしがみついていた。


「な、なんだ!? そいつ!」


「あっ! すみません!」


「すみませんって、何なんだよ!?」


「えっと……!」


 則人が答えに詰まる。


 その間にも。


 モズキャッチャーのクレーンアームが、ぴくりと動いた。


 男は反射的に紙袋を胸へ抱え込む。


「ひっ!」


「モズキャッチャー! 動かさない!」


「欲しい」


「今はそれ言わないで!」


 男は二人から距離を取ると、逃げるようにその場を離れていった。


 紙袋も。


 一緒に遠ざかっていく。


「…………」


 モズキャッチャーの視線だけが、その背中を追っていた。


「行くなよ」


 則人が言う。


「…………」


「絶対、行くなよ」


「…………」


「モズキャッチャー?」


「欲しい」


「それはもう聞いた!」


 則人は腕にしがみついたまま、大きくため息をついた。



「で」


 少しして。


 則人はモズキャッチャーの前に立っていた。


「何が欲しかったの?」


「分からない」


「…………」


「…………」


「分からないのに、あんなに追いかけたの?」


「うん」


「なんで?」


「欲しかったから」


「それじゃ分かんないよ!」


 則人が頭を抱える。


 その横から。


 ぬらりひょんが口を挟んだ。


「ならば、順番に考えてみればよかろう」


「順番?」


「何を見て、欲しいと思ったのかじゃ」


「あ、そっか!」


 則人はすぐにモズキャッチャーを見る。


「何を見たの?」


「袋」


「袋が欲しかった?」


「違う」


「じゃあ、中身?」


「たぶん」


「何が見えた?」


「少しだけ」


「だから、その少しが何だったの?」


「分からない」


「また戻った!」


 則人が叫ぶ。


 ぬらりひょんは、呆れたように髭を撫でた。



 それから。


 則人は、モズキャッチャーの「欲しい」を調べることにした。


「じゃあ、これは?」


 則人が小石を持ち上げる。


「いらない」


「これは?」


 木の枝。


「いらない」


「これは?」


 落ちていた、形のきれいな葉っぱ。


「いらない」


「じゃあ、これ!」


 則人がポケットから小さなおもちゃを取り出す。


「…………」


 モズキャッチャーが見る。


「どう?」


「いらない」


「全然欲しがらない!」


「いらないものはいらない」


「羽衣もいらなかったし……」


 則人は腕を組んだ。


 空を飛べる羽衣。


 きれいな葉っぱ。


 小さなおもちゃ。


 どれにも興味を示さない。


「じゃあ、何なら欲しいんだろ」


「知らない」


「自分のことでしょ!」


「欲しくなるまで分からない」


「そんなの調べられないじゃん!」


 則人が頬を膨らませる。


 けれど。


 ぬらりひょんは、黙ってモズキャッチャーを見ていた。


「欲しくなるまで分からん、か」


「何?」


「いや」


 ぬらりひょんは、それ以上何も言わなかった。



 その日の夕方。


 モズキャッチャーは街を歩いていた。


 人間だった頃。


 自分は、何を欲しがっていたのだろう。


 何かが欲しかった。


 何かを手に入れたかった。


 そんな気はする。


 けれど。


 それが何だったのか。


 今は、うまく思い出せない。


「…………」


 道の向こうに、小さな店が見えた。


 店先には、いろいろな品物が並んでいる。


 モズキャッチャーは何気なく、その前を通り過ぎようとした。


 欲しくない。


 これも。


 あれも。


 別にいらない。


 その時だった。


「…………!」


 足が止まった。


 店の隅。


 小さな箱の中に、いくつかの古いキーホルダーが並んでいる。


 その中の一つ。


 鳥をかたどった、小さなキーホルダー。


「…………」


 なぜか。


 目が離せない。


 胸の奥が、ざわつく。


 理由は分からない。


 なのに。


「……欲しい」


 クレーンアームが、ゆっくりと動き始めた。


「見つけた!」


 後ろから、則人の声が飛んでくる。


「また勝手に行った!」


「…………」


「何してるの?」


 則人がモズキャッチャーの視線を追う。


 そして。


 鳥のキーホルダーに気づいた。


「これ?」


「欲しい」


「また?」


「うん」


「じゃあ――」


 則人は店を見る。


「買えばいいじゃん」


「買う?」


「そうだよ。お店のものなんだから」


「…………」


「お金ある?」


「ない」


「じゃあ、今は買えないね」


「…………」


 クレーンアームが伸びる。


「取るのもダメ!」


 則人が即座に腕を押さえた。


「じゃあ、どうするんだよ」


「欲しくても、手に入らないことだってあるよ」


「…………」


「それに」


 則人はキーホルダーを見る。


「本当に欲しいなら、ちゃんと手に入れた方がいいじゃん」


「ちゃんと?」


「うん。人のものを勝手に取るんじゃなくて」


 モズキャッチャーは、もう一度キーホルダーを見る。


 欲しい。


 やっぱり欲しい。


 手を伸ばせば。


 簡単に取れる。


 今までなら。


 もう取っていた。


「…………」


 クレーンアームが止まった。


 ほんの少し。


 震える。


 前へ伸ばそうとする力と。


 止めようとする力が。


 一本の腕の中で、ぶつかっているようだった。


「…………っ」


 やがて。


 アームが。


 ゆっくりと引っ込んでいく。


 則人の目が大きくなった。


「……我慢した」


「うるさい」


「自分で止めた!」


「うるさいって」


「すごいじゃん!」


「欲しいのは変わってない」


「それでも取らなかった!」


「…………」


 モズキャッチャーは、不満そうに顔をそらした。


 けれど。


 クレーンアームは。


 もう動かなかった。



 店を離れてからも。


 モズキャッチャーは引き返さなかった。


「ねえ」


 則人が隣を歩きながら聞く。


「なんで、あれが欲しかったの?」


「分からない」


「またそれ?」


「でも……」


 モズキャッチャーが足を止めた。


「何?」


「見たことがある気がした」


「キーホルダーを?」


「分からない」


「じゃあ、あの鳥?」


「…………」


 モズキャッチャーは答えなかった。


 けれど。


 あの小さな鳥を見た瞬間。


 確かに。


 何かが引っかかった。


 思い出せない。


 何だったのかも分からない。


 ただ。


 何も知らないものを見た時とは違った。


「欲しいものを調べれば」


 則人が言う。


「モズキャッチャーが元に戻る方法も、分かるかもしれないね!」


「そうかな」


「分かんないけど!」


「分かんないのかよ」


「でも、調べよう!」


「お前、楽しんでない?」


「ちょっと!」


「やっぱり」


 モズキャッチャーが呆れたように言う。


 則人は笑った。


 羽衣は欲しくなかった。


 けれど。


 中身の分からない紙袋には惹かれた。


 そして。


 古い鳥のキーホルダーにも。


 欲しい。


 その気持ちは同じなのに。


 欲しくなるものと。


 欲しくならないものがある。


 その違いは。


 いったい、どこから生まれるのか。


 まだ。


 答えは分からない。


 ただ一つ。


 今日。


 確かに変わったことがある。


 モズキャッチャーは。


 初めて自分から。


 欲しいものへ伸ばした手を止めた。


 欲しい。


 だから、取る。


 今までなら。


 その二つの間には、何もなかった。


 けれど今は。


 そこに。


 ほんの少しだけ。


 考える時間が生まれていた。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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