↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
着ぐるみモンスター Another  作者: 内田紀人
モズキャッチャー編 1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/21

第2話「欲しいままじゃダメ?」

着ぐるみモンスター


Another Story


「もし、則人が最初に『欲しがっちゃダメ!』と言ってしまったら」


第2話「欲しいままじゃダメ?」


内田紀人 作


※この物語は、本編とは異なる世界線の物語です。


「…………」


則人は、まだ羽衣を見ていた。


欲しい。


できれば、ずっと使っていたい。


空を飛べる。


ふわふわしている。


何より――楽しい。


でも。


これは天女から借りたものだ。


だから、返す。


そこまでは分かっている。


問題は――。


目の前にいる、モズキャッチャーだった。



「ねえ」


則人が顔を上げた。


「何?」


「まだ、あれ欲しい?」


モズキャッチャーは、店先に並んだぬいぐるみを見る。


「欲しい」


「そっか」


「ダメ?」


「…………」


則人は、すぐには答えなかった。


少し前なら。


迷わず言っていた。


『ダメ!』


でも、今は――。


「分かんない」


「またそれ?」


「だって、ぼくも欲しいし」


則人は、自分の羽衣に触れた。


「じゃあ同じじゃん」


「だから、それを考えてるの!」


「考えて、答え出た?」


「まだ!」


「遅いな」


「うるさい!」


モズキャッチャーが、少し笑った。


ほんの少し前まで。


則人に何を言われても、苛立っているように見えた。


けれど今は。


ちゃんと、則人と話している。



「じゃあさ」


モズキャッチャーが言った。


「何?」


「お前、その羽衣」


「うん」


「欲しいけど、返すんだよな?」


「うん」


「なんで?」


「だから、ぼくのじゃないから」


「それだけ?」


「それだけって?」


「すごく欲しいんだろ?」


「欲しいよ」


「返したくないって思わないの?」


「…………」


則人は羽衣を見る。


返したくない。


そう思わないと言ったら、嘘になる。


もっと飛びたい。


もっと使いたい。


「……ちょっと思う」


「ほら」


「でも返す!」


「なんで?」


「約束したから」


「誰と?」


「天女さん」


「…………」


モズキャッチャーは、少し考えた。


「約束したから返すの?」


「うん」


「欲しいのに?」


「うん」


「…………」


モズキャッチャーが、もう一度ぬいぐるみを見る。


「俺は」


「うん?」


「欲しいって思ったら、取らないと気が済まなかった」


「うん」


「取れなかったら、もっと欲しくなった」


「うん」


「取っても」


「うん」


「次が欲しくなった」


「…………」


則人は、黙って聞いていた。


「だから」


モズキャッチャーが続ける。


「欲しいって思うのがダメだって言われたら」


「うん」


「じゃあ、俺は何も欲しいって思っちゃいけないんだって思った」


「…………」


「それってさ」


少しだけ、声が低くなる。


「結構、きついぞ」


「…………」


則人は。


何も言えなかった。



少し離れたところで。


天女が、小さく息を吐いた。


「ちゃんと話していますね」


「うむ」


ぬらりひょんが頷く。


「先ほどよりはの」


「則人さん」


「なんじゃ」


「最初は完全に間違えましたね」


「言ってやるな」


「でも、間違えましたよね」


「言ってやるなと言っとる」


天女が、くすりと笑った。


ぬらりひょんは則人を見る。


「間違えること自体は、悪いことではない」


「はい」


「大事なのは」


ぬらりひょんが、少し目を細める。


「間違えたあとに、どうするかじゃ」


天女も、二人へ目を向けた。



「ねえ」


則人が言った。


「何?」


「じゃあ、欲しいって思うのは……いいのかな」


「俺に聞くなよ」


「だって、一緒に考えるって言ったじゃん!」


「俺、怪人だぞ」


「怪人でも考えるくらいできるでしょ!」


「まあ……できるけど」


「じゃあ考えて!」


「お前も考えろ!」


「考えてる!」


二人は、しばらく黙った。


「…………」


「…………」


先に口を開いたのは、則人だった。


「ぼくさ」


「うん」


「KIDの新しいおもちゃとかも欲しいよ」


「そうなの?」


「うん!」


則人の声が、少し明るくなる。


「新しいベルトとか! 剣とか! 限定のやつとか!」


「いっぱい欲しいじゃん」


「うん!」


「じゃあ、お前も結構欲しがりじゃん」


「…………あ」


則人が止まった。


「そうかも」


「だろ?」


「でも」


則人は少し考える。


「全部、買ってもらえるわけじゃないよ」


「まあな」


「欲しいって言っても、お母さんがダメって言う時あるし」


「その時どうするの?」


「えーって言う」


「そのあと」


「欲しいって言う」


「そのあと」


「お願いする」


「そのあと」


「…………」


則人は、少し気まずそうな顔をした。


「……諦める」


「できるんじゃん」


「でも、欲しいよ?」


「それでいいんじゃないの?」


「…………」


則人の目が。


少しだけ、大きくなった。



欲しい。


でも、手に入らない。


欲しい。


でも、取らない。


欲しい。


でも、返す。


「…………」


則人は。


少しずつ、何かをつかみ始めていた。


「もしかして」


「何?」


「欲しいって思うのと」


一つずつ、確かめるように言う。


「絶対に取るっていうのは」


「うん」


「違うのかな」


「…………」


モズキャッチャーが、ぬいぐるみを見る。


「俺は」


「うん?」


「ずっと一緒だった」


「何が?」


「欲しいって思ったら、取る」


「…………」


「取れなかったら、もっとやる」


「うん」


「取ったら、次」


「…………」


モズキャッチャーが、自分のクレーンアームを見る。


「だから」


少し困ったように言った。


「分け方が分からない」


「分け方?」


「欲しいのに、やめるってやつ」


「…………」


則人は、自分の羽衣を見る。


自分だって。


簡単じゃない。


欲しい。


返したくない。


でも。


返す。


「じゃあ」


則人が言った。


「一緒にやってみる?」


「何を?」


「欲しいまま、やめるの」


「…………」


モズキャッチャーが則人を見る。


「できるの?」


「分かんない」


「また分かんないのかよ」


「やってみないと分かんないじゃん!」


「適当だな」


「適当じゃないよ!」


「じゃあ、どうするの?」


則人は、ぬいぐるみを見る。


「まず」


「うん」


「欲しいって思っていい」


「…………」


「でも」


則人が、クレーンアームを指さした。


「取らない」


「…………」


モズキャッチャーは、自分のアームを見る。


それから。


ぬいぐるみを見る。


「欲しい」


「うん」


「すごく欲しい」


「うん」


「今すぐ取りたい」


「うん」


「…………」


クレーンアームが、少しだけ上がる。


則人が身構えた。


けれど。


途中で止まった。


「…………」


アームが、小さく震えている。


「取りたい」


「うん」


「すげえ取りたい」


「うん」


「でも……」


ゆっくり。


少しずつ。


アームが下がっていく。


「……取らない」


「…………!」


則人の顔が、ぱっと明るくなった。


「できた!」


「まだ一回だけだぞ」


「でも、できた!」


「すげえ疲れる」


「そうなの?」


「お前もやってみろよ」


「え?」


モズキャッチャーが。


則人の羽衣を見る。


「それ」


「…………」


「欲しいんだろ?」


「うん」


「じゃあ」


少しだけ意地悪そうに笑う。


「返せる?」


「…………」


則人の笑顔が。


ぴたりと止まった。



「今?」


「今」


「まだ、ちょっと使いたい」


「欲しいんだろ?」


「欲しい」


「じゃあ」


モズキャッチャーが言う。


「欲しいまま、やめるんだろ?」


「…………」


則人は、羽衣をぎゅっと握った。


さっき。


自分が言った。


欲しいって思っていい。


でも。


取らない。


だったら。


自分も――。


「…………」


天女を見る。


「天女さん」


「はい?」


「これ」


羽衣へ手をかけた。


「返す」


天女が、少し驚いた顔をする。


「もうよろしいのですか?」


「…………」


則人は羽衣を見る。


本当は。


もっと飛びたい。


もう少しだけ使いたい。


「……よくない」


「え?」


「もっと使いたい」


天女が、少し笑った。


「はい」


「でも」


則人は。


ゆっくりと羽衣を外した。


「返すって決めたから」


両手で。


天女へ差し出す。


「ありがとう」


天女は静かに受け取った。


「こちらこそ」


羽衣が、則人の手から離れる。


「…………」


則人は。


少し寂しそうに、それを見つめた。


そして。


ぽつり。


「……やっぱり欲しい」


モズキャッチャーが吹き出した。


「欲しいんじゃん」


「欲しいよ!」


「返したけど?」


「返した!」


「じゃあ」


モズキャッチャーが、少し笑う。


「それでいいのかもな」


「…………」


則人も笑った。



欲しいものは。


欲しい。


その気持ちは。


なくならなくてもいいのかもしれない。


大切なのは。


欲しいと思った、そのあと。


どうするか。


則人には、まだ全部は分からない。


モズキャッチャーにも。


きっと、まだ分かっていない。


それでも。


二人とも。


少しだけ。


「欲しい」と付き合う方法を見つけ始めていた。


モズキャッチャーが、もう一度ぬいぐるみを見る。


「…………欲しい」


則人が笑う。


「うん」


「でも、取らない」


「うん!」


モズキャッチャーは。


クレーンアームを下げたまま、その場に立っていた。


則人は、羽衣のなくなった肩を触る。


「……また貸してね」


天女が笑った。


「必要な時なら」


「やった!」


「今返したばかりじゃろうが!」


ぬらりひょんの声が飛んできた。


則人が振り返る。


「だって、欲しいんだもん!」


「…………」


ぬらりひょんは。


しばらく則人を見つめた。


そして。


小さく笑った。


「それでよい」


「え?」


「何でもないわい」


「何それ?」


則人は首を傾げる。


モズキャッチャーは。


そんな二人を見ながら。


もう一度。


ぬいぐるみへ目を向けた。


欲しい。


その気持ちは。


消えていない。


消さなくても。


いいのかもしれない。


ただ。


欲しいからといって。


何でも取っていいわけではない。


それを初めて知ったモズキャッチャーは。


クレーンアームを。


上げなかった。


――つづく

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。