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着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編 1

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18/21

第3話「どこでやめる?」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、則人が最初に『欲しがっちゃダメ!』と言ってしまったら」


第3話「どこでやめる?」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「欲しい」


「うん」


「でも、取らない」


「うん!」


モズキャッチャーは、店先のぬいぐるみを見つめたまま。


大きなクレーンアームを下ろしていた。


欲しい気持ちは。


まだ消えていない。


それでも。


取らない。


たった、それだけのこと。


けれど。


モズキャッチャーにとっては、それがひどく難しいらしい。


「…………」


しばらくして。


ようやく、ぬいぐるみから目をそらした。


「よし」


「できた?」


「たぶん」


「やった!」


則人が嬉しそうに笑う。


「じゃあ、もう大丈夫だね!」


「…………」


モズキャッチャーが則人を見る。


「何?」


「お前さ」


「うん」


「すぐ『大丈夫』って言うよな」


「だって今、取らなかったじゃん!」


「一回だけだぞ」


「でも、一回できた!」


「次もできるとは限らないだろ」


「…………」


則人が止まる。


「そうなの?」


「俺に聞くなよ」


「だって、モズキャッチャーのことでしょ?」


「俺だって、こんなの初めてなんだよ」


「そっか」


二人とも。


まだ。


何も分かっていなかった。



「じゃあ」


則人が言った。


「もう一回やってみよう!」


「何を?」


「欲しいものを見つけても、取らないやつ!」


「練習みたいに言うなよ」


「練習すれば、上手になるかもしれないじゃん!」


「そんなものなのか?」


「分かんない!」


「またそれかよ!」


則人が笑う。


モズキャッチャーも、少し呆れたように笑った。


その時だった。


「…………あ」


モズキャッチャーの顔が止まった。


「どうしたの?」


返事がない。


視線の先。


少し離れた店の前に、大きな箱が積まれていた。


その一番上。


よく目立つ場所に、派手な色の景品が飾られている。


「…………」


クレーンアームが。


ぴくり。


動いた。


則人が、その小さな動きを見逃さなかった。


「欲しい?」


「…………欲しい」


「じゃあ、練習!」


「早いな!」


「取らなければいいんでしょ?」


「…………」


モズキャッチャーが景品を見る。


「欲しい」


「うん」


「さっきのより欲しい」


「うん」


「…………」


一歩。


足が前へ出た。


「あ」


モズキャッチャーが止まる。


「…………」


もう一歩。


「動いてるよ!」


「分かってる!」


「取らないんじゃなかったの?」


「まだ取ってない!」


「でも、近づいてる!」


「見るだけ!」


「ほんと?」


「…………」


返事はなかった。



一歩。


また一歩。


景品へ近づいていく。


則人も、その隣を歩く。


「ねえ」


「何?」


「どこまで行くの?」


「近くで見るだけ」


「そのあと?」


「…………」


「そのあと、取る?」


「取らない」


「ほんと?」


「たぶん」


「たぶん!?」


則人が慌てる。


気づけば。


景品は、もう目の前だった。


「…………」


大きなクレーンアームが上がる。


「待って!」


則人が叫んだ。


アームが止まる。


「取るの?」


「…………」


「取らないって言ったじゃん!」


「分かってる!」


「じゃあ下げてよ!」


「今やってる!」


モズキャッチャーの声が荒くなる。


アームが震えていた。


上げたい。


下げたい。


二つの気持ちが、一本の腕を引っ張り合っているようだった。


「取りたい」


「うん」


「さっきより、ずっと取りたい」


「うん」


「もう目の前なんだぞ」


「うん」


「手を伸ばしたら取れる」


「…………」


モズキャッチャーが、苦しそうに顔を歪める。


「なのに、取らないって……」


アームがまた少し震えた。


「どうやるんだよ」


「…………」


則人は。


答えられなかった。



少し離れたところで。


天女とぬらりひょんが二人を見守っていた。


「難しくなってきましたね」


「当然じゃ」


「最初は、少し遠くから見ているだけでしたから」


「うむ」


「でも今は、手を伸ばせば届く」


ぬらりひょんが頷く。


「欲というものはの」


「はい」


「遠くにある時より、手が届きそうになった時の方が、強くなることもある」


天女がモズキャッチャーを見る。


「助けなくていいのでしょうか」


「助けておるじゃろう」


「則人さんが?」


「うむ」


「何も言えていませんけど」


「言葉が出ない時もある」


「…………」


ぬらりひょんは則人を見る。


「それでも、隣におる」


そして。


少しだけ笑った。


「今は、それで十分じゃ」



「…………」


則人は。


モズキャッチャーの隣に立っていた。


何と言えばいいのか分からない。


「取るな!」


そう言うだけなら簡単だった。


けれど。


それでは。


最初と同じ気がした。


「…………」


モズキャッチャーのアームが。


また少し上がる。


則人は景品を見る。


そして。


さっきまで身につけていた羽衣を思い出した。


欲しかった。


もっと使いたかった。


それでも。


返した。


どうして。


自分は返せたんだろう。


「…………あ」


則人が顔を上げた。


「ねえ」


「何?」


「ぼくさ」


「今忙しい」


「聞いて!」


「何だよ!」


「羽衣」


「…………?」


「もっと使いたかったけど、返したよ」


「見てた」


「でも」


則人は、考えながら言葉を探す。


「ずっと我慢するって考えてたわけじゃない」


「何が言いたいんだよ」


「だから……」


則人は景品を見る。


「ずっと我慢するって思うから、大変なんじゃない?」


「…………」


モズキャッチャーが則人を見る。


「どういうこと?」


「今日は取らない」


「…………」


「今は取らない」


「…………」


「ここまでって決める」


「ここまで?」


「うん!」



則人は、足元を指さした。


「ここ!」


「何?」


「ここまで来た!」


「うん」


「景品も見た!」


「うん」


「欲しいって思った!」


「うん」


「でも」


則人は。


地面に一本の線を引くように、指を動かした。


「今日は、ここまで」


「…………」


モズキャッチャーが、その場所を見る。


何もない。


ただの地面。


「そんなのでいいの?」


「分かんない!」


「またか!」


「でも!」


則人が笑う。


「ずっと『欲しちゃダメ』って思うより、できそうじゃない?」


「…………」


モズキャッチャーは黙った。


もう一度。


景品を見る。


欲しい。


すぐそこにある。


アームを伸ばせば届く。


「…………」


それから。


足元を見る。


ここまで。


今日は。


ここまで。


「…………」


ゆっくり。


本当に、ゆっくりと。


クレーンアームが下がっていく。


最後まで下がると。


モズキャッチャーは、大きく息を吐いた。


「……今日は」


「うん」


「ここまで」


「うん!」


則人が、大きく頷いた。



モズキャッチャーは。


景品に背を向けた。


一歩。


歩く。


「…………」


止まる。


振り返る。


「欲しい」


則人が笑った。


「うん!」


また。


一歩。


二歩。


三歩。


「…………」


もう一度振り返る。


「まだ欲しい」


「うん!」


「何で嬉しそうなんだよ」


「だって、取ってないじゃん!」


「欲しいけどな」


「欲しいままでいいんでしょ?」


「…………」


モズキャッチャーが。


少し笑った。


「お前が言ったんだろ」


「そうだった!」


二人は。


また歩き始めた。



しばらくして。


モズキャッチャーが聞いた。


「でもさ」


「なに?」


「明日になったら?」


「え?」


「明日、また欲しかったら」


「…………」


則人が止まった。


考える。


すごく考える。


「…………」


モズキャッチャーが待つ。


「…………」


まだ考える。


「長いな」


「今考えてる!」


「分かった、分かった」


しばらくして。


則人が言った。


「明日は」


「うん」


「明日、決めればいいんじゃない?」


「…………」


「今日決めるのは、今日の『ここまで』」


「明日は?」


「明日の『ここまで』」


「毎回決めるの?」


「たぶん!」


「たぶんかよ!」


「でもさ」


則人は笑った。


「ずっと先まで全部決めるの、難しいじゃん」


「…………」


モズキャッチャーは。


少し考えた。


「まあ」


「うん」


「それなら、できるかも」


「でしょ!」


則人が胸を張る。


後ろから。


ぬらりひょんの声が飛んできた。


「今のは、少しだけまともじゃったな」


「少しだけって何!」


「そのままの意味じゃ」


「ひどい!」


天女が、くすくす笑った。



モズキャッチャーは。


もう一度だけ。


後ろを振り返った。


遠くなった景品。


まだ。


欲しい。


気持ちは。


何も消えていない。


それでも。


アームは上がらなかった。


「…………」


今日。


ここまで。


たった、それだけ。


けれど。


今までの自分には。


なかった考え方だった。


欲しいものを手に入れるまで続ける。


ではなく。


自分で。


終わる場所を決める。


「ねえ」


モズキャッチャーが言った。


「何?」


「さっきの」


「うん?」


「ここまでってやつ」


「うん」


「覚えとく」


則人の顔が明るくなる。


「うん!」


「忘れたら?」


「また言う!」


「うるさそうだな」


「何回でも言うよ!」


「やっぱり、うるさい」


二人は笑った。


欲しいものは。


まだ。


そこにある。


欲しい気持ちも。


まだ。


残っている。


それでも。


今日は。


自分で。


そこから離れることができた。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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