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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編2

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第1話「それはいらない」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、モズキャッチャーが羽衣を欲しがらなかったら」


第1話「それはいらない」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「返すね」


 則人は、肩にまとっていた羽衣へ手をかけた。


 天女から借りた、不思議な羽衣。


 まとえば身体がふわりと浮かび、空を自由に飛ぶことができる。


 名残惜しそうに手を添えてから、則人は羽衣を外した。


「ありがとう! すっごく楽しかった!」


「どういたしまして」


 天女が柔らかく微笑む。


 則人は両手で羽衣を差し出した。


 その瞬間。


「…………」


 ちらりと横を見る。


 そこには、モズキャッチャーがいる。


 大きな翼。


 胸についた筐体。


 そして、欲しいものをつかみ取るための巨大なクレーンアーム。


 則人は思わず、羽衣を胸元へ引き寄せた。


 モズキャッチャーは、欲しいものを見つけると止まらない。


 欲しい。


 そう思ったものへ、迷わず手を伸ばす。


 だったら。


 空を飛べる、こんな珍しい羽衣を見たら――。


「…………」


 則人は身構えた。


 ところが。


「…………?」


 何も起こらない。


 モズキャッチャーは羽衣を見ている。


 確かに見ているのだが。


 アームを伸ばさない。


 一歩たりとも近づいてこない。


「……ねえ」


「何?」


「これ」


 則人が羽衣を少し持ち上げた。


「欲しくないの?」


「いらない」


「…………え?」


 則人の目が丸くなった。



「いらないの!?」


「いらない」


「これ、飛べるんだよ!?」


「そうなんだ」


「空だよ!? 空!」


「うん」


「すっごく高いところまで行けるんだよ!?」


「へえ」


「ふわふわしてるし!」


「そう」


「…………」


 則人は羽衣を見る。


 モズキャッチャーを見る。


 もう一度、羽衣を見る。


 どう考えてもすごい。


 少なくとも。


 則人なら欲しい。


「なんで?」


「何が?」


「なんで欲しくないの?」


 今度は、モズキャッチャーが不思議そうに首を傾げた。


「欲しくないから」


「でも、すごいよ?」


「俺にはいらない」


「ちょっとくらい触ってみたくない?」


「思わない」


「使ってみたいとか!」


「別に」


「じゃあ、もらえるって言われたら?」


「いらない」


「…………」


 則人が固まった。


 その横で、天女がくすっと笑う。


「則人さん」


「なに?」


「欲しいものは、人によって違うのではありませんか?」


「…………あ」


 則人が目を瞬いた。



 モズキャッチャーは、何でも欲しがる。


 則人は、いつの間にかそう思い込んでいた。


 けれど。


 どうやら違う。


 何でも欲しいわけではない。


 自分が「欲しい」と感じたものだけを、強く欲しがる。


「じゃあ」


 則人が聞いた。


「モズキャッチャーって、何でも欲しいわけじゃないの?」


「当たり前だろ」


「そうなの!?」


「お前、俺を何だと思ってたんだよ」


「欲しいものを見つけたら、全部取る人」


「…………」


 モズキャッチャーが少し考える。


「だいたい合ってるのが腹立つな」


「やっぱり!」


「でも、欲しくないものまで取らない」


「そっかあ……」


 則人は感心したように頷いた。


 それから、改めて天女へ羽衣を差し出す。


「はい!」


「ありがとうございます」


 羽衣が天女の手へ戻った。


 モズキャッチャーは、その様子を見ても何も言わない。


 クレーンアームも動かない。


 本当に興味がないらしい。



「ふむ……」


 少し離れたところで、ぬらりひょんが髭を撫でていた。


「どうしたの?」


 則人が聞く。


「いや。少々、興味深いと思っての」


 ぬらりひょんの視線は、モズキャッチャーへ向いている。


「欲しいものなら、どこまでも追いかける」


「うん」


「じゃが、欲しくないものには手を出さん」


「うん」


「ということは――」


 ぬらりひょんは少し考えてから続けた。


「あやつの中にも、何かしらの基準があるということじゃ」


「基準?」


「何を欲しいと思い、何をいらないと思うのか。その境目じゃな」


「…………」


 則人がモズキャッチャーを見る。


「何で決めてるの?」


「知らねえよ」


 モズキャッチャーが答えた。


「見て、欲しいと思ったら欲しい。それだけだ」


「じゃあ、羽衣は?」


「思わなかった」


「なんで?」


「だから知らねえって!」


「変なの」


「お前に言われたくない」


「なんで!?」


 天女が、また小さく笑った。



 その時だった。


「…………」


 モズキャッチャーの視線が、ふっと別の方向へ向いた。


「あ」


 則人もすぐに気づく。


 さっきまでとは、明らかに顔つきが違う。


「どうしたの?」


 返事はない。


 少し離れた場所を、一人の男が歩いていた。


 手には、小さな紙袋。


 袋の口から何かが、ほんのわずかにのぞいている。


「…………欲しい」


 モズキャッチャーが呟いた。


「え?」


 則人が目を丸くする。


 ついさっきまで。


 空を飛べる羽衣には、まったく興味を示さなかった。


 それなのに。


 今度は。


 クレーンアームが、ぴくりと動いた。


「何が欲しいの?」


「あれ」


「どれ?」


「あの袋」


「袋?」


「中に何か入ってる」


 則人が目を凝らす。


「でも、ほとんど見えてないじゃん」


「ちょっと見える」


「何が入ってるの?」


「分かんない」


「分かんないのに欲しいの!?」


「欲しい」


「なんで!?」


「欲しいから」


「…………」


 則人は、口を開けたまま固まった。


 天女も不思議そうに紙袋を見る。


 ぬらりひょんだけは何も言わず、モズキャッチャーの様子を観察していた。



「羽衣はいらないのに?」


 則人が聞く。


「いらない」


「でも、何が入ってるか分からない袋は欲しい?」


「欲しい」


「…………」


 則人には、ますます分からなくなった。


 空を飛べる、不思議な羽衣。


 それはいらない。


 中身すらよく分からない紙袋。


 それは欲しい。


「なんでだろ……」


 則人がぽつりと呟く。


「さてな」


 ぬらりひょんが答えた。


「ぬらりひょんにも分かんないの?」


「人が何を欲しがるかなど、そう簡単に決められるものではない」


「…………」


「必要だから欲しいとは限らん」


「うん」


「高価だから欲しいとも限らん」


「じゃあ、なんで欲しいの?」


「それが分かれば苦労はせん」


 ぬらりひょんは、じっとモズキャッチャーを見る。


「じゃが――」


「うん?」


「何を欲しがるのか」


 少し間を置く。


「なぜ、それを欲しいと思うのか」


「…………」


「そこに、あやつが元へ戻る手がかりがあるのかもしれん」


「…………!」


 則人もモズキャッチャーを見る。


 その間にも。


 巨大なクレーンアームは、ゆっくりと持ち上がっていた。


「モズキャッチャー」


「何?」


「それ」


 則人がアームを指さす。


「取りに行くの?」


「…………」


 モズキャッチャーは。


 ほんの少しだけ笑った。


「欲しいからな」


 次の瞬間。


 ばさっ!


 大きな翼が開く。


「待って!」


 則人が叫んだ。


 羽衣には。


 まったく興味を示さなかった。


 だから。


 ほんの少しだけ。


 安心してしまっていた。


 けれど。


 モズキャッチャーの「欲しい」が、消えたわけではない。


 何でも欲しいわけではない。


 ただ。


 何かが心に引っかかった瞬間。


 その「欲しい」は。


 やはり止まらない。


 空を飛べる羽衣には心を動かされず。


 中身すら分からない紙袋へ手を伸ばす。


 その違いは、どこにあるのか。


 則人には。


 まだ分からなかった。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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