↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編 1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/21

第4話「欲しいものを見つけても」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、則人が最初に『欲しがっちゃダメ!』と言ってしまったら」


第4話「欲しいものを見つけても」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「今日は、ここまで」


モズキャッチャーは、もう一度その言葉を口にした。


「うん!」


則人が大きく頷く。


さっきまで欲しがっていた景品は、もう少し遠くにある。


それでも。


モズキャッチャーは何度か振り返っていた。


「まだ欲しい?」


「欲しい」


「すごく?」


「すごく」


「でも戻らない?」


「…………」


少し考えてから。


「戻らない」


「できてるじゃん!」


則人が嬉しそうに笑った。


モズキャッチャーも、ほんの少しだけ笑う。


「今日はな」


「明日は明日!」


「お前、それ気に入ったな」


「分かりやすいもん!」


「まあな」


二人は、また歩き始めた。



しばらくして。


モズキャッチャーが、ぴたりと足を止めた。


「…………」


則人も止まる。


「どうしたの?」


返事はない。


モズキャッチャーの視線は、道の向こうへ向いていた。


そこには。


一人の人が歩いている。


手には、大きな紙袋。


袋の口から。


何かが少しだけ見えていた。


「…………欲しい」


「え?」


則人が目を凝らす。


「何が?」


「あの袋の中」


「見えるの?」


「ちょっとだけ」


「何が入ってるの?」


「分かんない」


「分かんないのに欲しいの!?」


「なんか、欲しい」


「なんかって何!」


則人が驚く。


その横で。


モズキャッチャーのクレーンアームが、少しだけ持ち上がった。


「待って!」


「分かってる」


「ほんと?」


「…………」


モズキャッチャーは紙袋を見る。


「欲しい」


「うん」


「中身も知りたい」


「うん」


「あの人が持ってる」


「うん」


「…………」


アームが。


また少し上がった。



「それはダメ!」


則人が言った。


アームが止まる。


「なんで?」


「だって!」


則人は、紙袋を持っている人を指さした。


「あの人のだよ!」


「…………」


「お店に置いてあるものと違うよ!」


「でも欲しい」


「欲しくても!」


則人が一歩前へ出る。


「人のものは取っちゃダメ!」


「…………」


モズキャッチャーが紙袋を見る。


それから。


則人を見る。


「じゃあ」


「うん?」


「欲しいって思うのもダメ?」


「…………」


則人が止まった。



少し前なら。


たぶん。


迷わず言っていた。


『ダメ!』


でも。


今は違う。


則人は少し考えた。


「欲しいって思うのは……」


モズキャッチャーが待つ。


「……いい」


「いいの?」


「うん」


「人のものでも?」


「…………」


則人は、さらに考える。


「欲しいって思うだけなら」


「うん」


「たぶん、いい」


「でも取っちゃダメ?」


「それは絶対ダメ!」


「何が違う?」


「だって!」


則人は、言葉を探す。


「あの人のものだから!」


「…………」


モズキャッチャーが、もう一度紙袋を見る。


その人は何も知らずに歩いている。


「俺が欲しくても?」


「うん」


「俺の方が、もっと欲しくても?」


「うん!」


「絶対?」


「絶対!」


「…………」


モズキャッチャーは黙った。



少し離れたところで。


天女とぬらりひょんが、二人を見ていた。


「今度は、少し違う問題ですね」


「そうじゃの」


ぬらりひょんが頷く。


「欲しい気持ちを抑えるだけではない」


「はい」


「誰のものか」


「誰かが大切にしているものか」


「うむ」


天女は紙袋を持った人を見る。


「欲しいと思うこと自体は、止められません」


「じゃが」


ぬらりひょんが言う。


「欲しいから取ってよい、とはならん」


「…………」


天女が少し笑う。


「則人さん、そこは分かっているみたいですね」


「そこはの」


「そこは?」


「全部分かっておるように言うでない」


「ふふっ」



「ねえ」


則人が言った。


「何?」


「もしさ」


「うん」


「あの人が」


紙袋の人を見る。


「それ、あげるって言ったら?」


「欲しい」


「じゃあ、もらう?」


「もらう」


「じゃあ」


則人が指を一本立てた。


「欲しいだけじゃ、決めちゃダメなんだ」


「…………」


「もらっていいか」


「…………」


「取っていいか」


「…………」


「それが大事なんじゃない?」


モズキャッチャーが、少し考える。


「誰が決めるんだ?」


「持ってる人!」


「俺じゃなくて?」


「うん!」


「なんで?」


「その人のものだから!」


「…………」


則人は少し考えて。


自分の話を始めた。


「ぼくだってさ」


「うん」


「KIDのおもちゃ持ってて」


「うん」


「誰かに欲しいって思われても」


「うん」


「勝手に持ってかれたら怒る!」


「すごく怒りそうだな」


「怒るよ!」


「泣く?」


「泣かない!」


「ほんとか?」


「泣かない!」


「…………」


「たぶん!」


「泣くじゃん」


「泣かないって!」


モズキャッチャーが少し笑った。



その時。


紙袋を持っていた人が、信号の前で立ち止まった。


モズキャッチャーとの距離が、さっきより近くなる。


「…………」


袋の口から。


中身が、さらに少し見えた。


大きなぬいぐるみ。


「…………っ」


モズキャッチャーの目が大きくなる。


「欲しい」


「うん」


「すごく欲しい」


「うん」


「さっきのより欲しい」


「うん」


「…………」


クレーンアームが上がる。


「モズキャッチャー」


則人が呼ぶ。


「分かってる!」


「…………」


「分かってるけど!」


アームが震える。


「欲しい!」


「うん!」


「あれ、欲しい!」


「うん!」


「取りたい!」


「うん!」


「でも!」


モズキャッチャーは、歯を食いしばるようにアームを止めた。


「…………」


信号が変わる。


紙袋を持った人が歩き始めた。


一歩。


二歩。


少しずつ。


遠ざかっていく。


「…………」


モズキャッチャーは。


追いかけなかった。


アームが。


ゆっくり下がっていく。



「行っちゃった」


則人が言った。


「うん」


「欲しい?」


「欲しい」


「追いかける?」


「…………」


モズキャッチャーは、遠ざかっていく紙袋を見る。


「追いかけたい」


「うん」


「でも」


一度。


大きく息を吐く。


「……あの人のだから」


則人の顔が、ぱっと明るくなる。


「そう!」


「うるさい」


「でも今、自分で言った!」


「言った」


「すごい!」


「そんなに褒めることか?」


「だって前だったら取ってたでしょ?」


「…………」


モズキャッチャーは少し黙った。


「たぶん」


「ほら!」


「うるさいって」


けれど。


その顔は。


少しだけ嬉しそうだった。



二人は、また歩き始めた。


しばらくして。


モズキャッチャーが言った。


「欲しいって」


「うん」


「結構、面倒だな」


「そう?」


「欲しいものを見るたびに、考えないといけない」


「取っていいかなって?」


「うん」


「誰のかなって?」


「うん」


「今日はここまでかなって?」


「それも」


「…………」


則人が笑った。


「でもさ」


「何?」


「前は考えてなかったんでしょ?」


「…………」


モズキャッチャーは少し考える。


「そうかも」


「欲しい!」


則人が両手を広げる。


「取る!」


今度は片手を伸ばす。


「次!」


もう片方の手を伸ばす。


「そんな感じ?」


「お前、ちょっと楽しんでるだろ」


「ちょっと!」


「やっぱりな」


二人が笑う。



少し先。


また何かが目に入った。


モズキャッチャーが反射的に見る。


「…………」


則人も、その視線を追う。


「欲しい?」


「…………」


モズキャッチャーは。


すぐには答えなかった。


見る。


誰のものか。


取っていいものか。


本当に欲しいのか。


少しだけ。


考える。


そして。


「……ちょっと欲しい」


「取る?」


「取らない」


「なんで?」


「人のもの」


「よし!」


「だから、うるさい!」


「でも、できてる!」


「まだ途中だって」


「じゃあ」


則人が笑う。


「今日はここまで?」


「…………」


モズキャッチャーも。


少し笑った。


「今日は、ここまで」


欲しいものを見つけても。


すぐに手を伸ばさない。


誰のものか。


取っていいものか。


自分はどうするのか。


ほんの少しだけ。


考える。


それだけで。


モズキャッチャーが見る世界は。


昨日までとは。


少し違って見え始めていた。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。